第37話 VS 圷 模吉(2)
圷君は再びこちらに勢いよく向かってきた。次の連撃で決着を着けるつもりなのだろう。それを僕は迎撃する構えで時を待った。その間、僕は構えた剣に最大値の約八割の魔力を集中させた。そして残る二割のうち全身に纏う『吸収性退魔』を最小限に抑えて構えた。そして、更に残った魔力を使い、僕の頭上で『疾風』を放った。
「あいつ...何をしようとしている...?」
「う〜ん、私の勘が、巻き込まれに気を付けろと言っていますね〜」
勢いよく詰められる距離を見て、その時をじっくりと待つ。左腕の痛みに邪魔をされつつ、タイミングを待った。
「強くなるためにそれ以外は全て捨て去った。強さを求めることができない物事は全て悪だと、何もかもを捨ててきたんだ」
「どれだけ不要な物事を排除しても、僕の強さは周りに埋もれるばかりだった。」
ふと、彼の昨日の話が頭をよぎった。周りに追いつこうと必死に努力した圷君。そのために何もかもを捨てたという圷君。何時しか僕は、僕自身を彼に当てはめてみてしまった。
「僕達、似た者同士だね...」
周りに追い付きたいと思ったのは昔の僕もそうだ。だからこそ僕は、ノベルト第一学園に入ったんだ。そこで僕は村の皆に追い付けるように、見返してやれるように努力しようと思ってここに来たんだ。産まれた場所は違えど、元の境遇は違えど、独自魔法は違えど、僕達は似ている、そう思えてしまった。
「君のライバルとなって、君の速さに追いつくまでだ」
彼はそう言ってくれたんだ。僕はまだ彼にも及ばないかもしれない、そう思っていた彼が、心からそう言ってくれたのだ。正直、とても嬉しかった。初めて強さを心から認めてもらえた、そんな感覚に陥ったのだ。だからこそ、僕はどうするか、それは既に答えが出ている。彼の気持ちに応える為、やることは一つ──僕も全力で君を倒しにいく!!
「うおおぉぉぉぉぉぉおお!!」
槍を構えた圷君が飛び上がり、僕を上から突き刺す構えを取った。勢い良く降りてくる圷君。そして僕は──
「今!!」
構えた剣をそのまま──
ザクッ!!
圷君──ではなく、地面に突き刺した。これが僕の練習していた三つ目の技、僕の二つ目の『独自魔法』!!!!
「ぐはっ!?」
「わ〜」
「まさか...!?」
『堕抜』、剣を地面に突き刺し、その剣に込めた魔力が多ければ多い程、広範囲且つ高火力の重力魔法を放つ技。圷君との攻防で身体にぶつかった球体が多かった為、二割の魔力を残しても、その範囲は岩山の更に奥にも及んだ。そしてその範囲の分、重力魔法も威力は強く、圷君は勢い良く地面に叩きつけられた。彼自身が作り上げたでこぼこの地面が、叩きつけた際のダメージを更に大きくした。咄嗟のことだったのか、防御魔法も貼れなかったようだ。そして更に追い討ちを掛けるように、上空から圷君の球体が僕と圷君の二人に降り注がれた。僕の頭上で発動していた『疾風』は、この追い討ちの為に球体を上空にかき集める為に発動していたのだ。防御魔法を貼れなかった彼は次々と球体の破裂による毒に襲われていく。
「思った通りだ...!!」
彼の行動の異変...彼自身も球体を避けながら戦うことに気付き、生物に触れると破裂するという対象には間違いなく彼も含まれると推測した。
「恥ずかしながら自身の毒に侵されてしまってな」
もし推測が正しければ、彼の毒を利用して追い詰められるのではないかと踏んだのだ。そして、僕に降り注いだ分は、最小限の『吸収性退魔』で余すことなく吸収でき、最終的に先程消費した約八割分の魔力は全て元通りになった。そして僕は決着を着ける為に、練習してきた技の最後の一つを放とうと──
「そこまで!!」
突然の静止の声に驚き、その状況に気付く。既に圷君は気を失っていたのだ。
「お前、これ以上攻撃ぶち込んだら人殺しになるところだったぞ」
「ひっ!!す、すみません...」
「まぁ、そんだけ全力の勝負だったってことだろう、なかなかいいものを見せてもらった」
「は、はぁ...」
一つ大きな息を吐き、間名村先生はハッキリとした声で言い放った。
「勝者、小林和真!!」
初めての対人戦、僕は見事に勝利を納めることができた。そしてそれと同時に、本番に対する不安、焦りが無くなっているのに気付き、自然と笑顔になっていた。
「失礼しま〜す」
ランクアップの手続きの後、僕は圷君の様子を見に保健室に来た。全力の勝負とはいえ、殺してしまいそうだったと言われて少し申し訳ない気持ちが心に残ってしまっていたのだ。
「おぉ小林君!!今日は実に良い試合だったな!!」
「お疲れ様です〜、心配せずとも彼は元気ですよ〜」
「そっか...良かったよ」
そこにはいつも談笑している時のような笑顔の二人がいた。
「まさか僕としたことが、自らの好戦場を利用されてしまうとはな!!良い勉強になったよ!!」
「小林さん凄かったですよ〜、あの重力魔法、岩山近くの魔物全て押し潰していたんですから〜」
「そ、そうだったの!?」
「はい〜、硬そうな甲羅持ってる魔物も片っ端からペチャンコです〜」
そんな威力の技を防御無しで彼は受けてしまったのか...
「小林君、どうか自分を責めてくれるな」
「え...」
「これは僕自身が申し付けた対戦だ、君はそれに全力で応えてくれただけ、そうだろう?」
「そ、そうだけど...」
「必ずどちらかが酷く傷付く、それが勝負というものだ。勝った者に申し訳ない気持ちがあってしまってはこちらが惨めになってしまう」
「あ...」
「どうかこのことは君の自信へと変えてくれ。勿論これで終わりじゃないさ、いつかまた、僕は君にリベンジマッチを申し込むだろうからね!!」
「...うん、そうするよ」
そこで僕らは握手を交わした。それぞれ思うことは違ったかもしれないが、何よりライバルとの戦いの敬意を表して、そして、本番での互いの健闘を祈る為に───
そして、いよいよその時が来た。




