恥ずかしい
お越しいただきありがとうございます。
これから、4人の物語の始まりです。
こんなハーレム状態の学校に入学したら
慣れる前に辞めてしまいそうです・・・。
評価等いただけると励みになります。
お楽しみください。
主要登場人物
ユキヤ 主人公。隙があって鈍感。
かおり ユキヤの中学からの同級生。
星奈 2年生の先輩。ユキヤに付き合ってと言って保留にされている。
唯 3年生。モデル並みの美貌の持ち主。
五日市先生 かおりのお姉さん。
昼休みになり、逃げるように部室に向かう。
やっと一息つける。
部室は、すでに開いており、唯さんが待っていた。
「ユキヤ君、こんにちは。」
「こんにちは、唯さん。」
「星奈は、もう元気だって。さっきラインが来たよ。」
「良かったです。昨日誘った時もちょっと元気なかったので。」
「星奈は、ちょっと精神的に弱いところがあって
たまに、精神的に疲れると体に出ちゃうのよね。
まあ、身体が悪いわけじゃないから気にしないで。」
何かひっかかる感じがするけど、重要なことであれば
唯さんなら言ってくれると思うし、気にする必要もないか。
「こんにちはー!」
かおりが来ると、ほっと出来る食事タイムの始まりだ。
「そう言えばユッキー。今日、体育じゃなかったっけ?」
かおりさん。あなたのお姉さんが担任なのをすっかり忘れていました。
「そうだよ。先生に気を使わせてしまった。」
「良いの。それが先生だもん。」
「私が同じクラスだったらよかったのに。」
「姉妹が先生と生徒は、難しいよな。」
「そうだね。私も実際そうだったら、どう接して良いかわかんない。」
「五日市先生、ほかの先生からも評判良くて、有名なんだよ。
ちょっと男っぽいところも、また魅力的なのよね。」
唯さんは、五日市先生にちょっとあこがれているのかな?
「あっそうそう、私、これからちょっと用事があるから先に行くねー!
お二人でごゆっくりー!」
素早くお弁当を片付け、唯さんは行ってしまった。
かおりと二人っきり。
朝の出来事があるから、いつもと違ってちょっと緊張する。
でも、星奈や唯さんと二人よりは、リラックスできるかな。
「ユッキー・・・。朝のことなんだけど。」
意を決したように、かおりが言った。
「うん。」
「実は、マニュアルに書いてあったことなの。」
「えっ?どんな感じに?」
「ユッキーと勇気を出して、初めて手を握る。それがかおりの
学校生活が充実する絶対条件。って。」
「かおり。ちょっと良いですか?」
「何、ユッキー。」
「あなたが、俺の手を握るのは2回目です。」
「えっ???」
「入学初日に、家から手を握って駅まで向かったことをお忘れですか?
俺は、忘れていません。あの時、俺は、とってもびっくりして、
かおりの手のやわらかい感触を楽しめなかったことを後悔しました。
お忘れですか?かおりさん。」
かおりが目を見開き俺のことを見た後
真っ赤になって、うつむいてしまった。
たまにはやり返しておかないと。
「忘れてた・・っていうかドキドキしてて、覚えてない・・。」
俺はかなり鮮明に覚えているんだけど
かおりは、入学式で緊張していたのかな?
「かおりが迎えに来てくれるから、俺は、今も学校に行けているんだと思う。
かおりも先生にも、本当に感謝してる。ありがとう。
そして、これからもよろしく。」
「うん。ユッキーよろしくね。」
「あと俺の手で良ければ、何時でもお貸ししますよ。」
「ユッキーは、私に感謝をしているのでしょうか?
それとも、からかっているのでしょうか?どちらですか?」
いかん。やりすぎた。
かおりさん、怒ってらっしゃる
「いえ、すいません。調子に乗りました。
お許し下さい。かおり様。」
「よろしい。許す。」
二人で、笑いあった。
かおりとはずっと友達でいたい。
心の底から思った。
昼の終わり間際、かおりが言った。
「ユッキー、今日の放課後、私、用事があるから
先に帰ってもらっていい?」
「うん。唯さんにも言っておいて。俺もまっすぐ帰ろうかな。
ところで用事って何?」
「内緒!」
「そっか。じゃ仕方ないね。」
「じゃ、また明日ね!」
「うん。かおりも気を付けて帰ってね。」
お昼なのに帰りの挨拶をして、教室に戻った。
退屈な授業が終わり、放課後、スマホを見てみると
星奈から明日は、学校に行けるということ、
かおりが一緒に帰れないこと、唯さんから放課後の活動はなし
と連絡が入っていた。
たまには、一人で帰るのも良いかもな。
そう思いながらも一度部室に行き、昨日買ったカップに
一杯のインスタントコーヒーを入れて一息ついた。
これは、俺の洗剤たちに紛れて入っていたものらしい。
たぶん、母さんが気を聞かせて入れてくれたんだろう。
サンキュー母さん。
1時間ほどしてから、部室にカギを掛け、
学校から駅に向かった。
自宅の最寄り駅の近くには、昔から小さな喫茶店がある。
俺も子供の頃、ナポリタンを食べた記憶がある。
ご夫婦の店で、こじんまりしているけど、なかなか繁盛している
そんなお店だった。
一年くらい前に代替わりをしたらしく、
改装をして、少し店舗が広がり、今風のおしゃれなお店だ。
「明日からよろしくお願いします。」
そう言いながら、喫茶店から出てきたのはかおりだった。
「かおり?」
「あっ・・。ユッキー・・。」
どうしたんだろう。気になる。
「まだ、内緒にしようと思ってたのに。
私、来週から週に3回くらい放課後、ここでアルバイトさせてもらうの。」
「そうなんだ。」
「うちは、お姉ちゃんと二人暮らしで家計も厳しいしね。
お姉ちゃんにだけ迷惑かけられないから。」
言葉が出なかった。
仲良くなれたと思った俺は、かおりの事情を全く何もわかっていなかった。
初春学園は、学費は高くはない。でもそれは私立としてであって
公立とは比較にならないほど高い。アルバイトは許可があれば出来る。
校則違反ではない。でも、そういうことじゃない。
高校一年生が、自分の家庭の事情を理解し、アルバイトをするという選択をする。
簡単に出来ることではない。俺には、家計がとか、事情がとか
全然考えたことがなかった。かおりに申し訳ない気持ちと同時に
かおりに対する恥ずかしさ、自分に対する情けなさを感じた。
「かおり、何か協力できることがあったら言って。」
「うん。ユッキーありがとう。」
「俺もアルバイトしようかな・・・。」
「一緒にする?」
「考えとく。じゃ、かおりここで。」
「うん。またねー!」
いつもとかわらず、明るいかおり。
そんなかおりに対して、恥ずかしくて頭が回らない。
自分の幼い考えと、甘い考えが人を傷つける前に、俺の愚かさが解って良かった。
そう考えるのが精いっぱいだった。
頭がぐるぐる回るなか、帰宅した。
「俺もアルバイト、社会経験をしてみたい。成長したい。」
そんなことを考えながら、今日のわくドキを
すっかり忘れて、疲れた体を休めた。
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