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女貴族に買われた少年が厳しく可愛がられて、養われます。  作者: beru


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第二十一話 美しい貴族の令嬢に引っ張りだこ

 翌朝――

「えっと、セシリア様の部屋は確か……」

 朝、起床したポールがセシリアを起こしに、セシリアが寝泊りしている部屋へと向かう。

 ホテルで宿泊している最中であっても、朝、彼女を起こすのはポールの仕事だと言われたので、セシリアを起こしに彼女の泊まっているスウィートルームへと足を運ぶ。

 流石は貴族だけあって、セシリアは一番高い部屋に泊まり、アンジュとポールは使用人だけあって一番安い部屋に宿泊していたが、ポールも特に不満は感じず、むしろセシリアには常に贅沢をして貰いたいと、強く願っている程であった。

「セシリア様、朝です。起きてください」

セシリアの部屋をノックしてそう告げるが、何も反応がなく、まだ寝ているのかとドアを開けようとするが鍵がかかっているのか開かなかった。

「セシリア様、起きてますか?」

『うーん……ポール? ちょっと待って』

 心配になったので、大きな声でセシリアに呼びかけてノックすると、彼女もようやく起きたのか、寝惚けなまこに反応し、ポールもホッとする。

 無事、主の声を聞けて、安堵し、彼女が部屋を開けるのを待っていると、鍵が開く音がしたので、

「入りなさい」

「あ、はい。失礼します」

「失礼しまーす♪」

「へ? うわああっ!」

「きゃっ! 何よ、一体っ!? って、ちょっとっ!」

 セシリアの部屋のドアを開けて、ポールが入ると、誰かに背後から背中を押されて部屋へと押し込まれて、転倒しそうになり、セシリアの胸に顔を埋める。

「ふふん、作戦成功っと。あらあら、セシリア、随分とはしたない格好ね。十代の使用人に、そんな下着姿で出て来るなんて」

「ふ、フローラ様! どうして……」

 バタンっ!

 いつの間にかフローラが背後に潜んでおり、得意気な顔をして、セシリアの部屋に強引に侵入していく。

「ちょっと勝手に入らないで。出て行きなさい。でないと、ホテルのボーイを呼んで、摘み出して貰うわよ」

「その格好で? せめて着替えて来なさいよ。ポールの前で、そんなシースルーの下着姿で出て来るなんて、まあはしたないったら、ありゃしない。貴族の風上に置けない女ね」

「く……ポールだけだと思って、油断したわ」

 セシリアはいつもの様にシースルーのキャミソール姿で寝ており、起こしに来たポールをこの姿のまま抱き締め様としたのであったが、まさかフローラが居るとは思わず、顔見知りの従妹とは言え、下着姿を見られたのは、セシリアにとっても恥辱その物であった。

「それで、何の用よ? ポールなら貸さないわよ」

「何でよ?」

「当たり前じゃない。何をするか、わかりゃしないんだから。既成事実を作ったりしたら、堪ったもんじゃないわ」

「そんな事する訳ないでしょ、あんたじゃあるまいし。ねー、ポール~~♪お姉さんと良かったら、朝の散歩をしない?」

「散歩ですか?」

 セシリアが服を着ている間に、フローラがポールにそう誘うと、ポールもキョトンとした顔をして首を傾げる。

 彼自身は別に構わなかったが、当然の事ながら、セシリアは、

「駄目に決まってるじゃない」

「だから、あんたに聞いてるんじゃないの。ポールに聞いてるのよ」

「私の意思がポールの意思なの。だから、私が駄目と言ったら、駄目なのよ」

「んまあ、何て横暴なご主人なのかしら。可哀相にポール……こんな女より、私の方が可愛がってあげるからねー」

「はうう……」

 着替えていてセシリアが身動き出来ないのを良い事に、フローラがポールに抱き付いて、彼を自身の胸に埋める。

 セシリア程ではないが、大きな胸に顔を挟まれ、ポールも強引に引き離す事も出来ずに困っていたが、セシリアはすかさず、

「ふんっ!」

「きゃんっ! こ、こら汚いわね! 何て物、投げるのよっ!」

「汚くはないわ。羽毛の枕だし。あんたに抱かれる方が、私のポールが汚れるじゃない! いい加減出て行って。散歩なら一人で勝手になさいっ!」

 まだ着替え終わってなかったので、セシリアも動けなかったが、手近にあった枕を投げ付け、フローラの顔に直撃する。

「嫌よ。今日はポールとするの。何なら、あんたも付いてってくれても構わないわ。チェックアウトにはまだ時間あるし、どうせ今日は予定ないんでしょう」

「あんたほど、暇じゃないんだけどね、こっちは」

「まあまあ。あのー、フローラ様。僕は構わないですけど、セシリア様が駄目と仰るので、残念ながら……」

「ポールは良いのね? じゃあ、オッケーって事で。んじゃ、レッツゴー♪」

「ま、待ちなさいっ!」

 ポールはフローラに気を遣ってそう言ったつもりであったが、フローラが都合よくオッケーと捉えてしまい、ポールの手を引いて、外に連れ出す。

 セシリアの手を一旦離れてしまえばこっちの物とばかりに、フローラはポールの手を強引に引いて連れ出してしまい、セシリアも慌てて、追いかけていったのであった。


「はあ、はあ……全く、あんたって奴は」

「くす、結局、付いてきたんじゃない。大丈夫よ、別に遠くへは行かないから」

「ふんっ! ポール、来なさい!」

「は、はい。あの……」

「私の腕を引き離したかったら、殺して引き離しなさい。絶対に離さないから」

 ポールと腕を組みながら、フローラが近くにある森の中を二人で歩いていったが、セシリアが反対側の腕を組んで強引に引き離そうとする。

 二人に引っ張りだこにされて、ポールも苦しそうに呻いていたが、何とかセシリアの言う事を聞こうとするも、フローラの事も無理に引き離せず、困り果てていた。

「ポールっ! あんた、何で私の言う事を聞けないのっ!」

「そりゃあ、私だって貴族の令嬢だし、使用人の彼が無碍に出来る訳がないわ。あ、ちょっと休憩しましょうか」

「くうう……ポール、後で覚えてなさい」

「うう……」

 ポールは生真面目な性格で、例えセシリアの命令でも、貴族であるフローラ相手にどうしても実力行使をすることが出来ず、その弱みに付け込んで、フローラも彼に好き放題していたのであった。

「あ、ここで休憩しましょうか」

「は、はい」

 近くにあった池のほとりにあるベンチにフローラが腕を組んだまま座り、セシリアも二人を睨み付けながら、もう片方の腕をがっしりと組んで、座る。

 高貴な地主貴族の令嬢に挟まれ、ポールもぎこちない表情になって固まっていたが、フローラはしてやったりとした顔をしながら、

「ふふ、ポール、今日はありがとう、付き合ってくれて。ちゅっ」

「――っ! ふ、フローラっ! 何を!?」

「何をって付き合ってくれたお礼。あんた、いつもやってるんでしょう?」

「だったら、余計にやるんじゃないわよ! てか、またやるんじゃない! もう……私だって……ちゅっ」

「う、あの……」

 フローラがポールの頬にキスしたのに対抗して、セシリアもムキになって、ポールの頬にキスをする。

 二人の唇を頬に感じながら、ポールも目を回しながら、今の出来事が悪い夢ではないかと思い始める。

 だが、幼い使用人を巡って、セシリアとフローラは更に火花を散らしていき、エスカレートする一方であった。



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