すいりゅう
おはよう、……おはよう?
もりでのせいかつ5000にちめ
この前のてがみに、申し訳ない。って書いてあった。
なんのことかよくわかんない。
あの紳士風の男の人からだった。
◆◆◆
目が覚めた。朝鳥が鳴いている。
井戸の冷水で身体を清め、朝食を摂る。
庭に出た。昨日磨いた大剣を両手で持つ。
大剣を振る。
大剣を振る。
大剣を振る。
大剣を振る。
大剣を振る。
大剣を振る。
大剣を振る。
大剣を振る。
大剣を振る。
大剣を振る。
大剣を振る。
大剣を振る。
大剣を振る。
大剣を振る。
気配を感じた。
斬撃を放った。
ガキィン!! と断末魔の叫びが聞こえた。
確認する。
「いきなり確認もせずに斬撃を飛ばしてくるなんてヒドイじゃないか」
ちがった。防がれた音だ。
頭の取れた水竜──と剣を持った黒髪の人の善さそうな青年がいた。今日の晩御飯……。
「手土産なしに伺うのも失礼かと思ってね、持ってきたんだけど……」
きょうの、ばんごはんっ!
「その様子じゃ正解だったみたいだね」
何故か苦笑してた。
気づけば夕暮れどき。帰路に着くことにした。
何故かついてきた。
家に上がろうとした。
断った。
するとご飯を人質に取られた。
ひきょうだ。
家に上げた。
お茶を淹れた。濃くした。
人の善さそうな青年は普通に飲んだ。
「このお茶スゴいね、あと濃い。ここに来るまでに消費した魔力と気力が全快になった。これ、何の茶葉を使ってるんだい?」
荒野に生えてた茶葉で淹れた。
飲むと前世の疲れもすっきり
「この辺りは魔力が濃いからね、なるほど、納得した」
勝手に納得した。ふしぎ。
「辺境伯に聞いたんだ、君が今から数十年前に災獣ニルヴァーナを倒したって。それで気になって来ちゃった」
辺境伯?
「この紋章を見せれば判るって聞いたけど」
布に金の刺繍で編まれた紋章を見る。
知らない。見たことない。
「あれー?」
あ、ちょっとまって……
棚に飾ってある宝石を出した。
「ん? どうしたんだい?」
これ、あった。
宝石の中を見た。
布と同じ紋章が彫ってあった。
「……おじさん、この娘十年間越しに気付いたよ」
何か言ってるけど気にしない。
人の善さそうな青年は静かに此方を見詰めた。
「自己紹介が遅れたね、僕は勇者。おじさん……辺境伯には無理やり場所を聞いちゃったから、彼は悪くないんだよ?」
気にしてない、大丈夫。
「なら良かったっ! それで本題なんだけど……」
人の善さそうな勇者は頭を下げた。
「ありがとう」
晩御飯を作る。
血を抜いた水竜を捌き、野菜と一緒に牛乳で煮る。
狂い水竜肉の牛乳煮。
今日はもうお腹いっぱい。
「ご馳走さまでした」
人の善さそうな勇者は手を合わせた。
美味しかった?
「うん、とっても美味しかった……ってスルーなのっ!?」
忘れてた。
「いや、あの……災獣倒したじゃない? それは本来僕がすべきことで、その責務を押し付けちゃったから本当に申し訳ないというか……」
くどい。
「うぐっ、ごめんなさい……」
気にしてない。だから気にしない。
「それってちょっと強引だね……」
人の善さそうな勇者は何故か苦笑してた。
でも晩ごはんを獲ったのは気にする。
「えぇ……そこなの?」
とてもだいじ。しかつもんだい。
「あっ、安全性高めるためにここにいるモンスター倒しちゃったけど、あれ食料だったの!?」
うん、おかげでおなかぺこぺこぺこ。
「うーん、定期的に晩ごはんを持ってくる。いや、それじゃ御詫びにならないかな……?」
それがいい。
「あ、それなら良かった! じゃ、そろそろ夜遅いから御暇するとするよ!」
人の善さそうな青年の勇者はごちそうさますると立ち去った。
ねむい。
かまどでほどよく温めたお湯でからだを清め、今日のところは寝る。
何もない荒野に転移した。
寝るまえに数年前ともう数年前におぼえた魔法をつかう。
ドゴォォォ……!! と音がして数年前ともう数年前とは比較にならない位巨大な火柱が空高く立ち上った。
続けて数年の間におぼえた魔法もつかう。
津波が起き、大竜巻が発生し、雷の槍が降り、流星群が底の見えない大穴を作った。
元あった原型が更に分からなくなるほど変わり果てた荒野。
そして最後に
新作。
火を出した。
水と出した。
風も出した。
ついでに雷も出した。
土は出した。
そして光で混ぜた。
数年前覚えた闇で固定した。
完成した。
原型が分からなくなるほど荒れ果てた荒野に放った。
何もなかった場所に芽が出た。
水が流れた。
生き物がやってきた。
再生した。
大穴は空いたまま。
魔法でふさいだ。
元通りになった荒野だった場所。
よしっ。
それに満足したので寝た。
しろみざかな。