第28話 淡々と進む成長譚
「さて、ここからが本番だな」
僕の『独自魔法』である『吸収性退魔』の更なる成長を目指し、今日も訓練を進める。
「現在、『吸収性退魔』は身体の一部分のみにしか付与できない状態だ。昨日の戦いでは和真の反射神経が良かったからなんとかその状態で耐えきれた部分があるけど、あの魔法がもし速度があれより速ければ、威力が強ければ、攻撃範囲が広ければやられていただろう」
「...僕もそう思います」
「一部分だけでも充分協力だとは思うが、それだけでは対応しきれない点もある。今日からは少しでも弱点を削減していく訓練だな」
「そうだね───あ、そうだ。一つやってみたいことがあるんだ」
「?やってみたいこと?」
実は昨日の夜に思いついた考えなのだが、これができるようになれば、チームメンバーを攻撃から護りつつ、魔力を吸収できるようになるのだが───
「例えば、自身の身体以外にこれが付与できないかなって...防御魔法とかと同時に発動みたいに出来ればなぁ...って」
「ん〜...まぁ出来なくはない。確かにそれができれば、うちのパーティは更なる強みができると思う」
「なら───」
「けど、先にやることがあるんだ。順序ってやつさ。幸い和真の成長速度はとてつもなく速い、小さいことでも先にあれこれできるようになっといた方がいいっしょ?」
「そっかぁ...」
「まぁ具体的に言うと、まずは全身付与、次に剣や盾などの武器、パーティへの魔力の供給、他の魔法との融合。和真が思い描く『独自魔法』への最善の順序はこんな感じだな」
「が、頑張ります!!」
「焦らずにいこう、少しずつやれることを増やすんだ」
その後はひたすら攻撃を受けるのみ。まずは二つの部位、そこから三つ、四つと増やしていき、最終的には全方位から打ち出される魔法を全身を使い、全て吸収する訓練を続けた。
「───だいぶ成長しているな」
「平次〜、どうした〜?」
「藤島のパーティ、厄介な奴を生み出そうとしてると思ってな」
「マジ?っしゃあ潰しがいあんな〜」
気付けば和真は一人前に成長していた。まだまだ卵の状態だが、藤島が訓練を付けているなら、対等に戦える日もそう遠くはないだろう。
「そんなことより聞いてくれよ!!俺新しい『独自魔法』考えついたんだよ!!」
「え、そうなんですか?」
「おう!!派生しているから申し分ないが、流石に『独自魔法』二つだけだと面白くないからよぉ」
俺、公蔵平次と、メイ=キャロテル、下井田涼星の三人も、新たな『独自魔法』の研究を進めている。相手から攻めてきたとはいえ、藤島との差がだいぶ離れてしまった。同じ三英雄の名を背負うものとして、実力を離されるわけにはいかない。
「...小林さんですか?」
「想像以上に実力を上げてきている。これなら闘技会の頃には俺らと肩並べられる位になってるだろうよ」
「そうですか...同じ剣使いとして、戦術や能力等、色々気になってきますね」
「───相変わらず、お前はアレは使わないんだな?いくら闘技会だっつっても、藤島なんかと当たる可能性だってある。あいつがどれだけ手強いかなんてのはよく知ってるだろ」
「闘技会だからこそ、勝つだけが全てじゃないんです。正々堂々、自分の力だけで挑みたいんです。あの魔法は、私の力ではなく授かったもの...」
「まぁ、本人がその意思なら強要はしない」
「はい。それに、私だって新しく『独自魔法』を生み出しましたので」
「───期待しとく」
「お〜い、カップルでイチャラブしてないで、俺の新しい能力見てくれよ〜」
「してねぇわ」
まぁ、アレを使わずともメイは強い、そう簡単に負けはしないだろう。小林の件も含め、色々楽しみだ。
「───っと、右腕、後頭部、左足、腹!!」
「よ〜しラスト〜」
「ひ、左手、右腰、左脇、剣先───いったぁ!?」
「惜しい、腰じゃなくて脚だったな」
「いたたた...」
「ところでなんで部位を声に出して言うの?」
「その方が意識を向けやすいから...」
「なるほどねw」
必死に訓練をやり終えた僕はその場に倒れた。全身に発動することはできなかったが、一箇所だけでなく、四箇所の部位で発動できるようになったことと、僕が持つ剣にも発動できるようになった。
「相変わらず凄いスピードで成長すんだよなぁ...常人なら練習時間に数日は要するだろこれ。ここまでくるとセンスどうこうだし、相当合った能力なんだろうね」
「そ、そんなもんなんですね...」
「まぁ今日のとこはここらで終わりにして、続きは明日だな。俺は二人を呼んでから帰るから、先に帰って───というより、先にのねみっちゃんのとこかな」
「そうします...」
そんな会話をして、僕はのねみっちゃん...すなわち仰音道さんのところ、保健室に向かった。昨日の比じゃない程の疲労に襲われながら、僕の頭の隅で、もしかしたらセンスではなくこの訓練量が成長させているのではないのかと感じた。




