第29話 それぞれの目指す夢
「し、失礼しま〜す...」
「む、小林君!!君もどこか怪我したのか!!」
「あら〜、大変です〜」
「あ、圷君に仰音道さん」
保健室には、今朝と同じ顔ぶれが揃っていた。特訓で負ってしまった傷を塞いでもらうために訪れたのだが、仰音道さんはともかく圷君までいるとは思わなかった。
「『独自魔法』の特訓をしてて...圷君も怪我を?」
「うむ、恥ずかしながら自身の毒に侵されてしまってな」
「自身の毒...?」
「あぁ、僕の能力は毒を扱う。基本的に毒を自身の身体に纏って戦うんだ。いつもは制御できるのだがたまに自分の身体を脅かすことがあってな」
「そ、そうなんだ...大変だね」
きっと闘技会に向けての練習をしているのだろう。彼だけでなく、何十、何百もの人達がこの闘技会に本気なのだ。
「先生に聞いたんですけど、闘技会の時期になると保健室に来る人が多くなるようなんです〜。やっぱり皆さん大変なんですね〜」
「そうなのか!!その割には今は人が少ないな!!」
「そうだね。僕ら以外には居ないみたいだけど...」
「そうですね〜、確か様々な場所で強力なモンスターが発生していると報告を受けて、外で練習する人が減っていると聞いた気がします〜」
「そうなのか!!確かアルガ中迷宮でも出たと言っていたな!!居合わせたらしいが、小林君は大丈夫だったのか?」
「うん、なんとか...俊君に助けられたよ」
「そうか!!さすが藤島君だ!!入学早々トップクラスの上級生を倒しただけあるな!!」
「あれは改めて三英雄の実力を知らしめた一戦でしたよね〜、味方として考えると強力ですが、闘技会のように敵対するかもしれないと考えると絶望的ですよね〜」
そうか...よく考えたら俊君や平次君なんかが対戦相手となる可能性もあるのか───そうなったらまだ勝てる自信がない。あと六週間の間に彼らと同じレベルにまで上がることができるのだろうか。
「僕だって負けてはいない!!いつしか僕は三英雄をも超える実力を付け、立派な傭兵となるのだ!!」
「あら〜、傭兵志望なんですね〜、素敵な夢をお持ちです〜」
「そうだったんだ!!傭兵かぁ、圷君ならきっとなれるよ!!」
「いや、今の僕にはまだまだ実力が足りていない。僕の村を守りきる為にはこの程度で満足できない!!」
「真面目ですね〜」
「君はどうなんだ、小林君!!何を目指してここに入学したんだい!!」
「そうですね〜、気になります〜」
「ぼ、僕は───僕のお父さんがとても強い人でさ、僕の住んでいた村や、その周りの村や国をを一人だけで守りきれちゃうような人で...。無能力者ではありながら、憧れはしちゃってさ、いつかお父さんのような人になりたいって思ったんだ」
「なるほど!!君の父さんは相当な実力者だったんだな!!憧れる気持ちは分かるぞ!!」
「で、その時に、この学園に入れば魔法が使えるようになるって聞いてさ。だからここに入ったんだ」
「そうだったんですね〜、この学園は無能力者が魔法を使えるようにさせることができるとは聞いていましたが、本当だったんですね〜」
実際は俊君が魔法を使えるようにしてくれたんだけど...。
「実に素晴らしい理由じゃないか!!お互いに求めるのは人々を守ることが出来る実力!!共に力を磨いていこうじゃないか!!」
「う、うん、そうだね」
改めて自分が目指す目標を語ると、少し照れくさくなったが、この学園ではそれぞれがそれぞれの夢に向けて努力し、それを共有できる場でもある。一緒に力を付ける仲間がいることは少し居心地が良い。蔑まれてばかりだった僕にとって、共感してくれてとても嬉しかった。
「いいですね〜、お二人には頑張ってほしいです〜」
「うむ!!───ところで君は何故この学園に来たのだ?」
「私は戦闘に向いていない能力なのですが、その変わりにサポートに向いた能力です〜。私はその力に満足しているんですけど、昔から私の夢は勇者パーティに入って冒険をすることでした〜。なのでこの学園でサポート要員になる為の修行に来たわけなんです〜」
「そうだったのだな!!皆良い目標、良い夢を持っているじゃないか!!」
「そうですね〜、目指すところは違えど、皆ここで夢を目指すソウルメイトですね〜」
「ソウルメイト...うん、いいね」
それぞれが違う夢、それぞれが違うチーム、されど僕達は同じクラスメート。同じように目標に向けて努力を積んでいく仲間だ。僕はそれを実感し、彼らとの間に友情を感じた。
「───あ〜、小林さんの治療のこと忘れてました〜、今『生霊の治療薬』かけてあげますね〜」
「あ、うん。よろしく」
「よし!!二人とも闘技会ではよろしくな!!お互いに全力を尽くそう!!」
「あ、私は不参加です〜」
「「え?」」
「闘技会でも負傷者は出てしまうので、治療員が必要らしいんです〜、私はそちらに参加することにしたんですよ〜」
「あ、そうだったんだ...じゃあ僕らが怪我した時は頼むよ」
「は〜い」
そんな会話を続けていると、気付けば日は沈みきっていた。きっと明日も訓練だろう、僕は二人にまた明日と言い、帰路に着いた。見上げた夜空では、数多の星々が輝いていた。




