さいじゅう
おはよう?
更に数年後。
目が覚めた。朝鳥が鳴いている。
井戸の冷水で身体を清め、朝食を摂る。
庭に出ようと昨日磨いた大剣を手に持つ。
扉をノックする音がきこえた。
扉を開けた。
紳士風の男がいた。
「ちょっと宜しいだろうか──」
──閉めた。
人がいた。怖かった。
ドンドンと扉を叩く音が聞こえた。
「悪いことはしませんので扉をお開けくださいっ!」
嘘だ、人怖い。
「御願いがあって来たのです! どうかお話だけでもきいくださらないだろうかっ!」
やだ、人怖い。
「どうかっ! どうか耳を傾けて頂きたい! このままではこの場所一帯が消滅してしまいますぞっ!」
家に上げた。
お茶を淹れた。
「これは良い茶葉をお使いで」
庭に生えてた茶葉で淹れた。
飲むと目覚めすっきり。
「そ、それは随分と個性的なことで……」
少し顔がひきつってる。ふしぎ。
「ごほんっ、本題に入りましょう。今この地に災獣が近付いております」
災獣?
「災獣を知らないとは……いえ、災獣とはその生態・発生原因・存在理由共に不明の大魔獣。まるで大災害が意思を持った様なその姿からその名が付けられました。歴史の上で、未曾有の大災害を何度も惹き起こしてきた災厄中の最悪、その張本人です」
なるほど。
「数十年振りともいえる災獣、災獣ニルヴァーナが現れ数週間! もう既に複数の国が墜ちているのですっ! どうか、どうかっ! この場から安全な場所へ後退去をお頼み申し上げます……」
その必要はない。から土下座はいらない。
「は?」
たおす。ここを消されたらこまる。
「ちょ、ちょっとお待ちくださいっ! 幾らなんでも無謀で御座いますっ!? お考え直し下さ──」
何もない荒野に転移した。
死の瘴気を纏う巨大な魔獣が見えた。
死が大地を侵食し、生命力を蝕む。
数年ともう数年前におぼえた魔法をつかう。
相性参照、焔度圧縮、霊体貫通、概念滅び付与、座標固定、いちにっ、発射。
かのじょははかいこうせんをだした。
『KSGAAAAAAAAAAAAAAA……!!!?』
災獣ニルヴァーナにこうかばつぐんだ。
死の瘴気がはれた。今なら攻撃がとおりそう。
照準を合わせる。いちにっ、くらえ。
遥か上空彼方から光の柱が落ちてきた。
極大の光の奔流が災獣を呑み込む。
全てふっとんだ。
災獣ニルヴァーナ消滅を確認。
よしっ。
それに満足したので寝た。
さいじゅうたべたかった……