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その勇者、かつてはモブキャラ設定でした  作者: 蜜柑クロ松
第二章 闘技会
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第38話 予想外は本番の付き物

大通りは何時にも増して大賑わい、スイーツであったり、ご飯であったり、様々な種類の屋台が並んでいた。

「凄いなぁ、村の祭りなんかよりよっぽど盛り上がってるや」

闘技会の開会式場へ向かう僕は、賑やかな大通りを見ながら歩いていた。ノベルト第一学園の闘技会は、不定期ながらも王都の一大イベントであり、開催される日にはこのように街中が大盛り上がりなのだそうだ。この光景は是非とも祖父にも見せたいものだ。

「──と、いけないいけない、早く会場に行かないと...」

少し小走りに会場へ向かう。昨日の圷君との勝負もあり、今の僕は前よりも少し自信が付いている。最初の敵は最強クラスだけど──それでも、その戦いを楽しもうと考えている自分がいた。


会場に到着すると、既に多くの生徒が集まっていた。クラスメイトだけでなく、他クラスの人達や、他学年の人達も集まっていた。少しピリついた雰囲気だ。

「自信の程はどうだい?」

声を掛けてきたのは、俊君だった。

「やれるだけのことはやったつもりだよ。あとは実践でどれだけ活かせるか...かな」

「まぁ気楽に行きなよ、堀井田の攻撃パターンってモンスターと似てるとこあるし」

「えぇ...」

「この三日間放置しちゃったけど、成長してることを期待するよ。もしかしたら準決勝であたったりしてなw」

「あはは...そうなれるように頑張るよ」

俊君、余裕そうだな...。と言っても、俊君は一学年生で唯一のSランクだもんなぁ、やっぱり敵無しと思っているんだろうか。対して僕はDランクのままだ。大きく差が離れてしまっているけれど、もし対戦するようなことがあったら僕は彼に勝つことができるのかな...?

「...いや、今は初戦に集中しないと」

僕の初戦の相手も俊君と同じ三英雄、そうなると彼もSランクに匹敵する力があるはずだ。しっかりと見極めていかないと──

「おはよう!!小林君!!」

「おはようございます〜」

「あ、圷君に仰音道さん!おはよう!!」

「遂にこの時がやってきたな!!お互い全力を尽くそうじゃないか!!」

「うん!!圷君は初戦は誰となの?」

「小橋 竜君だ。彼の出方は予測を付けづらいのだが、それでも勝ってみせるさ!!君も、堀井田君との試合、是非とも勝ってくれよ!!」

「あはは...うん、そうだね、頑張るよ!!」

模擬対戦以来、僕達はより仲良くなっていた。自分自身の夢や、辛かった過去、全力でぶつかり合ったことで、確かに強い絆を感じている。前までの僕とは無縁だった、親友、ライバル、ソウルメイトの有難さをとても感じている。

「二人の戦いを最初から見届けられないのは残念ですが、準々決勝からは全グループ一つの会場で試合ですので、そこまでは負けないでくださいよ〜。私も応援していますから〜」

「ありがとう、仰音道さんも仕事、頑張ってね」

「は〜い」

一応、準々決勝以降は別日に行うことになっており、全てのグループで勝ち上がったメンバーは、この会場で優勝者を決めることになっている。つまり今日は、準々決勝進出者を決めるところまでらしい。

「まもなく、開会式が始まります。生徒の皆さんは、スタジアム内に集合してください」

招集のアナウンスが聞こえ、次々と人が流れていく。

「よし!!僕達も行こう!!」

「うん!!」

「行ってらっしゃ〜い」

遂に幕を開ける闘技会、僕は胸を張り、堂々とグラウンドに足を──


ワアァァァァァァァアアア!!!!!!


えっ人多...声援デカ...怖...なんかカメラ構えられてるし...予想は付いてたけどこんな人多いのは聞いてない...。

「ひぃぃ...」

忽ち、僕の先程までの自信は一気に恐怖へと変わってしまった。ここまで人多いのは聞いていない。めっちゃ緊張する。怖い。これじゃあ本気は出せないかもしれない。

「ひ、ひぃぃ...」

もう、こうなったら不安でしかない自分であった。

「ただいまから、第百三十六回、ノベルト第一学園闘技会を開催致します!!」



開会式が終わり、僕は選手控室にいた。僕の初戦は二試合目、一試合目の天宮 玲さん 対 黄泉月 茶愛羅さんの試合はそろそろ始まった頃だろうか。まさかあんなに人がいるとは思わなかったけど、控室という一人の空間にいることで、少し落ち着きを取り戻した自分がいた。

「大丈夫、自分は強くなったんだ。俊君、圷君、仰音道さん達のおかげで僕は強くなれた。後は自分の気持ち次第!!自分に負けるな小林和真!!」

そう心の中で言い聞かせ、試合のイメージトレーニングを始めた。後自分にできる対策は、相手の行動を読み取ること。三英雄の中では彼は『赤の破壊者』とも呼ばれている程のパワータイプ。身体強化は吸収できるとはいえ、問題は純粋なパワーがどれほどなのか──

「一試合目が終わりました。二試合目の出場選手は準備してください」

「速ぁ!?!?」

後に聞いた話だが、一試合目は黄泉月さんの圧勝、ほんの十数秒で決着が着いたらしい。うわぁぁどうしよう、気持ちが上手く整理できないままいよいよ初戦になってしまった。ここまで予想外が続いて軽く混乱を起こしそうになっていた。そしてその混乱が起こるか起こらないかの瀬戸際に立たされたまま、僕はグラウンドに足を踏み入れてしまっていた。

「僕は強くなった!!僕ならいける!!僕なら頑張れる!!」

そう必死に自分に言い聞かせているが、今にも緊張で倒れてしまいそうだ。

「...なんか、既に追い詰められてね?」

ふと、堀井田君がそう呟いた。確かに今の自分は緊張と不安で混乱間近だ。

「よく分かんねぇけど、そっちが勝つつもりで来てくれないとやりがいもないってもんだ。何考えてんだかしんねぇが、目の前の俺だけに集中しろ。お前も勝ちに来たんだろ?」

その一言で、ふと我に帰った。今ここで焦ってどうする!!圷君と約束したじゃないか!!僕は堀井田君に勝ってみせると!!

「よ、よろしく...お願いします!!」

「...そう来なくっちゃあね」

もう緊張はしない、相手は俊君と同じ三英雄。どれだけ強い相手でも、僕はもう、恐れない!!

「第二試合!!堀井田 涼星 対 小林和真!!始め!!」

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