一人目の転生者③
土日は基本的に見直し日なので投稿は無いと思われます。
魔族の街、大して人間と変わらない街並みを見ながら歩く。
「イヴ様、少しこちらで待っていただいてもよろしいでしょうか?」
ミレイラが聞いてくるのでコクリと頷く、ミレイラは人気のない方に人ごみをスイスイと進んで行った。
俺一人じゃあどこかに行ったミレイラを追跡する事ぐらいしかできないので・・・追跡するか。
さっき四人くらいの魔族がミレイラを追っかけて行った気がするので、慎重に行けばバレる事は多分無いだろうと思う、というワケで。
「[SPDUP Lv5]」
スピードアップレベル5、二歳くらいの時から十歳までドーピングスキルを使い続けた結果、レベルが上がった。
何が上がったかというと俺自身のいろんな速さが1.5倍だったのが3.5倍になったところか、0.5づつ増えてる感じだ。継続時間も然り。
吸血鬼という種族に加えての身体能力UPによって身のこなしが気持ち悪いくらいに、俺は建物の隙間に入り連続壁キックで蹴り上り、屋根に登る。
「ミレイラに付けておいた血は・・・あっちかな」
ブラッディ・チェイス
これを付着させておけばどこにいるかがまる分かりなのだ、どうだ?凄いだろう?
ネタバレとしては自分の血に魔力を付けておいて、自分の魔力を探すっていう事だけどな・・・
☆――――――――――☆
「ぅ・・・は・・・」
壁に叩きつけられ、気を失う魔族の四人目、既に他三人は綺麗に伸されていた。
ぴょんぴょんと軽く壁キックをしながら四人を倒したミレイラの元へ降りる、ミレイラはすぐ俺の事に気付き手に持っていた槍を背負った。
「待っていて欲しかったんですが・・・」
「興味の対象には熱心にストーカーしないとね、まだ十歳ですし」
全く・・・と、呆れた?顔をするミレイラ、キリッと顔を変え、聞いてくる。
「少々時間をとられましたが、そろそろ言ってもいい頃です、まだ街を回りますか?それとももう魔王様の所へ行って準備しますか?」
「準備?」
「はい、毎年この日は祝杯、パーティーなるものが催されています、いつもだったらこの通りもこんなに人はいません」
「なるほど?んじゃ良く分からないから準備しに行こう」
「分かりました、こちらです。行きましょう」
一悶着とは言ったけど、案外あっさりだったな。
☆――――――――――☆
「へっへぇ、こりゃいいね」
「アリシア様がイヴはよく血を使うから赤色の方が似合うとの事です」
王都ならぬ魔王都(仮)の中心部には魔王が住んでいる城がある。
そこでリヴェスト家の人間だという事を証明し、中に入れてもらう、流石に普通の服じゃダメというので、着替えるハメになったのだが、正直こんな大層なパーティーに出た事無かったので、戸惑いを隠せない。
「この服にマント付けて戦ってみたいもんだ」
「多少の戦闘なら十分できるようになっています」
吸血鬼の俺、ノリノリである。
いやー、ね?どんな服なのと聞かれると説明はし難いのだが、こういうのを着た事が無かったのでテンションが上げ上げなのだ、許しておくんなし
「イヴ様の事ですから大丈夫だとは思いますが、このパーティーには他の権力者の方々もいらっしゃいます。おそらくその御子息なども、露骨な勧誘や遠まわしに皮肉、悪口なども言われる事があります、そう言った場合は「笑って過ごす、俺にはそれくらいしかできないよ」それだけできれば十分です。
それに私はイヴ様の近くにいます、何があっても守り抜いて見せますよ」
「ありがと」
これは惚れるね、ベタ惚れだね。
正直守ってもらうってどうよって感じだけど良いね、最高だね。
「イヴ、いるか?」
コンコンと部屋をノックしてくる親父
「いるよー」
ギィと部屋の扉を開け、俺の姿を見る。
「まぁ良い方だろう、先に魔王様に会いに行くぞ、側近を連れて行っても構わないそうだ」
「そうでっか、んじゃミレイラ行こう」
「ああ、あとその軽い喋り方は魔王様の前ではやめてくれよ」
「もちろんさ」
☆――――――――――☆
「おお、その子が例の・・・」
「はい、イヴ、自分で言えるな?」
なめんなよ
「どうも、こんばんは、エイヴ・リヴェストと言います。年齢は7歳と1095日で、最近魔法に興味を持ち始めたところです」
見たか、いらない事を二つくらい言って大して敬意も払わないこの自己紹介を!
その自己紹介を聞いて魔王様は固まっている。容姿は?お前等の想像通りだよ。
「はははははは!面白い事を言う!これは期待できそうだな、もうそろそろ祝杯が始まる、存分に楽しんで言ってくれ」
一礼し、出て行く、これが俺の初めての魔王様との顔合わせだった
☆――――――――――☆
「案外あっさりだったな」
「そうですね、いきなり何を言い出すか怖かったですよ」
俺は水を飲みながらミレイラと喋っていた。
祝杯とかも終わり、各々勝手な事してる、飯食ったり、談笑したり。
でも俺はそういうのに興味も無いし、面倒くさいし、社交辞令とか、だからミレイラに飯を適当にとってきてもらって食うっていう楽な事をしてる。
ミレイラにナンパしていた輩もいるが、そこらへんは割愛。
「やっぱり料理は旨いな、これで明日もたくさん血が吹き出そうだ」
「その感想はどうかと・・・」
突っ込まれた、変な事言った?俺?
こんな感じで適当に過ごしている。
「すみません、エイヴ・リヴェストさんですか?」
「ん?ああ、そうだけど」
と、俺に話しかけてきたのは見た目17歳くらいの・・・
「何者?」
「えっ、ああ、すみません、邪魔になるので隠してますが種族はスキュラの名前はセラと言います」
スキュラっていうと・・・腰に六つの犬の頭を持ってるんだっけ、出来た起源としては水に漬かってどーたらこーたらだった気がするけど、まぁいいか。
「んで?そのスキュラのセラさんが俺に何か用?」
見た目は17歳の・・・うん美少女の部類かな、でも数十年・・・いや数百年生きてたりするのかな・・・嫌だなそういうのは、悲しくなる。
「いえ・・・その、暇そうにしていたので話しかけるなら今しかな・・・あまり動いてなさらないので」
本音出たろ今、隠す気も無かっただろ。
「ああ、うん、面倒だしね」
「そ、そうですか・・・」
「・・・・・・・・・」
・・・黙ってしまった、いやいやどうしろっての俺にさ。
ちょんちょんと俺に耳元でミレイラが一言、
『椅子に座らせてあげたらどうです?空いてるんですし』
ナイスアイディア、この沈黙破るのには最適だ。
「えっと、セラだっけ?座れよ、空いてるんだし」
「いいんですか?」
「ダメだったら言わないってーの」
失礼しますと一言、椅子を引き座るセラ。
座ったからといって何かが進展するわけでもないが・・・どうする。
・・・そうだ
「・・・ミレイラ、セラに適当に料理持ってきてやってくれ、それまでに俺もどうにかする」
「分かりました」
小声でミレイラに頼み、取りに行って来てもらう
「何か頼んだんですか?」
セラがこちらを向き聞いてくる。
「ああ、ちょっとな、お前もこのパーティーに呼ばれたのか?」
「ええ、そうですね、両親と共に来ました」
「へぇ、その両親は放っておいていいのか?」
「大丈夫です、というか自由にしてなさいと言われたので」
「そーかい」
ふむ、意外とすんなり喋れたな、どうにかできてしまったぜ。
「イヴ様、セラ様の分の料理をお持ちしました」
「ありがと、彼女の前に置いてあげて」
「えっ」
ミレイラはサッサッサと料理を乗せた皿を置く、武道も家事もできるって凄いね。
いきなり料理を運ばれて驚いているセラだったが、ミレイラが俺の分も取ってきたので、一緒に食うと言うと、彼女も食べ始めた、分かりやすいのぉ。
適当に談笑しつつ、周りに目を配る、だって他の奴に目付けられてたりしたら怖いじゃん。
「こんばんは」
――――――――――なんだとッ!?
突然目の前に現れやがったぞコイツ
「はい?」
「貴方がリヴェスト家の一人息子ね、私はリリーナ・メイグル、炎の魔神よ といってもまだその名は貰えてないけどね」
「ほ・・・炎の魔神?」
ここで耳元にミレイラのフォローが入る
「魔神には炎と水と風と土と雷と闇があります。魔神というのは最初に魔法を作ったものの事を指します。
すなわち彼女・・・リリーナ様、メイグル家は炎の魔神の家系、炎魔法の祖先でありその右に出る者はいないとされます。
その魔神の家系は全員魔王に貢献していますので、イヴ様の同じ階級の方という事です」
「サンキュー、やっぱ優秀だわ」
ちゃんと小声で喋っている。
「で・・・えーと、リリーナだっけ?何か用?」
「いいえ、顔を見に来ただけよ、喋りかけるタイミングを見計らってたら丁度スキュラの所に盗られたって感じかしらね」
チラリとセラを睨むリリーナ、おいおい落ち着けって。
さてどうしたものか、用が無さそうならどうしようもないんだが。
「まぁ、リリーナ良く分からんが座れよ、目の前で立たれてるのは何か嫌だ」
蹴り飛ばしたくなる。
「あら、ごめんなさい、なら失礼して」
はたまた上品そうに座る、やめろよ、俺だけそういう教育受けてないって浮き彫りになるだろうが。
「んで、何だっけ、用が無いって言われてもこっちが困るんだが」
「そうね、しいて言うならお話しにきた・・・って感じ」
リリーナはこちらを見てニッコリと微笑む、やめい、やめろや、無駄に美少女なせいで反応に困るわ。
赤い目に赤い髪、加えてツインテールに・・・まな板。
「・・・アンタ何考えてるの?」
「いや、何も、いきなり喋り方変えるなよ、怖いわ」
実に困った、ただ座ってるだけで二人も寄ってくるとは、セラは空気だけど。
トットットットットッ
「お前があの吸血鬼の所のヤツか!」
今回三人目のゲストの登場。
ズビシッと効果音が付いてもいいんじゃないかと思うくらいに俺に向かって指を差してくる白い服来た少年、いや今の俺と同じくらいか年齢は、中身は違うけど。
後ろには黒い燕尾服を着た執事さんっぽいの、やっぱり戦闘もできますよ系なのだろうか。
・・・まぁミレイラの方が絶対強いけど。
「そうですけど、何か?」
「僕は土の魔神だ!表へ出ろ!勝負だ!」
「何でやねん」
・・・あっ
思わず突っ込みを口にしてしまった。
パッと周りを見回してみると、グレイヴ・・・親父が額に指を当てて下を向いているのと、隣で俺に向かって両手を合わせて「ごめん!」と言ってる感じの人がいた、おそらくこの坊っちゃんの親父さんだろう。だがどうしてこうなった。説明を要求しよう。
「なんでやねんって・・・」
「???」
「・・・・・・」
上からリリーナ、セラ、ミレイラである。
ミレイラ!こういう時に助言欲しいんだけど!
「君の意見なんてどうでもいいんだ!僕と執事、君ともう一人で2:2で勝負だ!」
「何を言ってるんだか・・・」
気付けばその坊っちゃんはさっさと外に出ようとしている、聞く耳無しですか!そうですか!
2:2って何だよ・・・面倒だなぁもう・・・
しかし、これはもう避けれない戦闘になるわけで・・・誰と組むか、か・・・
リリーナとセラは絶対にないな。
「ミレイラ、頼める?」
「もちろんですよ」
「じゃ、行こうか、さっさと終わらせて帰って寝る、この後の予定ね、OK?」
「OKです」
この赤い服で戦えるという事に、心のどこかで興奮している俺がいましたとさ。