第42話 進まぬ試合の飽く時に
第三試合、飯崎 快神君 対 沼下 林君の試合は、かなり長期戦になっている。かれこれ三十分は経っただろうか。控室のテレビで観戦しているのだが...
「あぁぁ!!そこっそこです!!もっと強いのをくださぁぁいい!!」
「なんだこの変態!!審判さっさとつまみ出せこんなの!!」
「で、ですが決着が着くまでは追い出す訳には...」
「えぇいさっさとくたばれやこのぉ!!」
「あぁ良い!!凄く良いぞ沼下ぁ!!もっとだもっとぉぉぉおお!!」
...まるで地獄を見ているみたいだ。観客やテレビの視聴者はこのような光景を三十分も見させられている。いつ決着が着くんだろうこれ。しかし、正直なことを言うと僕はこの試合が一番楽しみだった。ダメージを負う毎に自身の力を増強させる能力を持つ飯崎君と、相手の魔力や、純粋な力までも二倍の力を出す能力を持つ沼下君。この二人の能力がどういった決着を着けるのかがとても楽しみだった。──しかし、この地獄絵図は予想していたけど、まさかここまで長引くとは思っておらず、ただ見てるだけでも疲れてきてしまった。
「──何か飲み物でも買いに行くか...」
テレビを消し、自販機のある場所へ向かった。そういえば、他の皆はどうなっているだろうか。Bグループでは宇佐見さんが第一試合、勝ち上がったら第三試合、圷君が第二試合、勝ち上がったら第四試合に出場って言っていたっけ。Dグループでは渚さんが第一試合、勝ち上がったら第三試合、俊君はシード枠だから今日は第四試合だけだったはず。
「皆順調に勝ち進められてるかなぁ」
そんなことを考えているうちに、自販機の前に到着した。
「──あ」
先に自販機の前に立っていたのは、摩怨 幽無さん、Cブロック唯一のシード枠であり、勝ち進めば準々決勝で当たるかもしれない相手だ。
「ま、摩怨さんも飲み物買いに来たの?」
「...あの二人の試合、退屈」
退屈、か。見るに堪えないとかではなく、退屈なのか。
「二回戦進出、おめでとう」
「え、あぁ、うん、ありがとう」
「君の試合、面白かった」
淡々と呟く摩怨さん。二人で話すのは初めてだ、コミュ障ってのもあるけど、いつも暗い彼女がどんな話をするのか分からないからか緊張している。
「けど、君との相性、多分悪い」
「え、っと、相性?」
「君、魔力吸収型の独自魔法。私、魔力に頼りきった戦闘。だから、相性悪い」
「魔力に...って、僕の独自魔法のこと分かったの!?」
「最初は君が膨大な魔力の持ち主なのかと思ってた。けどもし君が魔力を大量に使える人間なら、堀井田君が姿を消した時、敵の存在に気付いた時点でそこに最後の大技を出せば良いだけ。それをやらなかったのは、敢えて攻撃を受けて魔力を集める必要があったから。...違う?」
コテンと首を傾げる摩怨さん。小動物感があって可愛い...じゃなくて!!
「よ、よく分かったね...色んな独自魔法使ったから分かりづらいかと思ったんだけど...」
「魔力吸収は明言しないと分かりづらい。けど、小さな行動一つがそれを答えへ導くこともある。手の内を明かすつもりがないなら、気をつけた方がいい」
「う、うん...って言っても、全国放送されているならもう手遅れ...かな?」
「...さぁ?」
もしかしたら彼女みたいに、試合で僕の能力に気付いた人がいるのかもしれない。ここからは僕の独自魔法を対策する人も増えてくると思って挑もう。
「...知りたい?」
「え?」
「私の『独自魔法』...」
「えっ...と、何で?」
「私だけ君の能力知ってるの、フェアじゃない」
もしかして、自分で気付いたこととはいえ僕の能力を知ってしまったことで、自分だけが有利になることをずるいと思っているのだろうか?確かに敵の情報は多いに越したことは無い、今すぐにでも飛び付きたくなる情報だけど──
「気にしないでよ、それは僕の不注意でバレてしまったことなんだ。摩怨さんが僕に能力を教えてしまったら、それこそ僕が不公平になってしまうよ」
「...」
「僕は自分の力で摩怨さんの能力を暴くよ。まぁ、分かる前にやられちゃいそうだけどさ」
そう言って笑ってみせた。うん、笑い方下手くそ。
「...変なの」
ほら変なのだと思われてる。
「おや?小林さんに摩怨さんじゃないですか?談笑中でしたか?」
そこに現れたのは黄泉月さんだった。...と、摩怨さんはそっぽを向いてしまった。もしかして明るい人苦手なのかな...?
「談笑中というかなんというか...そっちは?」
「いや〜緊張で喉が乾いてしまいまして!!あ、このジュース知ってます?これの新しい味が最近追加されたんですけど、この辺の自販機じゃあ中々見つからないんですよね〜!!」
そういうと黄泉月さんは慣れた手付きでジュースを一つ買い、蓋を開けて飲み始めた。
「ぷはぁ〜ぁ!!やっぱり普通の味が一番なんですけどね〜!!」
「そ、そうなんだ...」
「あ、小林さん!!そろそろ準備始めておいた方がいいかもしれません!!飯崎さんが動き始めました!!」
「そうなんだ!!じゃあ僕もそろそろ控室に戻ろうかな」
「それじゃ、試合でお会いしましょう!!」
「うん。じゃあ、摩怨さんの試合も楽しみにしてるよ」
そう言って控室に戻ろうと、ゆっくり歩を進める。
「...小林君」
「えっ?っと、何?」
「君が準々決勝に進むことを期待してる」
今のは...応援してもらえているってことで良いのかな?
「うん、ありがとう!!」
「あの子との対戦は苦手...」
「えぇ...」
う〜ん、そうでも無いのかもしれない...。いや、応援してくれていると信じよう!!うん!!
「──よし」
控室に戻り、準備を整える。相手は黄泉月さん、いつも明るい性格の彼女だが、一体どんな戦い方を仕掛けてくるのだろう?先程の試合から多少回復はしたものの、それでも魔力は一回戦の時よりも少ないスタートになる。まずは相手の出方を見て考えよう。そうこう考えている内に、Cブロック、二回戦が──
「もっと殴ってこいよ!!俺が攻撃くらう度にお前も強くなってるからどんどん刺激強くなってやべぇんだ!!さぁ早く!!」
「いつになったら倒れるんだよコイツ...」
なかなか始まらずにいた。




