動揺
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これは動揺しますね。ホントに……。
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主要登場人物
ユキヤ 主人公。隙があって鈍感。
かおり ユキヤの中学からの同級生。(実は小学校から。)
星奈 2年生の先輩。ユキヤの幼馴染。
唯 3年生。モデル並みの美貌の持ち主。
五日市先生(千春) かおりのお姉さん。
「私、中学のころの同級生に好きだから付き合ってほしいって告白されたの。」
「えっ。」
唐突な内容に、思考が停止してしまった。言葉がうまく飲み込めない。好きだから?付き合ってほしい?かおりに?
「かおりは、どうしたいの?」
違う!そんな言葉を投げかけたいんじゃない。でも、俺がかおりに伝えたい言葉が見つからない。俺に何かを言う資格があるのか?でも話があると言ったのはかおりだ。でも、かおりは何を言ってほしい?でも、それは俺の意志に反していないのか?もう混乱して、何もかもわからない。
「私は、どうして良いか分からない……。」
落ち着かなければ、かおりを深く傷付けてしまうかもしれないし、俺の意志に反してしまうかもしれない。慎重に言葉を選びたいけれど、どうしても言葉が浮かんでこない。
「ごめん、かおり、俺、飲み物持ってくる。」
そう言って、1階の台所まで来た。冷蔵庫の飲み物に手を伸ばすと、自分の手が震えていることが分かった。感情のコントロールが出来ていない証拠だ。今まで生きてきて、ここまで動揺したことはない。自分がどうすれば良いのか、何を話せば良いのか本当にわからない。水を少し飲んで落ち着かせる。
「お待たせ。」
「うん。」
「かおり。俺、はっきり言うと今、動揺して何を言って良いかわからない。」
「うん。」
「少し前に、佐々木さんに告白された時、俺、分かったことが有るんだ。俺は、佐々木さんに恋していたんじゃないって。きっと初春に入ったばかりの頃の女子達同様に、恋に恋をしていたんだと思う。だから、告白された時、佐々木さんと一緒に居たいとか思う前に、3人のことが浮かんできたんだ。これを恋だというのなら、3人に恋しているんだと思う。でも、正直なところ、好きではあっても付き合いたいとかあまり思っていなくて、3人一緒に居たいって思ってる。まだ、付き合うとか、その時ではないんだと思う。」
「うん。」
「ただね。かおりがその人と付き合いたいと思うのであれば、俺には何も言う資格なんてない。」
「うん。」
「それでも、わがままを言わせてもらえるのなら。かおりがその人と付き合うことが、俺の前から居なくなってしまうことならば、今の俺には想像できない……。」
「うん。」
「かおりは、俺にとって大切な人だから……。」
「うん……。」
かおりは、そう言って、うつむいた。
どのくらい時間が経ったであろう。まだ数分と経っていないはずなのに、数時間経っているような気分だった。
「ねえ。ユッキー。」
「うん。」
「私ね。ユッキーとずっと一緒に居たいと思ってる。それが恋なのかはわかんない。でもね、私がその気持ちに確信が持てたら、想いを伝えるね。だから、ユッキーも想いに応えてほしい。」
「うん。わかった。」
「告白してくれた人には悪いけど、断るね。」
「うん。」
「ありがとう。ユッキー。」
「うん。かおりもありがとう。」
「私、真面目な話していたら、お腹すいちゃった。」
「そうだね。何食べる?」
「今日、本当はね。星奈さんがカレーを作って待ってるの。だから、一緒に行こ。」
「ほんとに!?カレー食べたかったんだ!」
「じゃ戸締りして、お泊り道具持って!私の家に行くよ!」
「えっ?お泊り道具?」
「そう。2人にも事情は話してあるから、夜ご飯は一緒に食べようって言って、家で作ってもらっていたの。もし、この話がダメだったらユッキーは連れて来ないってことで。」
「危なかった……。カレーが離れていくところだった。」
「途中まで3人で作ってたから、合作だよ。きっとおいしいよ!」
「うん。たのしみ。ちょっとまって、直ぐ支度するから。」
そう言って立ち上がった俺に、かおりがハグをしてきた。
お互い、何も言わなかった。
少しの間だけ、体温を共有すると、離れて
「はいユッキー!支度支度!」
いつものかおりに戻っていた。
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