プロローグ
お楽しみいただければ幸いです!
わたしのママとパパはお互いのことを "名字"で呼び合う。
もちろん、ママのことに関してはパパは旧姓で呼ぶんだけれども。
会話を聞いていても、下の名前、周や美紗、などで呼びあわない。
「高倉、ちょっとあれ取って。」
とか、
「宮原、手紙がきてるわよ。」
という会話をする。
私の名前は宮原 麻有音というんだけど、ママがパパのことを 宮原 と呼ぶのは自分が呼び捨てにされているみたいで何だか違和感を感じる。
以前、ママに
「パパのこと宮原っていうのすごく変な感じがするから、周か何か、名字以外の名前で呼んでよ。」
と言ったら
急に動揺し始めて
「パ、パパとママは中学生の頃の同級生でその頃からお互いのことを名字で呼んでいたから…!」
と言い始めた。わたしはその時初めて二人が中学の頃の同級生だったことを知った。
それなら納得もいく。
「でも、恋人になった時点で自然と名前呼びとかになるんじゃないの、普通」
わたしは言った 。ママは
「タイミングがつかめなかったのよ、ね。し、ししし周だなんてとても言えないわよ。」
と頬を赤らめながら言った。
うわ、動揺してる。
「俺も高倉も積極的じゃなかったし、中学の頃はお互い見つめていただけってことがのちに分かったんだ。それでママはな、俺のことを…」
「宮原!!」
ママのキンキン声が部屋中に響いた。
ふうん。こんなカップルっているんだ。
14歳で知ったこと。その時パパとママは36歳だった。
わたしは恋なんてしたことがないから分からない。恋愛話が趣味の友達から情報を仕入れているだけだ。
恋なんて遠い世界だな。男って何を考えているかよく分からない。今はパパとママを見ているだけで楽しいや。
何でもパパとママはお互い消極的で二人とも異性に声を掛けられなかったらしい。そんな二人が結ばれるって、
一体どんなキッカケがあったの、と聞いた時があった。そうしたらパパは
いつの間にそんなことを言えるようになったんだ、最近の子供はませているな。
と変に感心するし
ママに関しては
何でそんなことを知っているの!?
とびっくりされただけで終わってしまった。
いや、二人が毎日想い出話しをしているからよ。とも言えず。
あれから2年
高校1年生の秋。
わたしは恋をしていた。