憧れのハーレム学園
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前月まで中学生だった主人公の成長を
暖かい目で見守って頂けると幸いです。
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それでは、お楽しみください。
新しい生活のスタートだと言うのに、なんだろうこのモヤモヤした気分は。
俺の名前は、手塚ユキヤ、新入学の高校1年生。
ちなみに今のところ、女子にはあまり縁がない、どこにでもいる普通の男子だと思ってる。
だがしかし!
そんな俺に昨年、大勢の女子達に囲まれ、あんな事や、こんな事、えっ!そんなことまで!? 出来るかもしれないチャンスが訪れる。
女子高である私立初春学園が、受験シーズンの始まるギリギリに、なんと共学になることが発表されたのだ。
このチャンスを逃すものかと、志望校を変更し、自分の出来る全てを注ぎ込んだ猛勉強の末、念願の初春学園の入学をこの手に掴むことが出来たのだ。
神は俺を見捨てなかった……。
もちろん俺の目的は、ハーレムのように大勢の女子達に囲まれた、バラ色の高校生活をエンジョイする、それ以外にない。
女子が多いからと言って、ただ入学するだけではダメだ。俺の目標は多くの女子からモテるため。そのための努力は怠らない。
受験終了から気合を入れて体を鍛え上げ、誰もがうらやむ細マッチョに。
そして、初めての美容室。緊張で声がうわずりながらコミュニケーションを取り、やっとのことで、もっさりした髪型を小綺麗なヘアースタイルに整えてもらった。
自分なりに、そこそこイケてる見た目になった……と思う。
今日の入学式の為に色々な種類のヘアワックスを大量に買い込み、練習しまくった末、遂に完成したイケメン風ヘアースタイル、その最終チェックを済ませ、高校デビューの準備は最終フェーズに入った。
しかし、なんだろうこのモヤモヤは。
その時……。
ピンポーン!
こんな日の、しかも早朝に誰だ?今日は入学式で忙しいのに。まあ、入学式に両親は来ないから忙しのは、俺だけだけど。
「ユキヤー!お迎えよー」
母さん、一体なんのお迎えだ?
俺の行く学校は元女子高だし、今日、入学式で同じ学校に行く友人は、誰もいないのに。
「今行く。」
返事だけして自室から1階に降り、そして、真新しい靴が置いてある玄関へ。
「ユキヤ、誰、あの子。お友達?」
「なに母さん?友達って?」
「まあいいわ、行ってらっしゃい!女の子傷つけたら許さないよ。」
母さんが何を言ってるのか全然わからない。なんで女の子との話題なんて振ってくるんだ?
そんな顔をしながら玄関を開ける。
「えっ!」
「おはよう!ユッキー!」
俺は、目の前の光景に面食らってしまった。
こんな美少女、俺は知り合いどころか見たこともない。
そして、「ユッキー」なんて呼ぶ女の子、少数しか知り合いにいないのに。
「き、きみは?」
「私よ、わ、た、し」
わたしとか言われても……。
全然、記憶にない女子が立っている。
でも、同じ初春学園の制服だ。同級生なのかも……。
よく見るとこの女子、スリムなのに柔らかそうな部位は、はっきりと主張していてスタイル抜群だし、短めなスカートにタイトなブレザーは、目のやり場に困る……。そう思いながらマジマジと見つめる。
そんな挙動不審の俺に向かって、彼女は言った。
「ちょっと覚えてないの?ひっどいなー。図書委員で一緒だった、かおりだよ。」
かおり・・。
そうだ、図書委員で地味だったけど、俺にはよく話しかけてくれてたメガネっ子。それがかおりだ。メガネをしていないから全然印象が違う。
「かおりなの?」
「なに言ってるのよ! さ、入学式遅れちゃうよ!」
その刹那、手を握られ引っ張られるように駅へと向かった。女の子と手を握るなんてイベント。小学校低学年以来だ。
心臓がバクバクしていることを隠しながら、何かの本で読んだ通り、女子の歩幅に合わせて歩く。 俺、グッジョブ。
最寄駅につくと電車まで、まだ少しだけ時間がある。この機会を逃すまいと、かおりに質問をぶつけてみた。
「なんか雰囲気かわったね?」
「そうでしょ?だってユッキーに気に入られたいから——。」
電車によって打ち消されたはずのその言葉……。
実は、耳の良い俺に完全に聞こえていたのです。
俺に気に入られたい??
中学時代のかおりは、地味だけどスタイル抜群で、男子達には結構人気があった。明らかに、恋人にしたいクラスメート上位なタイプだった。
そのかおりが俺に気に入られたい?
そんなことを考えながら、はじめての通学電車に乗車した。
き、きつい。
こんなに満員なのか……。
はじめての通学電車が、ここまでの乗車率とは思っていなかった。
もみくちゃにされながら、自然にかおりと密着する。
真新しい制服の上着の上から、なにやら柔らかいものが当たっている。
だが次の瞬間、次の駅に到着し
「ドア開きまーす。」
きつい感覚から、やっと少し開放されたが、同時に柔らかいものが離れてしまった……。が、次の瞬間、また密着する。
まだ学校までは数駅ある。
これは試練だ……。
ふとかおりに目を向けてみると、気のせいか顔が赤いようだし、呼吸も荒い。
「かおり、顔が赤いよ。どうした?」
「ユッキーには関係ない……。」
少し不機嫌に、拒絶されてしまった。
この駅はターミナル駅だからガンガン人が押し寄せてくる。すっかり壁に押し付けられてしまった。
「かおり大丈夫?」
顔を伏せている。なにか変だ。
周りに目を向けてみると、なんかモゾモゾしてるサラリーマン風のおっさんがいる。これは、どうにかしないと。
かおりの肩に腕を回し、俺と場所をすり替わった。これならおっさんのキモイ動きは俺にくるわけだ。俺も嫌だけど、かおりのためなら問題ない。
「ユッキー。ありがと。」
かおりがお礼を言ってきたので、軽く微笑んだ。
礼を言うのは俺の方だよ。このやわらかい感触を、降りるまで堪能できるのだから。
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