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恋愛読本。  作者: 半栖酒美斗
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葛藤。

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お楽しみください。


主要登場人物

ユキヤ  主人公。隙があって鈍感。

かおり ユキヤの中学からの同級生。(実は小学校から。)

星奈  2年生の先輩。ユキヤの幼馴染。

唯   3年生。モデル並みの美貌の持ち主。

五日市先生(千春) かおりのお姉さん。

「ユッキー!おはよう!」

「おはよ。ユキ君。」


「おはよう。」


今日から学校だ。2人の顔を見れるのは嬉しいし、ひさしぶりにやわらかい感触を楽しめるということは、とっても楽しいけれど……。


「ユッキー、なんか浮かない顔してるね。どしたの?」


「うん。まあ気にしないで。」


電車の中で上目づかいで聞かれたら、そりゃ何も言えません。しかも久しぶりにくっついているのは良いとして、夏服なんです!薄いんです!


「ユキ君。なんか目が……。」


うん。わかってます。エッチな目ですよね?仕方ないんです。2人ともやわらかいんですもん。少し元気出た。チラッと見えた星奈のピアスも、俺を満足させる。


教室に着くと、日焼けしている感じの子は殆どいない。やっぱり女子だから、日焼けは気になるのかな?


「手塚君焼けてるね!なんだかかっこいい。」


「ありがとう、琴宮さん。琴宮さんはどこか遊びに行ったの?」


「私は、祖父の家に行ったくらいかな?あとは大体自宅に居たよ。」


「遊びにとかは?」


「すこし、外出はしましたけど、海とかプールとは無いですね。ちょっと行ってみたいですけど、こわいかな。」


やっぱり、女子だとそうなるのかな?この学校。来年はもっと男子入れるべきだわ。琴宮さんなんて普通にかわいいし、彼氏くらい居てもおかしくないのに。


チャイムが鳴ると、久しぶりの千春さん。あまり化粧をしていない先生モードも良いけど、やっぱり年相応に化粧した千春さんの方がいいな。なんて考えていたら、軽い挨拶をしてから意外な内容を話し始めた。


「みんな、突然だけど紹介する人が居ます。」


紹介?この時期に転入生とかかな?でも、なんかちょっと事情が違いそう。教室の戸が開くと、共学であったならば、男子がざわつくレベルの女子が教室に入ってくる。明るい色のストレートロング、かおりくらいの身長だろうか、制服を着ていても分かるスタイルの良さ。そして、驚くほど白い肌の大人びた雰囲気と外国人なのであろうか、芸能人と言っても差し支え無いほどの美形。そんな外見とは裏腹に、なんとなくうつむき加減で元気が無さそうな気がする。


「入学の時から名簿には有ったと思うんだけど、昨年の夏休み明けから休学して、海外で生活してた都合で、これから本格的に復帰になります。皆さんより1つ上の年になるけど仲良くしてくださいね。」


「ローズ・玲奈です。よろしくお願いします……。」


こう言っては失礼だけれど、派手な見た目からは想像できない小さな声での自己紹介だ。高校からの入学者ではなさそうだから、もしかしたら、エスカレーター組は、彼女のことを知っているのかもしれないな。

俺の後ろに席が決まった彼女は、ゆっくりと歩き出し俺の方を一瞥して、驚いた顔をしたが、直ぐにうつむいて席に着いた。席は近いけど、特に絡むこともないかな。


「話は変わって学園祭の事なんだけど、明日、何をするか決めるから各自考えておいて。部活、サークルで出し物する場合は、そっち優先でOKだよ。」


俺の憂鬱の種の発表だ。クラスで催しものをすると、俺は琴宮さんくらいしか仲が良い人いないし、完全に浮く。本当にこれはキツイ。でも、今の話によるとサークルで出し物をすれば、そっちを優先していいらしい。それは朗報だけれど、少人数のサークルで催し物なんて難しいし、みんなに迷惑をかけるのはいやだから、やっぱりクラスの方でやるしかないか……。憂鬱だ。

 夏休み明けということで、今日は午前中のしかもこのコマで終わり。部室に顔を出すことにしているけど、みんなに悟られないように一息ついてから行こう……。わがままも言いたくないしね。

 自販機でコーヒーを買い、自席で飲む。何故か自販機にブラックコーヒーがない。今度、千春さんにお願いしてみよう。


「ユキヤ君。」


声を掛けて来た方を見ると意外な人物が立っていた。葵だ。


「……。」


なんて答えて良いか分からなかったので、視線だけ向けて黙っていた。


「あの、ずっと謝りたいと思っていて。あの時はごめんなさい。私、自分の欲望とわがままだけで動いてしまいました。許してもらえるとは思っていないけれど、本当に、ごめんなさい。それだけ言いたくて。」


俺は、父さんの言葉を思い出していた。

“言葉は、意味をなさないことがある。その時は行動で示せ。”


「佐藤さん。謝罪はわかった。でも、それは君の行動で示して。」


「……わかりました。これから行動で示すね。」


そう言って、葵は去って行った。別にもう怒ってはいない。でも、女性不信の元凶は彼女。俺は、あれから女性を信用できない。それを君には、晴らしてもらわないとね。

 あの時に味わった気持ちは、正直言ってトラウマなんだと思う。あれから女性を本当に信用できない。もしかしたら3人のことも信用出来ていないのかもしれない。それは、3人に失礼だからとか、そんなこと無いとか、そう言う葛藤の中で、どうにか信用を形作っている幻なのかもしれない。たまに、怖くなることがある。3人が気持ちをはっきりさせない俺のことを、本当はどう思っているのか、怖くて眠れないこともある。もっと自分に自信がほしい……。


そんなことを考えながら、自席から立ち上がり部室に向かった。

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