第32話 異常(2)
ストンハーミットやゲイザーは、洞窟や迷宮以外の目撃例は無いに等しい。モンスターは、冒険者や狩人に討伐され、経験値や金になる道具として扱われるが、基本的に彼らにも適した生息地はある。ストンハーミットは自身の家でもある岩が存在する場所、ゲイザーは光が苦手であるため、太陽光や街明かり等が少ない場所を好む。したがって地上に出ることはほぼ無いのだが───
「そうなると、確かに生息地の移り変わりって考えづらいな」
「おまけに毒蛇みたいな迷宮ボスクラスのモンスターまでいる、どう考えても異常が過ぎる」
確かに、レベルアップを求めてる人らからしたら美味しい話かもしれないが、これはおかしな事態になってきているようだな。
「それに、そういったモンスター達は全て森林だけで見つかっている。それもあまり人が寄り付かないような場所だ。生息に適してはいないとはいえ、さすがに他の森にもいてもおかしくはないと思うが、一つの森林、ある特定の場所に限定して発生しているんだ」
「...誰かが意図的に発生させているってこと?」
「ここまでの話を踏まえて俺達はこう考えたんだ」
「なるほどね...んで、これらの異常は俺らの学年の誰かが引き起こしていると、そう考えてるってところ?」
「察しが早くて助かる。今年この学年に来たのは、新任の教師や用務員等も含めて約200人、この中に今回の異常の主犯がいると思っている」
「他の学園の生徒って案は考えられないん?」
「まぁここの可能性が一番高いってだけで、他の学園とか上級生、王都内外の人の可能性だってある。ただ、発生し始めたのが俺らが入学した時だし、発生するモンスターのレベルが上がったのはアルガ中迷宮も同じだろ?他の学園内にある迷宮ではモンスターのレベルアップの報告は無いらしいからな」
「なるほどね...ちなみに、その毒蛇とかにこの魔法陣貼られてなかった?」
そう言って、マナティが言っていた魔法陣を見せた。
「───あ〜...見たような気がしなくもない」
「こいつが容赦なく滅多打ちにしたから観察もできなかったんだ」
「うるせぇなちきしょう」
「毒蛇についてはよく見れなかったですけど、確かに他のモンスターにその魔法陣が刻まれてるのを見ました」
「強力になったモンスターに共通して何処かの部位にこれが刻まれているんだ。これが刻まれたモンスターはアルガ中迷宮にも発生してるよ」
「一層人力説が出てきたな」
「ですが、誰が何のためにこのようなことを?」
「それは分からない...自身のレベルを上げるためとは考えづらそうだしな...」
「何かしらの計画の前準備だったり?魔物を召喚して良からぬことを考えている輩がいるのかもしれない」
「良からぬこと...魔力災害を起こそうとしているとかですか?」
「まぁ何が企てられているのか分からないから、そこら辺の調査等をお前にも頼もうと思ったわけだ」
なるほど、要は異常解決の協力要請ってことか。正直今の俺らのパーティからすると好都合でしかないんだけど...『魔力大変革』のような計画が裏に潜んでいるならば、手遅れになれば王都が滅びかねない。
「...分かったよ、俺も色々探ってみるわ」
「ありがとうございます!!とても助かります」
「...つっても大体目星付くんじゃねぇの?」
「目星...ですか?」
「魔物を召喚する魔法陣ってのには特に特別な力が必要な訳じゃないけど、ボス級モンスターとなれば、相当な魔力と技量が必要だ。更にそっちの情報でうちの学園に新しく来た奴らって予測立ててんなら、数人に絞れるはず」
「そうか...確かに異常発生分全て召喚で担っているとするなら、魔力量は多いなんてもんじゃないな」
「教職員くらいならできそうだけど、それ以下の魔力の人らは無理だろうねぇ、だから警戒する人間は少なくできる」
「なるほどな...そう考えれば楽っちゃ楽そうだが...」
「ま、そういう訳だし、あんま気ぃ張りすぎん方がいいっしょ、怪しい奴だけその場で取り抑えればいいだけだし、慎重に調査進めてこう」
「そうですね。藤島さんに聞いてみて良かったです」
とは言っても、既に俺の中ではその中でも数人に絞れている。恐らくだが、俺が考えている中に犯人はいるだろう。だがはっきりとした確証が持てないうちは相手側に悟られぬようにして、確実な証拠を探すとするか...。
「話終わった?俺コイツと戦っていい?」
「俺が許可してないからダメ」
「...相手してやってくれ、一応我慢して来てくれたんだ」
「嘘やん...」




