第5話 入学試験(2)
「えい!!やあ!!」
人形標的相手に素早く切りかかる。武具技術試験は人形標的を武具の力だけでいかに素早く美しく破壊できるかの試験だ。魔法の使用の一切を禁止されているだけあって、僕だけが遅れをとる、なんてことはなかった。
「受験番号1673、小林和真、そこまで!!」
まぁいたって平均のタイムだろう。とりあえず武具技術試験も終了。そこまで自信がないのがとても不安である。
「受験番号0971、堀井田涼星!!武具を持ってないとは何事だ!!」
「ですから〜、俺は素手だけで充分なんですって!!」
「ふざけるな!!さっさと武具を持ってこい!!素手でしかも魔力を使わずに破壊などできるわけないだろう!!」
「で〜〜きるっての!!」
素手で破壊って...中々の猛者もいるもんだなぁ。まぁ、今は自分のことに集中しよう。
...とは言ってもなぁ...
───ノベルト第一学園 魔力試験会場───
「受験番号1673、小林和真、0点!!」
「ですよねぇ...」
無力者なりにどうすれば魔法が使えるのか試行錯誤したり、イメージトレーニングをしたり、魔法陣を覚え直したりしたけど...やはり無理だったか。
「受験番号1673、小林和真、試験終了!!」
「ありがとうございました...」
筆記は自信があるけど、剣術は他に上手い人がいたし、魔力試験も0点...。多分、落ちたな...。まぁちゃんとした結果が出るのを待とう。何かの手違いで合格できるかもしれないし...。
───夜 ノベルト第一学園 某所───
「いやぁ、今年は大物揃いだなぁ」
「まさかあの『三英雄』が全員揃って受験しに来るとはな...。それに『勝利の剣士』までな...」
「長年負け続けてきた対抗戦も勝てる可能性が...」
「『光の剣士』に『闇の剣士』までいるぞ!?今年は本当に豊作だなぁ」
「そうだなぁ、こいつも豊作のうちの一つだろう」
「...!!こ、これは...!!」
「30年ぶりくらいか...?無力者が来たのは...」
「え、でもただ単純に魔力が低いだけなのでは...?」
「あの試験はどれだけ魔力が弱くても1点は貰えるはずだ!!それなのに0点と言うことは...」
「それだけではない、筆記を見れば分かると思うが、魔法陣を全て理解している。全く持って意味はないのだが、無力者は初めに魔法陣を教えこまれる。魔法陣をここまで明確に理解できているのは優秀な魔法使いか無力者しかない」
「...とんでもねぇやつが来てしまったな」
「あぁ...では、今年の合格者はこれで決まりだな」
───三日後 ノベルト第一学園 中庭───
いよいよ結果発表...。おそらく不合格だとは思うけれどやはり緊張する。合格発表までの間、緊張であまり眠れなかった。もちろん足取りは重い。二重の意味で...。
「中庭に貼りだされてるって言ってたけど...あ、あったあった」
多くの受験生達が集まっている。その奥にいくつもの数字が並んでいる...並ん...で...?
「あ...あった...?」
多くの4桁の数字が並ぶ一番上の段に、大きく1673の数字が並んでいる。
「や...やった、やった!やったぁ!!」
とりあえず喜びの感情が込み上げてきた。何故合格にされたのかは分からないが、今は合格したことを素直に喜ぼう!