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恋愛読本。  作者: 半栖酒美斗
134/191

握手

お越しいただきありがとうございます。

愛奈主観です。果たして愛奈はレギュラー入り出来るのか!?

ブックマーク・評価等いただけると励みになります。

お楽しみください。


主要登場人物

ユキヤ  主人公。隙があって鈍感。

かおり ユキヤの中学からの同級生。(実は小学校から。)

星奈  2年生の先輩。ユキヤの幼馴染。

唯   3年生。モデル並みの美貌の持ち主。

五日市先生(千春) かおりのお姉さん。


よく考えてみると、男子と一緒のテーブルで食事をするなんて、初めてかもしれない。だめだ……。だんだん意識しはじめてる。よくわからない感情の昂りが、私を混乱させる。とにかく温かい飲み物でも持って戻ろう。


「愛奈ちゃんは、コーヒーなんだ。」


ユキ君のその言葉の意味を私はすぐに理解した。


「帰って来たら、やたら星奈がコーヒーを淹れるの。だからお店のコーヒーも色々と飲んでみようかと思って。前は、紅茶しか淹れなかったのにね。」


「そうなんだ。じゃ休み明けの部活がたのしみだ。」


「手塚さんは、本当に不思議な方ですよね。周りの女性達をみんな魅了してしまって、なんだかうらやましいです。」


「美澤さん、そんなこと無いです。学校ではただの珍獣ですから。」


「手塚さんは謙遜しますけど、そう言いながら、親身になって相談に乗ってくれたり、お話を聞いてくれたり、何というか、女子の望んでいることをしてくれる感じです。」


「例えばどんなところですか?」


美羽が興味深そうに聞く。確かに気になる。いくら元女子高にいるからって、心を許すのは別の問題だし、女子に好かれる何か秘密があるのかも。


「そうですね……。ご本人は意識されていないと思うんですけど、しっかり話を聞いてくれて、相手の考えを尊重してくれます。あまり否定しないですし。でも、否定するときは、はっきり否定してくれます。あと、なんというか……。背中を押してくれます……。」


最後の一言が全てなのかな。背中を押してくれるって信用してもらえてないと出来ないことだもんね。


「そんな男の子、私、出会えるのかな……。」


「美羽さん、そんな男子、いくらでも居ますから。でも、悪意を持った人もたくさん居ることをわすれないで。ちゃんと見極めることが大切ですから。最近、そんな出来事もありましたし。」


「そうなの?どんなこと?」


つい興味本位で聞いてしまった。

 すると、ユキ君は、かおりちゃんに起きた出来事と、入学後に自分に起きた、防ぎようのない出来事を話してくれた。そう、悪意を持たれたら男女は関係ない。自分で防ぐことが必要になる。そんな当たり前のことを、経験の少ない私たちは、意識が薄いのだろう。もし、ユキ君、いえ、仲良くなった男子に悪意があったらなんて思うと、正直言って怖くて男子となんて話せないどころか、一生信用できなくなると思う。この話は、いつも心の片隅に置いておこう。


「かおりちゃん、そんなことがあったのね。ユキ君は、それから回復したの?」


「俺は、相変わらず女性不信ですよ。」


「その割には、周りに女性しかいないような気がするのですけど。」


「1人、信用できる人が居ないと無理です。今日は、愛奈ちゃん居るし。」


私は、信用できる女子なんだ。警戒されていなくて良かった。


「美澤さんも来たしね。」


「はい!」


美澤さんは、ユキ君の言葉に嬉しそうだ。そして、いつ頼んだのかケーキを食べている。ちょっと不思議な感じの女性……。来年から社会人だというけれど、どんなところに就職するのかしら?


「美澤さんは、就職は決まったんですか?」


「そうなんです!それを手塚さんに言いたくて。」


「俺にですか?」


「私、初春学園の高等部に就職が決まりました!来年から教師として初春に通います!」


「えー、の前に、おめでとうございます。よく初春に入れましたね。教師少ないのに。」


確かに、一貫校と言えども小さい学校だし、教師がそんなに必要とは思えないんだけど。


「退職される先生が居るのもそうなんですけど、来年度から1クラス増やすそうです。そこに滑りこみました。正直言って、全然自信が無かったんですけど、みなさんとまた、会えることを目標にがんばりました!」


美澤さんにとって、教育実習がとても大切な思い出だったのかな。なんだか、星奈や唯がうらやましい。これもユキ君の不思議な魅力のおかげなのかも。


「そうなんですね。じゃまた、部室に遊びに来てください。きっと3人共喜びますよ。」


「私もアルバイト、始めてみようかな……。」


美羽がつぶやく。


「やった方が良いです!私、アルバイトしてから視野が広がりましたし、男性とも少しですけど、お話できるようになってきました。サービス業がおすすめです!」


「美澤さん、どこでアルバイトしているんですか?」


「ここです!」


ユキ君の質問に美澤さんが意表を突く返事をした。入ってきたときにオーダーしてたのね。どうりで、オーダーした感じが無いと思った。

 そんな感じで、4人で話し込んだ。ユキ君の話は、色々と興味深く、こんな時に男子がこう思ってるとか、視線を合わせて、すぐに逸らす時の心情とか、逆にじっと見つめる時とか、男子って、女子よりも色々と感じながらというか、自分勝手な想像をしながら行動している、そんな気がする話だった。少し、心理学に近い感じで、美澤さんがうんうんとうなづいているのが、印象的だった。

いつの間にかなり時間が経っていて、美羽が帰るということで今日は解散することになる。結局ファミレスでおしゃべりするという、如何にも学生的な感じだった。


「じゃ美澤さん。今度、制服姿の美澤さん見に来ますね!」


ユキ君は、ちょっとエッチなんだと思う。ここの制服、スカート短いし、胸を強調するような感じだし。なんというか、嫌味じゃないんだけど、女子に期待させるようなことをサラッと言う。これは天賦の才能か……。


「はい!じゃサービスしますね!」


うん。これは才能だわ。


美澤さんと別れ、3人で駅に向かう。途中、男子と手を繋いでみたいという美羽に、ユキ君が黙って手を繋ぐというイベントがあり、真っ赤になってうつむく、かわいい美羽も見ることが出来た。ちょっと得した気分。


「あの、今日は、色々とありがとうございました。」


「ユキ君、本当にありがとう。そして、巻き込んでしまってごめんなさい。」


「俺も、なんだか楽しかったので結果オーライです。」


別れ際に、ユキ君が美羽と握手していたので、どさくさに紛れて私も握手する。


色々あったけど、今日は楽しかった。


電車で手をつないだり、見つめ合ったドキドキ、きっと私は一生忘れない。


この感情に名前を付けるなら、なんて付けよう?

次に男性を好きになるまで、考えておこうかな……。

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よろしくお願いします。

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