表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛読本。  作者: 半栖酒美斗
109/191

切ない内容

お越しいただきありがとうございます。

今回も星奈主観です。

ほんの少しだけ、恋愛読本について明かされます。

ブックマーク・評価等いただけると励みになります。

お楽しみください。


主要登場人物

ユキヤ  主人公。隙があって鈍感。

かおり ユキヤの中学からの同級生。(実は小学校から。)

星奈  2年生の先輩。ユキヤの幼馴染。

唯   3年生。モデル並みの美貌の持ち主。

五日市先生 かおりのお姉さん。

「いただきまーす!」


ユキ君は、お腹が空いていたらしく、たこ焼きを頬張っている。かわいい。


「そう言えば、前から思ってたんだけど、みんなが言ってるマニュアルっていうのはなんなの?」


先生が問いかける。そう言えば、先生には何も説明していなかった。


「唯の家で見つけた本なんですけど、すごく不思議で。私が手に取った時とかおりと唯が持った時とでは、内容が変わるんです。でもそれがすべて、ユキ君に関することで。まあ、それはもうどうしてか、わかったんですけど……。うまく説明出来なくて。今日、持ってきているので先生も一度、読んでみてもらえますか?」


鞄からマニュアルを取り出し、先生に表紙を見せる。


「恋人獲得マニュアル?随分と微妙な名前ね。それに本というよりノートかな?」


マニュアルを先生に渡すと、いつもと違う不思議なことが起こった。


「恋愛読本。さっきと題名が変わってる……。」


先生が持つと恋愛読本に変わった。私とかおり、そしてユキ君は初めて見たと思う。


「先生。その恋愛読本は、私のお母さんから聞いたんですけど、私の父と星奈のお母さんの祖父の妹さんの日記なんです。戦時中の日記で、人の心を覗くようなものだから覚悟して読みなさいって。でも、私たちが手に持ってもマニュアルになるだけで、中身が読めないんです。」


先生は、お酒を飲みながら表紙、裏表紙と色々と観察している。今日は、ユキ君が前に飲んでいたプラQという梅酒を飲んでいた。ちょっとおじさんみたい。


「私も覚悟が必要かな?ちょっと読むのに勇気がいるけど、お酒を飲んでるから勢いで読めそうだ。ちょっと手を洗ってくるね。」


そう言うと、先生は手を洗い、直ぐに戻ってきた。目の前の不思議なものに興味津々でなんだかとてもたのしそうだ。


「ちょっと読んでみるね。」


そう言って、しばらく無言で読んでいるようだった。私たちが談笑していると、すすり泣くような声がする。なんだか、先生の様子がおかしいことに気づいた。


「先生どうしたんですか!?」


先生が泣いていた。ものすごく悲しそうな顔で。


「大丈夫……。でも、もうこれ以上読めない……。」


「先生、そんなにきつい内容なんですか?」


「きついというよりも、切なすぎる……。」


「どんな話なのか教えてもらえませんか?」


唯が食い下がる。先生も少ししか読んでいなさそうだけど……。


「うん……。まず、日記を付けようと思った切っ掛けが書いてあるんだけど、これを書いた方が、16歳の時に、郵便配達の男性に恋をしたの。挨拶しかしたことなかったんだけど、それを楽しみにして、毎日郵便を待っていたんだって。ある日、彼から話しかけられて、出征の日、要するに戦争に行かなければいけなくなって、出発の日に見送りに来てほしいって言われたの。でも、当時、沢山の方が見送りに来てらして、顔見知り程度でしかない自分は近くにいけなくて手を振るくらいしかできなかったの。それで、その方が帰って来たら想いを告げるまで、この日記を付けることにしたそうよ。恋愛の仕方を知らない小娘が、大好きな人に想いを伝えるまでの日記って書いてあった。」


「そうなんだ……。切っ掛けが、すでに辛すぎる。」


唯とかおりも涙ぐんでいる。私はもう涙でボロボロです。


「内容は、公園の桜が綺麗で、あの人と見に行ったらどんな色に見えるんだろうとか、風が強いけど、彼が横に居てくれれば、私はそんなに風を感じないかな。とか。すごく純粋で、かわいらしい日記なんだけど……。相手は一言しか言葉を交わしたことのない人で……。これを書いた方は、なんというお名前なの?」


「中川春子さんです。」


「春子さん。なんだか聞いたことある名前のような……。」


「初春学園初代学長です。」


「えー!?女性でしかも1人で初春を小学校から大学までの一貫校を作った方だよね。私、すごく尊敬してて、文献も何も残ってなかったから、どんな方か想像出来ていなかったんだけど、まさか、こんな形で知ることが出来るなんて……。」


「日記は沢山あったらしいんですけど、この日記以外はすべてご自身で処分されたそうです。この日記も処分しようとしていたらしいんですけど、処分する日に処分できなかったのか、持って帰られたそうで、翌日に亡くなったそうです。それで、私の母が責任を持つからと形見分けしてもらったんです。」


先生は、唯の言葉にしずかに耳を傾ける。そして私達に言った。


「私は、最後まで読まない。3人共ちゃんとマニュアルを終わらせて、読むべきよ。きっと春子さんは、あなたたちに何か伝えたいことが有るのよ。」


「そうですね。なのでユキ君に協力してもらって先に進めたいと思ってます。」


恋愛読本。


この日記を読んでみたい。ちょっといたずら心がありそうな春子さんのマニュアルを、一つ一つクリアしていこうと思う。

ご感想・レビュー・ブックマーク・評価、いただけると幸いです。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ