軽い拷問
無事、元女子高初春学園に入学できたユキヤ。
しかし、何の間違えか男子は自分ひとりであった。
想定外だけれども、夢にまでみたハーレム生活。
楽しむと決めたユキヤだったが。
2話目、お楽しみください。
さすが去年までは、お嬢様女学園。校門ですら気品が漂っている。
そんなところで、俺が3年間青春を謳歌するなんて考えるとなかなか感慨深い。そして、当たり前だが、すごい女子率。それはうれしいことなのだけれど、この状況で1つ不安なことがあった。
全く男子が居ない。女子しか目に入らない。モヤモヤの正体はこれか!?それとも、男子の集合場所は違うのか?
「クラスが張り出されてるみたいよ。」
かおりが教えてくれた。
人だかりに向かって歩くと、周りの人が俺に視線を向ける。この場に居るすべての人から注目を浴びていることは、すぐに分かった。
もちろん理由は、俺が男子だからだろう。共学になって初めての新入生、上の学年が全員女子なので、男子が少ないと考えて受験したのだから当たり前なのだけれど、それにしても俺以外に男子が見当たらない。
男子の指定場所があるのか?まさか全く男子がいないなんてことはないよな?という不安の中、掲示板に向かった。
「ユッキーの名前……。ない。」
いや、そんなはずはない!
合格通知もきたし、入学金も納付したはず。俺の両親は、そこまでおっちょこちょいではないはずだ。
「ほんとに……ないだと。」
俺の高校生活、始まってすらないのに、もう終了してしまうのか?
「ユッキー……あった。」
かおりの指さす方向に目を向けると一番下の所に、別の紙が掲示してあり、そこに1人、そう俺の名前だけがあった。
名前があったことに、ホッとして胸をなでおろすが、なぜ別枠なのだという疑問が……。入学式で緊張している俺を更にドキドキさせる。
掲示には、一言追加で、入学式後、職員室に来るようにと。この特別扱いな感じが、俺の不安を煽る。疑問の多い中、かおりと別れ入学式の会場である講堂に入った。
「終わった……。」
この言葉が出るくらい、入学式は軽い拷問だった。
まさか共学なのに男子の入学者が、俺一人だったなんて……。
それにあの入学式の席順。
職員席の一番前って、俺は普通の新入生なのに、扱いは、希少種、天然記念物というか、まるで珍獣だった。
自ら望んだハーレム生活を、若干後悔しはじめながら、足早に職員室へ向かった。
「失礼しまーす。」
「おっ!来たな手塚!」
声の主に目を向けると、綺麗なお姉さんが座っている。パンツスーツの上からでも判る抜群のスタイル、街で見かけたらしばらく見とれてしまう感じの美女。
もしかして、この人が担任の先生か?
「いや、共学の発表が遅かったせいで、男子の入学者が君しかいなくて悪かったね!」
「あっ、はい。若干、後悔しはじめてます。」
「はは……。まあ、それはそうと君のクラスは、A組ね。これから一緒に行きましょう。色々と最初は大変だろうけど……なんというか……辞めないでね!」
先生が辞めないでねっていう気持ちも分かる。
これは、切り替えていこう。
そもそも俺が望んで受験した高校だ。がむしゃらに努力して勝ち取った入学切符。そんな、過去の俺の努力を否定することになる。その頃の気持ちを持って、このハーレム学園生活を出来る限り楽しもうではないか。
「はーい!みんな適当に座って。手塚もね。」
周囲の猛烈な注目を浴びながら、たまたま空いていた窓際の席に着席する。
「私が、担任の五日市千春です。よろしくね。」
五日市?どこかで聞いたことあるな。でも、今は緊張で思い出せない。
「このクラスには、既に学園の有名人が一人いるから最初は落ち着かないかもしれないけど、高校生活後悔しないように、たくさん勉強して青春してね!」
有名人って俺のことですよね。まあ、しばらくすれば落ち着くだろうし……。
心残りとすれば、このクラスにかおりは居ないことだ。一緒だったら多少気が楽なのに。
「ではこれで、今日は解散。気を付けて帰るのよ。」
やっと終わった。今日は、猛烈に疲れた……。さっさと帰ろう。
「手塚君!」
女子という女子がわんさと集まってきて、あらゆる方向から猛烈な質問攻めにされる。俺は聖徳太子ではありません……。この状況はハーレムというより入学式同様、軽い拷問。もう、女性恐怖症になりそうだ。
「ごめん。俺、早く帰らなきゃいけないんだ!みんなまた明日!」
逃げるように教室を出る。
今まで緊張してよくわからなかったが、美人系、かわいい系ばかりで、よりどりみどりだ!それに、この学校の制服はエロい。男子の欲望をよくわかってらっしゃる。
ここで俺は青春を謳歌する。たくさんの女子と仲良くするのだ!と思っているが、今日はお腹がいっぱい過ぎる。
早く帰って、寝よう……。
「ちょっとまって……、そこの新入生。」
振り絞るように、小さな声が聞こえた。俺じゃない……よな?
「そこの男子……。」
また小さい声が。今度は、男子って聞こえた。これは、紛れもなく俺だよな……。振り返るとそこに小柄な女子が立っていた。全然知らない人だ。今日はあまり人と関わり合いたく無いな。
「……なんですか?」
「あの……。ちょっと付き合ってほしいのだけれど……。」
「今日は、早く帰りたいんだけど。」
「5分で終わるからちょっと来て……。」
半ば無理やりに手を引かれ、誰も居ない理科室?に連れて来られた。
この学園は、学年によりワッペンの色が違う。手を引かれながら確認してみたところによると、この人は、2年の先輩らしい。
よくよく見てみると色白な小柄で、笑顔を見せていないどころか、緊張がこちらに伝わってくるくらいで表情がこわばっているのにもかかわらず、かなりかわいい。
胸の膨らみも心地よさそうで、ニーハイからの絶対領域が下半身に悪い……いや良い。
俺はこれから、これも居ないこの部屋で、先輩に何をされるのだろう……。期待と不安でワクワクする。
先輩が深呼吸をする。何かを心に決めたのか、真っ直ぐに俺を見つめて、固く閉ざされていた口を開いた。
「あなた、私と付き合って。」
「へっ?」
突然の先輩から告白なのか、脅迫なのか分からない言葉を受けて、俺は、言葉にならない声を発してしまった……。
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