暗黙の口
目元を掠めるのは置き去りの不安。
下ろしていいのに、しがみついている。
朝のうねりに苦し紛れの嘘を吐こう。
そうでもしないと出来心で暗黙の嘘をばらしてしまいそう。
残念だけど、誰にも話せない。
内緒の話は、墓穴とともに高額で売り捌かれるのさ。
歯をくいしばるしか手立てはない。
噛み合わせの悪い歯を活躍させられるのは今しかない。
沸き上がるマグマのように、腐った血がいずれ暴れだす。
キリキリと音をたて、沈黙の嘘を締め上げる。
ギリギリと音をたて、暗黙の口を抉じ開ける。
もう好奇心のせいにはさせられない。
あなたの口を覗き込んで、悪質な嘘の正体を暴きたい。
もう猜疑心の虜になって、段々窃視の精度を上げていく。
額をぶつけて、鼻を押し付け、過敏なアンテナを差し向ける。
最後は虚言癖の口で貪り喰うだけ。
私の腹の中で内緒話と噂話がひそひそ話に花咲かす。