第24話 吸収性退魔(2)
先制攻撃はウィッチモンスターが仕掛けてきた。
相手の先手の『火炎球』をすんでのところで避けた。
「危ない...燃やされるところだった───」
「いや、避けるんじゃなくて吸収してみないと」
「あっ」
そうだ、癖で避けちゃったけど今は自分の『独自魔法』を試す時だ。
「ん〜、今の魔法、もし失敗しても死んだりはしないよね...?」
魔法を避けた僕を笑っていたウィッチモンスターは、もう一度『火炎球』をこちらに打ってきた。僕は今度はその攻撃を真正面から受ける。僕の『独自魔法』はまだ未完成であるが故に、まだ意識を一点に集中しないと発動ができないが───
「右腕───っと...?」
右腕に当たった『火炎球』は僕にダメージを与えることなく消えていった。というより───僕の魔力として加算された。
「うん、いいね。これが一点だけでなく複数部位で発動できたら完成だね」
「うん!!」
「さて、さっさと倒しちゃおうか」
「了解!!」
そう言って僕は魔法の準備をする。お返しは『火炎球』でもいいかな?
「喰らえ!!」
そう言って放った『火炎球』は、前の訓練で放ったそれよりも大きくなっていた。
「わ〜すっげぇw」
僕が放った『火炎球』は、ウィッチモンスターどころか周りの木々すらも焼き払っていた。自分のことながら、とんでもない威力だ...。
「うわぁ...こいつぁやべぇな...」
「アハハ...」
「まぁ、魔力の無効化じゃなくて、吸収もできてるって証拠だな。見た感じダメージを受けてないっぽいから吸収漏れもない感じ?」
「そうですね、ひとまず第一関門は突破かなぁ」
「だな、これから完成系へ持っていくまでも時間はかからなさそうだな」
魔法が扱えるようになってからまだ日は経っていないが、僕は自身の『独自魔法』を、まだ完成とまではいかないけど作ることができた。相手が放つ魔法を自身の魔力として吸収して扱う僕の能力。この能力を僕は『吸収性退魔』と呼ぶことにした。
───アルガ中迷宮 第十二層───
「...妙だな」
湧いてくるモンスターを次々に狩っている俊君がそう呟いた。
「妙って...何が?」
「いや、ここって十二層だよな?弱いもんは弱いんだけど、この階層の割には強いモンスターが多いと思ってさ」
確かに僕も苦戦しはじめてる。いやまぁもともと僕は弱いからなんだけど...。それにしても強いと言うけど全然余裕の表情だよね...。
「それにこの階層にこれだけモンスターが集中してるってことはもしかしたらここに親玉がいるのかもしれないな...前にマナティに聞いたら二十層まではボスモンスターは居ないって言ってたんだけどなぁ」
「ま、まなてぃ...?」
「間名村先生、通称マナティ」
聞いたことがない通称だ...。もしかして皆もうこの通称で話してるのかな...?
「もしかして、ここにいる親玉ってやつに二人ともやられた...とかなのかな?」
「う〜ん...あの二人もそこまで弱くはないと思いたいけど、敵の実力がどうなのか分からな───」
突如濃くなった気配、俊君だけでなく僕でも気付いた。しかしこの気は───
「まさか親玉はモンスターじゃないのか...?」
「あ、やっぱりそうなんですね...」
一応、俊君から魔力制御のことも教えてもらっていた。前の訓練の時、「面倒な奴らに絡まれても困るだろ」ということで急いでやり方を教えてもらったのだ。
「いや、人が生成したモンスターの可能性もある、そいつらも人と同じ魔力を感じるんだ」
岩山の陰に隠れる。強力な魔力が隠れた岩山の奥で揺れ動くのが分かる。このモンスター───きっとボスモンスターであろう奴は、明らかに前の訓練の時のボスモンスターよりも強いぞ...
「あいつの気が強すぎるな、宇佐見と渚が居るか分からねぇ」
「え...っとどうします?」
「どんな奴かは確認したいな」
そう言うと岩陰から姿を見る。
「いた...かなり異型なモンスターだな───お、宇佐見と渚は捕まってんな」
「いやさらっと言ってますけど...」
「仕方ねぇ、二人で助けに行こうか。えっと...なんだっけ能力の名前」
「あ、えっと、『吸収性退魔』です」
「お、いい名前じゃん。『吸収性退魔』を怠らないようにね」
そう言うと岩陰の外に出る。そこで僕は初めてモンスターの姿を見る。
「な、なんだあれ...?」
そのモンスターは、まるで牛のような顔立ちをしていて、二足歩行で両手に鎖を持っている。鎖の片方の先には棘だらけの鉄球───所謂モーニングスターと呼ばれるものだが、もう片方の先には鳥籠のようなものが付いている。そしてその中に...
「あ、二人とも!!ちょっと助けて〜!!」
「こんな奴がここにいるなんて聞いてないんだけど〜!?」
「俺も予想外だけど、恐らく誰かが人工的に生み出したモンスターだ!!意図は分からないけど、今助けるから待っててくれ!!」
そう言うと俊君の身体が光───いや、電気を帯びる。前の俊君の話からすると、これが《雷電》の姿ということだろうか。
「僕は何をすればいい!?」
「とりあえず可能な限りで斬撃と魔法をしてみてくれ!!万が一に備えて『吸収性退魔』を忘れないようにな!!」
そう言うと彼の姿は風と共に無くなっていた。とりあえず僕は僕にできることをやるだけだ!!




