第3話 到着して
「うわぁ...」
露店に並ぶのは村では見たこともないような美味しそうな食べ物。あちこちから肉の香ばしい匂いやスイーツの甘い香りがする。そう、歩くこと約一日、僕らはノベルト王都に辿り着いた。あの後特別強い魔物に会うこともなく、のんびりと歩いてこれた。
「とりあえず王都に着いたし、まず飯と言いたいんだが...」
「?何かやるべきことでも?」
「先に王都に来ている仲間がいるんだ、そいつらにこれを届けに行くんだ」
と言うと、平次君は虚空からリュックサック程の大きさの袋を出した。
「...え?え?今どっから...?」
「何って...『魔法収納』だけど」
「『魔法収納』...」
いや、そんなことより...
「...え、と、それは?」
「ったく、魔石ぐらい自分で回収しろって話だよ...」
まさかそれ全部魔石?そのリュックサック一杯に詰まってるの全部魔石?
「んー、そこまでおかしいようなことでもないんだけどなぁ...」
いや、明らかにおかしいよ?周りの人達皆ぽかんとしてるよ?
「俺はこいつを届けに行くけど、和真はどうする?」
「...ぇあ、僕は自分の宿舎をとりあえず見ておこうかと...」
「んー...俺らとは反対側の道だな。じゃあここでひとまずお別れだな」
「はい。えと、本当に助かりました!ありがとうございました!!」
「いいよいいよ、入学試験でまた会おうな」
「はい!!」
ここで平次君とはお別れ...。また試験会場で会えるよね。お腹も空いたし、とりあえず宿舎を探そう。
───ノベルト王都 とある宿舎───
「...戻ったぞ」
「平次さん!お帰りなさい!」
「おう、お疲れ平次ぃ」
「ほら魔石、これくらいで充分か?」
「お、サンキューサンキュー」
「これくらい自分で集めてくれよ全く」
「えぇぇ面倒臭いじゃん。それにあの迷宮に用があったのは平次の方じゃん」
「...まぁそうだけども、あまり戦闘サボってると実力落ちるぞ」
「俺の実力が落ちるとでも?」
「...すまん、この中じゃお前が最弱だったな」
「んだとコノヤロ」
「えっと、何か情報は見つかりましたか?」
「いや、やっぱりデマだった。結構期待はしてたがあの迷宮にも魔族は潜んでなかったな。だがあの周辺の平原であまり見ないような魔物が出てきていたな、きっとそいつが周辺地域の人間を狩ってたんだろう。」
「そうですか...あのあたりの死亡者が多いのは魔族のせいではなかったと...」
「あ、そうそう、帰りに興味深いやつがいたんだ」
「興味深い?めっちゃ最強のやつがいたとか?」
「いや逆だ。無力者。俺も初めて見た。」
「無力者...魔法が使えないというあれですか?確か無力者ってごく稀にしかいないんじゃ...?」
「確かにそいつからは魔力を感じなかった。制御しているとしたら天才的すぎる」
「どれくらい感じられなかったの?」
「メイの魔力よりも感じなかった」
「相当じゃねぇか」
「ただ村から出たことはないらしく、戦闘経験も浅いっぽい。それにそいつ自身も無力者を自覚しているらしいんだ」
「へぇ...案外いるもんなんだなぁ」
「ちなみにそいつは小林和真と言っていたな、第一学園受験希望者らしいぞ」
「マジ?あそこ魔力試験とかあるけど大丈夫なのか?」
「分からないが...剣筋は悪くはなかったな。武具技術試験もあるし、そこさえ頑張ればあとは筆記試験でなんとかなるだろう」
「まぁそうでしょうけど...」
「もし受かったとしたらどうなるんだろうなぁそいつ」
「受かったとして...死ぬだろうな」