表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オズと私と4つのキスの魔法  作者: 夏田すいか
20/59

温泉と混浴

「みんな笑ってる……。……ふへっ?」


 さっきまでの殺伐した雰囲気とはうってかわって流れる和やかな空気に驚いていた詩衣が突然まぬけな声を上げる。


「ど、どうしたの? ド、ドロシー?」

「ま、また足が勝手に動き始めたの!」


 詩衣が主張する通り、彼女の真っ赤な靴を履いた右足が高々と上がっていた。

 スカートを必死に押さえる詩衣を見る限り、今回も彼女の意思で制御することはできないようだ。


「わわっ! ち、ちょっと待って! きゃあ!」

「ドロシーさん!?」


 詩衣の制止も聞かず、彼女の足はそのまま地面へとずどん! と盛大なかかと落としを繰り出した。


「うわっ! じ、地面が割れていく!?」


 やった張本人が一番驚く中、詩衣のかかと落としが炸裂した地面にはびりびりと大きな亀裂が走る。


「げっ! 水じゃねぇか!」


 白銀が慌てて亀裂から距離を取った。

 その地面の割れ目からはじわじわと透明な液体が染み出てきたのだ。

 やがて地面の表面を湿らす程度だったその液体は高い水柱となり、勢いよく周囲の人々へと降り注ぐ。


「きゃあ! みんな大丈夫!?」


 自らも全身をずぶ濡れにしながらも詩衣が仲間達に声をかける。


「濡れたけど大丈夫です!」

「ぬ、濡れるのはあんまり好きじゃないけど大丈夫!」

「俺は逃げた」

「わん! わん!」


 全員の無事を確認した詩衣は濡れて張りついた前髪をかき上げながらあることに気がついた。


「もうびちゃびちゃ~。……てか、この水……温かい……。これは……温泉……!?」


 そう。亀裂から突如湧き出た液体はもくもくと白い湯気をたてる温泉だったのだ。

 詩衣が驚いている間にもお湯はどんどんと湧きだし、周囲を満たしていく。

 噴き出すお湯の勢いが落ち着いてきた頃には大きな水たまりができていた。


「温過ぎず、熱過ぎないちょうどいい温度……。まるで即席の露天風呂ね。……そうだ! どうせこんなに濡れちゃったならお風呂に入らなきゃいけないんだし、みんなこの温泉に入っちゃわない? この際、混浴でもいいでしょ!」


 ぴちゃぴちゃとお湯に手を浸していた詩衣が名案が思いついたとばかりに瞳を輝かせて言う。


「いいですね!」

「こんなことがあってしばらくの入浴は諦めていたんだ!」

「煤で汚れていたからうれしいわ!」

「入っちゃえ! 入っちゃえ!」


 詩衣の言葉に町の人々も嬉々として同意する。


「よし! 男の人はあそこの建物の影、女の人はあそこのまだ辛うじて残っている建物の中で着替えましょ! 男女一緒なんだからエチケットでタオルは必須ね! そこら辺を漁れば人数分の何かしらの布ぐらい確保できるでしょ!」


 詩衣はそう言うと、着替えの入った鞄を持って町人達といそいそと入浴の準備を始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ