第43話 VS 黄泉月 茶愛羅(1)
「勝者!!藤島 俊!!」
Dブロックの今日最後の試合として、勝ち上がってきた几野との勝負に勝利した。色んな武器を惜しみ無く出してくる几野の能力は昔から知っていた分対策は容易だった。問題なく準々決勝へ進み、次の対戦相手は──
「平次とタイマンとか何年ぶりだっけなぁ...」
ただでさえ身体が脆い自分にとって、命中率を無理やり上げる「独自魔法」を持ち、且つ的確な作戦力を持つ平次はキツい対面である。メイに次いで警戒すべき相手はコイツだ。最後にタイマンで戦ってからお互い「独自魔法」は進化しているだろう、確率操作に関与できる「独自魔法」が増えていたら流石にキツい、戦いたくない。
「...まぁ今日は準々決勝までだし、その日のことはその日に考えればいいかぁ」
考えるのが面倒になった俺は別のグループの試合を見に行くことにした。渚は平次に圧敗してたし宇佐見も実力があるとはいえシードに入ってる奴らには敵わない。となったら──
「Cブロックはまだやってんのかな...?」
和真がどこまでやれてるのか分からないけど、もし勝ち上がってたら四試合目は大体この時間帯だろう。和真が勝ち上がったのか涼星が勝ち上がったのか知らんけど一応見に行ってみるか...。
「勝者、沼下林!!」
白熱──はしなかった三試合目は、戦っている本人だけでなく、試合を観戦していた人達も疲労の表情を浮かべる中、唯一敗北した飯崎君だけが満足の表情を浮かべていた。
「クソ...勝った気がしねぇ...」
単純に殴り勝った沼下君も納得いっていない様子だ。なんか...同情するな...。
「...次の準備するかぁ...」
かくいう僕も試合を見ていただけで疲れてしまった。軽いウォーミングアップをしながらグラウンドへ向かった。
次の対戦相手である黄泉月 茶愛羅さん、彼女とは会話はしたことがあるもののどんな「独自魔法」を持っているかは知らない。一試合目の黄泉月さんの試合は自分が緊張し過ぎて見ていられなかった。しかし相手を知らない状態だったのは堀井田君との試合でも同じ、そしてその時と違って今は少し気持ちに余裕がある。落ち着いていこう。焦る気持ちが一番自分を追い込んでしまうから
一つ呼吸を置いて、いざグラウンドへ踏み出そうとしたその時、観戦席からブーイングの声が鳴り響いた。突然起こったことだったから何事かと顔を上げると、既にグラウンドには黄泉月さんの姿があった。雨宮教...そんな大きな団体になっているのか...?ここまで大きいブーイングだと自分に向けられてるのではと考えてしまう。恐る恐る自分もグラウンドに足を踏み入れた。そうすると、ブーイングの声の中から微かに声援も聞こえてきた。
「あら、いよいよ私の歓声が聞こえてきた、と思ったら小林さんが来たんですね」
「黄泉月さんも大変だね...」
「そうなんですよ!!たかが1回勝ったくらいであそこまでブーイングしてくるの酷くないですか!?私じゃなかったらブチ切れもんですよ全く!!」
「あ、あまり火に油注がない方が...」
彼女なりにしっかり怒ってたみたいだ。
「まぁ、ここで私が貴方に勝てば少しはブーイングしてくる人も認めてくれると思います!!何せ三英雄の一人を倒した人ですからね!!」
「だといいけど...僕だって簡単には負けないよ」
「それもありますし、ここで負けでもしたら親になんと言われるか...」
本当に苦労人だな、黄泉月さん...
「さぁ覚悟してください!!三英雄程ではないですが私だって死神の名家の者です!!そう簡単に負けるわけではありませんよ!!」
そういうと、彼女は武器である大鎌を構えた。それを見て僕も剣を握り直す。戦闘力的にはさっき戦った堀井田君よりは低いだろうけど、さっきの戦いでほぼ出し尽くしてしまった魔力がまだ回復できていない。決め手を撃つにはその分先に彼女から魔法攻撃を受けなければならない。しかし、自分は彼女の初戦を見る余裕がなかった(戦闘時間の短さと緊張のせいで)。実力は未知数である。
「それでは、第四試合!!黄泉月茶愛羅 対 小林和真!!始め!!」
始まりの合図と同時に黄泉月さんは姿を消した。そしてその瞬間、背後に気配を感じて剣を振る。
「っと、流石に小林さん相手だと無理ですね」
一瞬にして背後を付かれ、そして首筋を狙われていた。もし彼女が力を加減していなければ間違いなくダウンしていただろう。
「実は私、死神の名家の者として、ちょっと凄い『独自魔法』を持っちゃってるんですよね〜。お陰様で依頼の成功率は既に9割超えちゃってたりしてまして」
そういうとまた彼女は姿を消し、そして再び背後に気配を感じて剣を振る。
「補足したターゲットの背後を簡単に付くことができちゃうんです☆」
すぐに判明した彼女の『独自魔法』、それは相手の背後を簡単に付くことができる『独自魔法』、つまり移動系の魔法であった。
「まずい...な...」
移動系の魔法は僕には不利なのだ。『吸収性退魔』の発動条件は魔法攻撃を受けること。つまり攻撃しないタイプの『独自魔法』だと魔力の吸収はできない。彼女の戦闘スタイルは、その『独自魔法』で背後を付き、首筋を鎌の刃が無い部分で叩いて気を失わせるといったところだろうか。そのせいで、彼女の大鎌の攻撃を防いでも魔力が少しも回復しない。魔法を撃たせるために距離を離したところですぐに背後に立たれてしまう。魔法を撃たせる隙がないのだ。
「う〜ん、ですがこのままだと決着が付かなさそうですね、何かしら対策しないと...」
僕も何か対策を考えないと、このまま彼女が魔法を使わないのであれば僕は残り1,2割程度の魔力でどうにかしないといけない。残った魔力だけで『魔滅の光』を放っても恐らく決定打にはならないが、今の最大火力はそれだけだ。だが、如何に魔法を撃たせるかばかり考えていては先に自分が隙を付かれる。さっきの戦闘のダメージがここまで響いてくるとは...
「どうしたんですか小林さん!!防戦一方だと私には勝てませんよ!!」
また背後に気配を感じ、すんでのところで攻撃をかわす。確かに防戦だけだと勝つことはできない。だが、そもそも背後を容易く取れる相手だとこちらからの攻撃も難しい。ダメだ、勝機が見えてこない!!
「...でも、考えろ...」
これだけ便利な『独自魔法』、もちろんそう言い切れるわけではないが、何かしら代償や条件があるはず。僕が『吸収性退魔』の使用中は魔力の代わりに体力が減っていくように、圷君が自身の毒で自傷してしまうように、彼女の『独自魔法』も何かしらの弱点がある可能性がある。見極めろ...考えろ...残りの魔力で導ける勝機を探せ!!




