第7話 アルガ中迷宮(2)
各々で行動を開始していく中、一人取り残されてしまった僕...。どうやって足止めをしろと言うのだろうか...。行動を開始していきなり俊君は消えてしまうし、渚さんは落ちている岩を操って相手の攻撃を防いでいるし、宇佐見さんは何か集中してる...。
なんかこれ三人でも充分強くないか?
「俊!いつまで掛かりそう!?」
「もう少ししたら完成するから待っち」
「こいつあんまり強くないね!攻撃パターンが簡単に分かるよ!」
中ボス簡単とか言ってるよこの人達...。どうなってるんだ...。
「よし、『電磁罠』は完成した、隠蔽はもう大丈夫だよ〜」
「あいよぉ」
その声の後、俊君が姿を現す。右手には拳銃が握られて...拳銃?
「とりあえず拘束するぞぃ。渚フォロー頼むわ」
「了解!!」
そう言うと俊君は拳銃を撃つ。あれは...ヨーヨー?!
「!?グオオ!?」
撃ち放ったヨーヨーはグルグルと魔物の体に巻きついていく。魔弾で対抗しようとするが、渚さんが上手く相殺していく。魔物は抵抗ができないまま、ついに身動きが取れないほどに縛られた。
「ウグ、オオ...」
「なんだぁ、中ボスが来たかと思ったらただの雑魚だったなぁ、面白くない」
「雑魚かは置いておいて...確かに今までのやつよりは弱かったね」
「だねぇ、もうちょい歯ごたえあって欲しかったよ」
もしかして、僕がパーティ組んだこの人達こそ魔物なのでは?
「さてと、とりあえずこやつは殺しておかないとね」
そう言うと俊くんは魔法陣を起動させる。魔物の下から強い光が生じる。
「『電磁罠』起動!」
突如地面に大穴が空く。中から強い光が漏れる。その光に吸い込まれるように魔物は落ちていく。
「ゲガァァァァァァ!!」
魔物の断末魔が聞こえる。あの大きな魔物が穴の中でもがき苦しむ姿が想像でき、僕はその穴に恐怖を覚えた。
「一万Vはくだらないよ。タフだとしてもすぐに死ぬだろうねぇ」
一万V!?生身の人間が受けたら即死じゃないか!!思わず一歩後ろに下がってしまった。
俊くんの言っていた通り、三分と経たないうちに断末魔は途絶え、魔物は死んでいた。中ボスとはいえこの人達簡単に倒しすぎでしょ...。
「ところでさぁあ?」
俊くんの視線がこちらに向けられる。まさか戦闘に参加しなかったこと責められるのか?
「君もしかしなくても無力者だったりする?」
予想外の質問が来た。
「え?無力者なの?魔力隠蔽じゃなくて?」
「あんなに戦闘慣れしていないのに魔力隠蔽ができるなんて考え難いなぁって思って」
「そうです。正解です」
無駄に期待されるよりはこっちの方がいいけれど、無力者なのにパーティに入ってしまったことは謝っておかないと───
「これはいい人拾ったんじゃない?俺たち」
「「「え?」」」
「無力者がパーティにいるといいの?」
「僕がいることでいいことがあるんですか?」
「むしろマイナスのような気がするけど...」
「渚また失礼なこと言ってるよ」
渚さん...僕のこと嫌いなのかな?
「無力者が...というか、まぁ言いたいのは無力者の可能性に期待している、てことだね」
「可能性...ですか?」
「そもそも無力者って魔力が無い人のことを言っているんじゃないんだ。本来の意味としては、何か問題があって魔法を扱えない人のこと」
「そうなんですか!?」
「そうだよぉ、というか魔力なかったら人間死ぬからね」
「んでも魔力切れを起こす人いるじゃん?あれはなんで死なないの?」
「最低限度人が生活できる程の魔力は残るんだ。使おうとしても拒否反応を起こすだけで完全に魔力が切れた訳じゃないんさ」
「それは分かりましたけど...じゃあなぜ魔法を使えないんですか?」
「そこで一つ和真に質問なんだけどさぁ」
その質問もまた予想外だった。
「入学試験の時の筆記の点数は何点だった?」
...入学試験の筆記?もしかして魔法陣が描くことができないと思われているのかな?
「えっと...46点でした」
「46!?ちょ、高くない!?」
「50点満点でそれは高いでしょ...魔法陣理解しすぎでしょ、なんで魔法使えないんだろう...」
「うん、やっぱねぇ」
宇佐見さんと渚さんは困惑するなか、俊くんだけ納得した表情だ。
「やっぱりねって...どゆこと?」
「無力者である人の殆どが、まず魔方陣を習わされるんだ。まぁ実際は無意味なんだけどね」
なるほど、筆記試験だけでこれだけのことが...って
「無意味...なんですか?」
「魔法陣教えるだけで魔法が使えるんだったら鍛錬次第で何とかなる程度さ。無力者なら普通に鍛錬を積ませたり魔法陣知識入れさせられたところで急に使えるようにはならない」
マジか...今まで魔法を使えるようにと思ってやってきたことが全て無意味だったなんて...。
「無力者に魔法を使わせるためには、まず魔力の流れを感じさせないといけないんだ。ちょっと手を貸して」
そう言うと俊くんは僕と両手を重ねる。
「実際に魔法を扱える人が『魔力調質』を使って魔力の流れを感じさせる必要がある。上手くいけばいい感じに魔力が溢れてくるはずだけど...」
手の甲にピリピリとした感覚がくる。これが...魔力?
「いっくよ〜」
手の甲から全身を通して電気のようなものが流れていくのを感じる。全身がビリビリと痛む。が、それよりも...
「な、なに、これ...!?」
「ちょ、ちょっと!半端なく出てきてる...!?」
「どうやら成功のようだねぇ」
全身から白いオーラが溢れる。
これが...魔力?