表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女貴族に買われた少年が厳しく可愛がられて、養われます。  作者: beru


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/74

第十八話 女主人は使用人離れが出来ない

「待たせたわね」

「遅いわよ。約束の時間過ぎてるじゃない」

 数日後、セシリアはフローラの挑戦を受けて立つ形で、フローラの別荘へとポールと共に赴き、二人で中へと入る。

 しかし、約束の時間を三十分も遅れた為、フローラは頬を膨らませて、セシリアに注意するが、彼女はそれがどうしたとばかりに、

「あんたが身勝手な理由で呼び出しておいて、偉そうな事を言うんじゃないわよ」

「うるさいわね、セシリアも受けたんだから、約束の時間を守る義務があるでしょ。それともビビってるのかしら?」

「まさか。んで、勝負って何よ?」

「んー? その前に、ポールと挨拶させて。ポール、会いたかったわあ。セシリアにいじめられたりしなかった? きゃんっ!」

 フローラがセシリアに手を繋がれていたポールにハグしようとすると、すかさずセシリアに突き飛ばされて阻止される。

「良い度胸してるじゃない、人の使用人に勝手に触ろうとするなんて」

「挨拶しただけじゃない。てか、あんたこそ、何様のつもり? 使用人は主の所有物じゃないのよ。あくまでもお金で雇ってる労働者じゃない」

「普通はそうね。でも、私とポールは普通の主と執事の関係じゃないの。こういう関係だしね。んっ!」

「――っ!」

「なあっ!?」

 文句を言っていたフローラに憮然とした口調でそう言い放った後、セシリアがポールの手を引いて、いきなり口付けを交わしていく。

 突然の事で、フローラもポールも驚いて絶句していたが、セシリアはフローラに見せ付けるように、幼い彼と熱い接吻を交わし続け、フローラも唖然としていた。

「んっ、ちゅっ……んっ、んくう……んっ、はあっ!ふふ、どう、フローラ?」

「ど、どうって……あんた、何て事するのよ!?」

「何て事も何も、口で言っても信じてもらえなさそうだから、こうして実際の行動で教えてあげたのよ。私とポールの関係をね」

「関係ですって?」

「ええ。私とポールは既に一緒に寝た関係なの。だから、あんたの入り込む隙間なんてないのよ」

「い、一緒に寝たあっ!? 本当なの、ポール?」

「? は、はい」

 思いもよらぬ事をセシリアから告げられ、ポールもキョトンとした顔をして頷くと、フローラも甲高い声を上げて、崩れ落ちる。

「くす、どう? これでもまだこの子が欲しい?」

「ふ、不潔だわ! 貴族なのに、こんな小さな子と、ね……寝るなんて!?」

 『寝た』の意味を、フローラは違う意味で誤解して狼狽していたが、セシリアにとっては、それは計算済みであり、ポールの腕を組みながら、得意気に胸を張る。

 フローラも自分と同じ貴族なので、この様な言葉に対する免疫がなく、顔を赤くしてうろたえるばかりであった。

「と言う訳だから、もう話は終わりよ。私と彼はもう主従関係以上の強い関係にあるの。あんたが、強引に奪っても無駄よ。仮に強奪しても、すぐにポールは私の元に帰って来るわ。ね?」

「はいっ! あの、フローラ様……ですので、お気持ちは嬉しいのですけど、これ以上、セシリア様と喧嘩するのは……」

「破廉恥よ……」

「は?」

「破廉恥だわ! セシリア、その子を無理矢理、抱いて、性行為を強要したんでしょ! そうに違いないわ!?」

 フローラが顔を真っ赤にして、踏ん反り返る様に立っていたセシリアに顔を真っ赤にして指差してそう叫び、

「無理矢理ですって? 馬鹿言うんじゃないわ。確かに使用人として、給料は払っているけど、私とこの子がこういう関係になってるのは、全くの合意の上の自由意志で強制したり、脅したりは一切してないわ。そうよね?」

「は、はい……」

 と言うセシリアであったが、ポールも今のセシリアとの関係に不満は抱いてはいなかったものの、無理矢理やらされてる面がないとは言えなかったので、複雑な表情を見せる。

 しかし、フローラはそのポールの表情を見逃さず、

「嘘ね。幼い使用人を騙して、猥褻な行為を強要してるんだわ。今、確信した。だから、さっさとその子を私に渡して解放なさい。私との勝負に勝ったら、ポールを貰うわよ」

「何ふざけてるのよ。大体、全財産差し出してもやらないって言ったでしょう。だから、あんたとのふざけた勝負に負けたって、ポールはやらないわよ」

「話が違うじゃない。今日はそのつもりで呼んだんだけど」

「ええ。フローラとの勝負になら、いつでも応じるわ。でも、あんたとのくだらない勝負の賭けの対象にするほど、この子は安くないの。わかった? 今日は暇潰しで来たのよ。ちょっとした気分転換よ。ほら、とっとと勝負の内容言いなさい」

「相変わらずね。平気で私との約束も破る所も、全く変わらないわ」

「あんたが勝手にした、約束なんて、守る気はないの」

 と、セシリアもセシリアで、自分勝手な事を堂々と言い放ち、無茶苦茶な言い分にポールも思わず苦笑してしまう。

 しかし、フローラは予想通りだったのか、

「でも、どうかしらね? あんたがポールを手放さざるを得ない事態になっても、そんなことが言えるかしら」

「手放さざるを得ない事態ですって? たとえ、全財産を失っても、ポールは私に永遠の服従を誓ってるの。だから、そんな事は有り得ないわ」

「ふん、私がそんな程度の事も想定してないと思って? 貴族のご令嬢、セシリア様が執事と禁断の恋をしてるなんて、大スキャンダルも良い所じゃないかしら」

「スキャンダルねえ……」

 フローラがそう詰め寄るが、セシリアはそれがどうしたと言わんばかりの踏ん反り返った態度で、フローラを軽蔑の眼差しで見下ろし、

「良いわ。言いなさいよ。私が十代の使用人と肉体関係を持ってるって。雑誌でも新聞でも、出版社でも何処にでも垂れ込みなさいな。もう父も母もいない私には痛くも痒くもないわ。あんたに反対する権利なんかないのよ。大体、あんたこそ、ポールを私から奪ってどうするつもり?」

「私だったら、彼を立派な男性に教育した上で、婿に迎えるわ。あんたみたいに使用人として顎で使って、無理矢理猥褻な行為をさせる真似はしないわよ」

「ほう。言うじゃない」

 フローラはそう言って、ポールを見ながら、胸を張るが、セシリアは全く興味も示さず、聞き流していた。

「小学しか出てない十代の子を、わざわざ使用人として雇って、一生そのままにさせるなんて、あんたも非情な貴族ね。私の父様は貧しくて学校に行けない優秀な子供を使用人として雇いつつ、お金と勉強する場所を確保して大学に何人も行かせてるのよ」

「知ってるわ。叔父様はとても素晴らしいことをしているわね。あんたと違って。んで、まさかポールを学校に行かせてやるから、ウチに寄越せと?」

「ええ。ポールも学校に行きたいわよね?」

「えっと……」

 思いも寄らぬ提案をしてきたので、ポールも一瞬、迷う。

 彼も出来ればハンナの様に上の学校に進学したかったのだが、家が貧しくてそれが叶わず、義務教育である初等学校を卒業したら、すぐに働きに出されてしまったのだ。

 しかし、フローラは彼のその希望を見逃さず、

「ねえー、ポール。ウチに来たら、進学の費用も支援するし、実家の方が生活に困らないだけの支援もしてあげるわ。だから、ね?」

「必要ないわね、そんなの。ポールはずっと私の元に仕えるの。学校なんか行かせなくても、私が教育するから、問題ないわ」

「あんたに聞いてるんじゃないの。ほら、私の手を取って」

 と、フローラが手を差し出すが、流石にポールもすぐには返事が出来ず、手を伸ばす事は出来なかった。

「勝負ってまさか、そんな話? はん、馬鹿馬鹿しい。ポールに学校なんて必要ないの。私の傍に死ぬまでいるんだから。ね?」

「は……はい」

 と、ポールの手を握って、セシリアがそう言うと、彼も複雑な顔をしてそう答える。

 ポールを学校に行かせるなど、セシリアは全く考えておらず、そんな事をしたら、彼と居る時間が減るので論外だからであった。

「酷い主人ねー。何て横暴なのかしら」

「どうとでも言いなさい。貴族や王族は時に横暴でないといけないの」

 堂々と言い放つセシリアであったが、ポールはそんな主人を苦笑しながら見て、彼女と手を繋ぐ。

 が、フローラの話を聞き、本当にこのままセシリアに死ぬまで仕えて終わるのかと言う不安は高まってしまっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ