何が欲しいと問われれば【前篇】
1.そもそもの発端
この間。っていっても2ヶ月前。畑野の誕生日だった。
最近料理にはまったんだというそいつに、厚焼き玉子専用のフライパンと、適当に買ったいくつかの香辛料を渡した。ただそれだけ。購買でパンを奢るような、俺にとってはなんて事のないように出来事。
だというのに、畑野は何かにつけて俺に問いつめるようになった。
何が好きか、何が嫌いか、今どんなものが欲しい、だいたいそんなこと。
それに対して俺は答える。
たいていのものは好きだ、嫌いとかはないな。強いて言えば食い物の中ではレバーしか浮かばない。今欲しいもんはないな。
それでも畑野は納得しない。
そうして今日がやってくる。
2.とある日のLINE内容
ゆーすけ:もう諦めよーぜ
畑 野 :そういうこというから課題終わんないんだろ
ゆーすけ:いつかは終わるb
ゆーすけ:でもま、今週中にはおわしたいんで手伝ってくれません?
畑 野 :・・・
ゆーすけ:この通りです
ゆーすけ:【土下座スタンプ】
畑 野 :借り一つね
ゆーすけ:あざっす
畑 野 :ちゃんと
ゆーすけ:畑野様ありがとうございました
畑 野 :……まぁいっか
畑 野 :で、そろそろ欲しいの決まった?
【その後既読つかず】
3.そして今日
「せめて既読はつけようよ」
教室に入るなり畑野はそんなことを言い出した。
長ったらしい前髪から呆れたような目がのぞく。うん。怒ってない。
そういえば既読つけてないなって、今更思い出す。
いや、つけた気したんだよ。内容読んだしさ、そういうことあるだろ?
でもまぁつけなかったことは事実なんでね、ちゃんと謝りました。
ため息疲れたけどね…うん。そこはそれ。仕方ない。
「あのさ、そろそろ何欲しいっていってもらわないとオレが困るんだけど」
そうは言っても別に欲しいもんとかないしな…
「お前今欲しいもんないとか思ったろ。おい。なんでもいいんだって本当にさ。お前が好き好んで買い食いしないのは知ってるから食いもんにしろとは言わねぇ。変にきぃ使うのも知ってっから高いのでもいいとはいわねぇ。けどさ、せめてあんだろ。この際ノートだろうがシャーペンだろうが何だっていいからさ。な?」
「いや、文具とかそういう実用的なもんはもう足りてっからいいや。実用性のないもんはあってもしょうがないし、食いもんもいらんし、どうしても欲しいもんは自分で買うし」
そうだろ?
そう言って俺は席に着く。
何か言えば畑野は満足するんだろうなって、それくらい分かってる。変にこだわらないでどこかで妥協するもんだって事も。
でもそれを言ったところでどうなるって話。
どうでもいいものを頼んで、それを受け取り笑うのか?そんなのバカみたいだ。
あぁでも、畑野の表情はいっこうに晴れない。
「………そうは言っても、オレだってなんかしたい。オレん時のさ、ゆーすけのことだからパンの一つや二つくれんだろうなって予想はしてたけどさ、まさかあんなん貰えるとは思わなくてさ、アレなにげ嬉しかったんだからな!?知らないだろ!?だからオレからもなんかさせろよ!!」
勢いつけ過ぎかよってくらい、畑野は前のめりになって熱弁を振るう。
かくいう俺は呆れるばかりだ。
だってそうだろ?
周りから分かりにくいっていわれる畑野も、オレからすれば十分分かりやすい。
あの時もあーこれ漫画なら花びら散ってるシーンじゃん。って、そう思えるくらい喜んでんのを見たし、今日のは成功だとか、火加減を間違えたとか、よく飽きないなってくらい玉子焼いてんのも知ってた。なのにこいつは、なんで俺に知られてないと思ってんのかね………。
なんかこう、うん。畑野はいい感じに惜しい。
見てくれが人当たりのいい優等生なのに、抜けてるっていうか、なんというか………上手く言えんけど。
でもな………うん。本当になんもいらん……。
畑野も畑野で貰ったから返すとか、友達だから渡すとか、そうは考えてないんだろうけど………そんなわけだから気にすんなって言っても、それじゃぁコイツは引き下がんないんだろうな………。
そう考えて、あっ、そうだと思いついた。
拙い文章ですがここまで読んでいただきありがとうございました。
誤字脱字、気になった箇所等ありましたらご連絡いただけると助かります。




