アドリブ
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でも、それは思いやりであったり
気持ちの裏返しだったり、
想いに対する誤魔化しかもしれません。
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お楽しみください。
主要登場人物
ユキヤ 主人公。隙があって鈍感。
かおり ユキヤの中学からの同級生。
星奈 2年生の先輩。ユキヤに付き合ってと言って保留にされている。
唯 3年生。モデル並みの美貌の持ち主。
五日市先生 かおりのお姉さん。
放課後になると、かおりが迎えに来る。
校門前で二人に落ち合うと唯さんが言った。
「今日も家に来て。話があるの。」
全員返事をすると。駅へと向かう。
俺は意を決して
「あの、みんな、今日はありがとう。
そして、色々と気を遣わせてしまってごめん。」
「気にしないで、ユキヤ君。私、ショートケーキ。」(唯)
「モンブラン。」(星奈)
「ミルフィーユ。」(かおり)
「ごちそうさせていただきます・・・。」
「美味しいお店は、こちらになりま~す。」
言われるがまま、ケーキを4つテイクアウトし
唯さんの家に向かった。
中川家に着くと、前回の部屋に通され
唯さんが紅茶を持ってきた。
「アッサムにしたけど、良いかしら?ミルクも持ってきたわ。」
「はい。大丈夫です。」
俺以外は、みんなミルクティーにしていた。
そういうものなのかもしれない。
ケーキを食べながら、聞いてみる。
「お昼のことなんだけど、みんな何時、打ち合わせたの?」
「昨日の夜、星奈さんが、私にマニュアルのこと相談に連絡が来て、
とりあえず、私のタロットマニュアルでごまかそうって言う事になったの。」
朝、ゴソゴソしていたのは、それなのね。
「サークルの話も星奈が?」
「それは私のアドリブ。」
「唯さん凄い・・・。」
かおりがつぶやく。
親密度が増したのか、呼び方が心地よくなった。
「最年長ですから!それくらいは経験の差ですよ。てへ。」
「でも、私、この集まりが居心地よかったから、昨日の帰りにサークル申請して来たの。
この辺りは、本当に偶然だったから驚いた・・。
今日、正式に学校から承認されたから、学外の集まりは終わりね。
明日から部室棟の15号室で放課後活動します!」
「あと、かおりちゃんのお姉さんにサークルの監督をお願いしちゃった。
ユキヤ君がメンバーって言ったら、快く引き受けてくださったけど、
報告が事後になっちゃってごめんね。」
「いえ全然。お姉ちゃんもユッキーの事、気になってたみたいだし。」
「そう言えば、初日に辞めないでねって念を押された・・・。」
どっと笑いが起き、場が和んだ。
「先走っちゃったけど、ユキヤ君とかおりちゃんは、部活とか考えてた?」
「俺は、入る部活がないので。」
「私は、・・どこでも・・。」
「それなら決まりね!もちろん星奈もメンバーよ。」
星奈は、静かに頷くとモンブランを美味しそうに頬張っていた。
「ちょっと気になったんですけど、唯さん、佐藤さんとはどういう関係?」
「彼女は、中等部の時に華道部で一緒だったの。
でもすぐに出て来なくなっちゃって、私は部長だったから
何度か誘いに行ったんだけど、結局辞めちゃった。」
「そうだったんですか。」
唯さんに対して後ろめたかったんだろう。
そういうこともあるよな。
「それにしても、すごい家ですね。お屋敷って感じで。」
かおりが周りを見渡しながら言った。
「ずっと住んでいるから実感ないけど・・。とりあえず掃除が大変ね。」
唯さんが笑いをとる。
「中川の家は、昔からいつも沢山人が居て、賑やかだった。
私もしばらく住んでたこともあるし。」
「星奈も住んでたんだ。」
「あと初代の学園長も中川家の人ね。今も多少繋がりはあるよ。」
唯さんは、すごい事を平然と言うので、ちょっと怖い。
でも信頼できる先輩が近くに居てくれることは心強い。
「学園は、かなり長い歴史があるから、
この地域に卒業生が沢山居るってお母さんが言ってた。
実際、私と唯のお母さんもそうだし、
私たちも小学校から初春に入って、しかもエスカレーターが多いから
殆どクラスメイトが変わらない。ちょっと息苦しい。」
物静かな星奈らしい話だ。
いつも息苦しさを感じているのかな?
出来るだけ和やかな雰囲気を作れるように努力しよう。
「ところで唯、サークルの名前は?」
「ユキヤを愛でる会」
「ブホッ!」
思わずむせて、いや若干噴き出してしまった。
みんなが笑っている。
「冗談よ!これで承認されたら学園の危機を感じるわ。
名前は、古文書研究サークルにしてある。間違いではないでしょ?
愛でる会でも間違いないかもだけど。」
「からかわないでください唯さん・・・。」
「でも不思議よね、この本。誰がなんの為に書いたんだろう。
家の資料にしては、新しいし・・・。一応、今度お母さんに聞いてみるね。」
「そう言えば星奈の2ページ目の内容が変わったって。
どんな内容なの?」
「放課後、ユキヤと一緒に居なければ、一生後悔する。だった。」
だから、校門で待っていたのか。
「今までは大雑把な感じだったのに、一生後悔なんて出たから
気になって。急に合流してごめんなさい。」
「謝らないでいいよ。でも、もし星奈が居なかったら何か起きたのかな?
いずれにしても、しばらく様子を見ないとだね。」
みんなが頷く。
内容が変わることも分かったし、
今後は、変化があったら星奈がグループラインに送ることになった。
三人とも結構やり取りしていたみたいで、なんだかちょっと
疎外感を感じるけど、女子同士仲が良ければそれでいいや。
「一つだけ心配があって、サークル加入は基本的に断れないの
特にユキヤ君が居るから、全学年に希望者居そうだし・・・。
何か対策考えないとかも。まあ、ユキヤ君が女子一杯を希望するならね。」
「希望しません。この4人が良いです。」
即答した。もうお腹いっぱいです・・・。
「よろしい。全員、人数を増やさない対策考えてみて。
けど、もし希望が来たら、みんなで、古文書研究しましょう。」
唯さんの提案に全員同意した。
「そうだ!部室がとっても汚いので、明日は掃除です!
皆さん掃除用具を持ち、放課後、部室棟15号室に集合するように、
良いですか?」
「は~い」
あっという間に時は過ぎ、3人で帰路につく。
かおりと星奈、最初は不安だったけど
相性は、悪くなさそうなので安心した。
楽しそうに人数を増やさない対策を話し合っている。
俺は、明日から始まる初めてのサークル活動
楽しみで眠れないかもしれない。
そんなことを考えながら、わくドキの一日が過ぎていった。
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