表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女貴族に買われた少年が厳しく可愛がられて、養われます。  作者: beru


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/74

第三十八話 令嬢は使用人から敢えて少し離れる

「今日も出かけるわ。留守番、しっかり頼むわよ」

「はい。いってらっしゃいませ」

 セシリアがまた商談のために市場に行くので、アンジュと共に屋敷を出て馬車へと乗り込む。

 収穫期に入ったので、セシリアも仕事が忙しくなり、仕事で遅くなるのが増えたので、ポールもそしてセシリアも寂しさを感じていた。


「セシリア様、今日も遅いなあ……」

 暗くなってきても、セシリアがまだ帰って来なかったので、心配しながら夜空を見上げる。

 仕事が忙しいのは、ポールも理解していたが、何よりセシリアの顔が見れないと、寂しくて仕方なく、満たされない気持ちになっていくばかりであった。

「セシリア様、お帰りになったわよ」

「あ、はい!」

 なんて考えていると、年配のメイドに主人の帰宅を告げられ、慌ててポールも玄関に向かう。

 やっとセシリアの顔が見れると、顔を明るくして、彼女を出迎えに行ったのであった。

「おかえりなさいませ」

「ただいま。夕食の準備は出来ている?」

「はい。今すぐご用意出来ます」

「そう。なら、すぐ頂くわ」

 と、年配のメイドと会話を交わし、セシリアが部屋へと向かう。

 心なしか少し疲れている様に見えたので、ポールの不安は逆に募っていったのであった。


「セシリア様」

「ポール? 入りなさい」

 夜も更けた時刻になり、ポールがセシリアの部屋に入っていくと、

「あの、セシリア様。今日もご苦労様でした」

「どうしたのよ? 何か心配そうにしているけど」 

「お疲れのようでしたので……」

「今は収穫期だから、どうしても忙しくなるのよ。貴方も農家の子なら理会できるでしょ?」 

「は、はい。あのー……」

「はあ……わかったわよ。来なさい」

「はい! えへへ……」

 セシリアも溜息を付きながら、ベッドに座り、ポールを膝の上に乗せてあげる。

「セシリア様~~」

「あん。もう、本当に赤ちゃんなんだからあ」

 ポールが膝の上に座ると、早速、セシリアの胸の谷間に顔を埋める。

 この所、すっかりセシリアに甘える事に遠慮がなくなり、セシリアも嬉しくも困っていたが、

「いい加減になさい。主人にこんな事をする使用人が何処に居るのよ?」

「セシリア様は特別なんですう……」

「しょうがない子ね。甘やかせ過ぎたかしら……」

「へへ……」

 そんな主人の小言も今の彼には心地よい位であり、セシリアにひたすら頬ずりして、肌の温もりを感じる。

「しょうがない子ね。でも、ポール。私、明後日からしばらく仕事で屋敷を留守にするわよ」

「え? そ、そうなんですか?」

「ええ。ちょっと新しい作物の品種の展示会に遠出するから。あなたも連れて行こうかと考えたけど、やっぱり止めたわ」

「ふえええ……セシリア様がいないと寂しいですうう……」

「くす。連れて行きたいのは山々だけど、こんなに甘えん坊じゃ、少し主人離れを覚えないと駄目ね。三日間、留守にするわ。その間、屋敷でお留守番なさい。もちろん、屋敷の敷地に出るのは駄目よ。ちゃんと他の使用人にも監視させるから」

 三日……この屋敷に来てから、セシリアとそんなに離れるのは、ポールも経験がなかったので、泣きそうな顔をして、セシリアにしがみつくが、

「そういう事よ。私がいなくても、堂々と振舞えるよう、その根性を鍛えなさい。ああ、フローラもその展示会、行くみたいだから、あいつが来る心配はないわ」

 そう頭を撫でながら、セシリアがポールに口にし、ポールもシュンとした顔をして俯く。

 彼女と一緒に居るのが当たり前だと思っていたので、こんな事になるとは思わず、三日も我慢できるのか不安で仕方なかったのであった。


「それでは、行ってくるわ。留守中は、頼むわよ」

「はい。お気をつけて」

 セシリアがアンジュとメイド一人を連れて、馬車に乗り込み、年配のメイドに留守を任せて、屋敷を後にする。

 しかし、ポールは他の使用人たちと並んで見送りながら、とても寂しそうな顔をしており、今すぐ馬車を追いかけたい気分になっていた。


「セシリア様……」

 夕方になり、誰もいない主人の部屋の中にポールは入る。

 勝手に入ってはいけないのはわかっているが、少しでも愛する美しい主を感じていたいと、抑えきれなかったのであった。

「うう……」

 ベッドに座り、彼女の羽毛の枕を抱き締める。

 香水の甘い残り香を感じながら、ポールはしばらくそのまま座っていた。


「ポール! 何処に居るの!?」

「っ! あ、はい!」

 セシリアの枕を抱きながら、ポールがウトウトしていると、思わず返事をする。

 寝そうになっていたので、マズイと思っていたが、彼の声を聞いて、メイドがセシリアの部屋に入って来てしまい、

「ポール! あなた、セシリア様の部屋で何をしているの!?」

「す、すみません! ちょっとお掃除をしようと思って……」

「セシリア様の部屋の掃除は私が任されてるのです! あなたは勝手に入っては駄目でしょう!」

 と、年配のメイドが血相を変えて怒鳴り、ポールも平謝りして、部屋を後にする。

 セシリア本人であれば、ポールが勝手に彼女の部屋に入っても許してくれるだろうが、セシリア不在の今は逆に部屋に入る事は、セキュリティの問題からも許されなくなってしまい、ポールは更にセシリアとの距離が開いた事を痛感したのであった。


「あらー、セシリアも来ていたの」

「フローラ。来るって言っていたでしょう」

 展示会場に着くと、父親の付き添いで来たフローラがセシリアに声をかける。

「ふふん、ポールは?」

「居ないわよ。屋敷でお留守番」

「ええ? 何で連れて来ないのよ! くると思ったのに!」

 セシリアの事だから、必ずポールも同行させると思って、フローラも楽しみにしていたが、予想外の言葉に驚きの声をあげる。

「甘いわね。彼はまだ十代なのよ。今日は遊びで来てるんじゃないから、連れて来る必要は少なくともないわ」

「キイイイ……どこかに隠してるんじゃないでしょうね?」

「疑うなら調べてみれば。馬車の中にも何処にもいやしないから」


 やっぱり、連れこなくて正解だったと思いながらも、セシリアも内心寂しい気持ちもあり、いきり立っているフローラを置いて、アンジュと共に会場に入る。

 だが、仕事の為に数日、屋敷を留守にすることは、今後増えるため、その度に、幼い使用人を連れて来るのは、却って邪魔にしかならず、セシリアも心を鬼にして、我が子に修行させる思いで、彼女もぐっと我慢して、会場で業者の営業と挨拶しながら、会場を回っていったのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ