お呼ばれ
お越しいただきありがとうございます。
異性の家にお呼ばれなんてされたら
ドッキドキがとまりませぬ。
手土産の悩みで眠れない自信あります。
それでは、お楽しみください。
主要登場人物
ユキヤ 主人公
かおり ユキヤの中学からの同級生
星奈 2年生の先輩。ユキヤに付き合ってと言って保留にされている。
唯 3年生。
「ユッキー、お待たせ!」
「うん。二人もそろそろ来るって。」
待ち時間に、マニュアルのことを考えていた。出版されているものであれば、巻末に色々と情報があるはず。後で見てみよう。
「ユキヤ君、お待たせ。さあ行きましょ!」
唯さんは、ユキヤ君と呼んでくれるらしい。こんな美人に呼ばれると、なんだかうれしい。
4人そろって校門を出る。中学時代の登下校で、女子比率が高いことなんてなかったな。嬉しくてつい表情が緩みそう。そんなことを考えつつ、駅に向かって歩いていると、
「私、定期を買わなきゃ。ちょっと待っててほしい。」
と、星奈が言った。
この辺りは、地下鉄と私鉄が大きな公園を囲うように、学校の最寄駅に通じている。星奈は、今まで地下鉄を利用していたらしい。
俺の家から地下鉄の駅まで15分、私鉄の駅まで5分。唯さんによると、星奈の家は、公園の向こう側で、俺の家の、逆の時間で駅に行けるとのことだ。そして二年生からは、私鉄で通う。とのこと。
「どうしてかな~?なんでかな~?」
と、唯さんが俺を茶化してくるので、苦笑いだけ浮かべて、ごまかした。
「お待たせ。さあ行きましょ。」
俺たちは、電車に乗り唯さんの自宅へと向かう。
駅を降りると俺の最寄の2個手前の駅だった。しばらく、歩くと高級住宅街と思しき街並みが広がっていた。この辺りは、一軒一軒が広い。サラリーマン家庭には手が届かなそう雰囲気だ。
「ここよ。入って。」
かおりと顔を見合わせてしまった。
武家屋敷のような高い塀のある立派な門構え。見とれていると、星奈が何の躊躇もなく入っていく。遅れてはいけないと、玄関に入り、緊張気味に挨拶をしながら家に上がった。
「星奈、お茶を用意するから、案内お願い。」
「わかった。」
星奈は、まるで自宅のように広い家の一室に案内してくれた。
「星奈は、よく来るの?」
と思わず聞いてしまった。
「ここ、私の親戚の家だから。」
「えっ?星奈と唯さんって?」
「私たち、従妹よ。」
お茶を持ってきた唯さんが言った。系統は違うけれど、美人とかわいい従姉妹だ。
「従妹同士で同級生なんだ。」
かおりが呟くと。
「違う違う、私3年生よ!ワッペン良く見て。」
確かに色が違う。経年で少し褪せているようで、全く気づかなかった・・・。
「唯先輩と呼んだ方がよろしいでしょうか?」
恐る恐る聞いてみると、笑いながら。
「そのままで良いよ!かおりちゃんもね。」
良かった。今更、先輩とか呼び難いです……。
落ち着いたところで、マニュアルが気になる俺が口火を切った。
「星奈、マニュアル見せてもらっていい?」
「うん。」
星奈からマニュアルを受け取ると、裏表紙を見てみる。
……何も書いていない。
作者の情報も出版社の情報も何も書いていないし、自作の本か?星奈や唯さんが作るとは思えないし、寧ろ作れたら魔法使いかと疑うレベルだし……。そして、俺が見ても何も書いていない、ただの手帳かノートに見える。
「かおり、ちょっと持ってみて。」
「うん。中は1ページ目しか見せないよ。」
頷くと、同じように裏表紙などを見たが何も書いていない。俺と違うのは、間違いなく1ページ目が存在すること。
そして、その内容がちょっとグッと来る内容なこと。
「自分の武器……。」
「ユッキー!!」
思わずつぶやいてしまった……。すかさず、かおりの突っ込みが入ったのに、星奈は目を逸らすし、唯さん笑ってるし。
「すみません……。」
後が怖いから謝っておこう。
「そうだ、かおり。五日市先生って知ってる?俺の担任なんだけど。」
「ん?私のおねーちゃんだよ。」
あのスタイルは血筋か。姉妹おそるべし。
「ユッキー。いやらしい目で見てないよね?」
「見てません。断じて見てません。」
色々試してみたけれど、俺と唯さんは手に取っても何も起こらず、星奈とかおりは、昨日と同じ状況だった。
とりあえず、今日のところは解散して、また明日考えるということになった。
「明日は、放課後の理科室?」
かおりが聞くと
「明日は、お昼にしよう。ユキヤ君、今日、食事したところで。かおりちゃんも連れてきてね。」
唯さん、黙ってたのにかおりにバラさないでください……。
「ユッキー。あとで詳しく聞かせて。」
星奈は、食事をごちそうになるそうなので、かおりに言い訳めいた説明をしながら、足早に、そう足早に帰宅した・・。
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