一人目の転生者②
PV5000越え、ユニーク1000越えしました、ありがとうございます。
「イヴ様、疲れたりはしないのですか?」
「全然大丈夫だよ」
あれから五年経ち、もう10歳になってしまった。
現時刻昼、屋敷の庭にて俺は魔法の練習をしていた。
午前中はミレイラに槍の使い方を習っている。
母さん、アリシア・リヴェストは中々名の知れた魔法使いだったらしく、俺は魔法の使い方などをレクチャーしてもらい、今では・・・
「ファイアボール」
頭上に火球、半径50cm程の大きさだ。
といっても使うと庭が焼けるので、魔法を制御しながら分散させる。
「ブラッディ・ツェペシュ」
俺は右腕の脈近くを軽く斬る、そこから溢れ出る血を大量に庭へ振り撒く、その血を使って、針のように鋭い物を大量に出現させる。
「これで敵があのど真ん中に居たら串刺しエンドって感じかな・・・」
俺がブラッディ・ツェペシュについて冷静分析していると後ろからミレイラが近づいてきて、結構真面目な顔で言った。
「範囲の狭さで放つならもうちょっと密集させた方が良いかと、あとこの距離でしか放てないのでしたら拘束魔法も駆使した方が確実に相手を仕留めれると思います」
おおう、流石戦闘員時代に一対百を槍一本で凌ぎきった・・・いや、殲滅したお方は良く分かってらっしゃる、何でこんな化け物がここでメイドしてるかっていうと、ただ単に疲れたから雇われてみたって感じらしい。
だからこそ彼女から槍の使い方を習っているんだが。
「拘束魔法は無いけど、血でなら拘束ぐらいはできるはず・・・ちょっとミレイラじっとしてて」
「え?はい、分かりました」
ピシッと全くぶれない直立不動、戦えるメイドさんとはこの事か、いや戦ってる所見た事無いけど。
「ブラッディ・リスティクション」
ドクドクと俺の腕から流れ出る血が鞭のようになる、それが一瞬のうちに何本も増えミレイラに向かって行く、それを見てミレイラは後ろに退こうとしたみたいだが、俺のお願いに応えるためだと思うけど、動かないでいてくれた。
赤黒い糸の様なものがミレイラに絡み付く、腕、足などなど身動きが取れないように縛る・・・肩の上らへんと腹にも絡み付いているので・・・そう、アレだ、胸が強調される状態になっていて・・・一言で纏めてやろう
「眼福です」
「はい?」
☆――――――――――☆
「やっぱ治るの早いな・・・」
「魔族の中でも上位と言われる吸血鬼ですからね、力、俊敏さ、回復量が並以上というレベルじゃありません。しかも・・・吸血鬼が湯浴みをするなんていうのは初めてですよ」
今風呂場でミレイラに背中を流してもらっているという状況である。
流石金持ちはやってもらう事のレベルが違う、こんな生活してたら色々ダメになっちまいそうだぜ。
ん?吸血鬼のくせに流水とか大丈夫なのかって?吸血鬼舐めんな、大丈夫に決まってるじゃないか
けど背中流してもらうなんて経験した事ないわ・・・転生して良かった。
ちなみに何でこんな事をミレイラにやらせているかというと、俺が6歳くらいの時に側近メイドとなったのだ。
6歳の時だから4年前くらいの事
「困ったわね・・・」
グレイヴの仕事は一層忙しくなり、あれよあれよといろんな地方に飛んでいく毎日。
変わりに自分の領地の管理はアリシアがする事になったのだが、そうするとイヴの面倒が見れない、そこで彼女は思ったのだ、イヴに側近のメイドを付けようと!
それからの行動は早かった、溜まる溜まる書類を放りだし屋敷の中にいる、信頼のおけるメイドを集めたのだ。
「ここに来てもらった理由は他でもないイヴの事よ」
?という文字を皆頭の上に乗せる、それはそうだろう、彼・・・イヴは聞き訳が良く、突然いなくなったりする以外は基本良い子なのだ。
「イヴ様がどうかなされたので?」
一人のメイドが聞く、その質問に対してアリシアは目をキラリと光らせ天を突きそうな程高く人差し指を上に上げた。
「今からこの中でイヴの側近メイドを決めます!」
突然の宣言に部屋の中は沈黙に包まれた。
☆――――――――――☆
「なるほど、つまり心配だから一人だけでもお目付役が欲しいって事ですね」
「まあ、そういうことね、この中で一番イヴと仲のいい人っている?」
アリシアはメイド達を見まわしながら言う
「仲が良いかは知らないけど、ミレイラさんはイヴ様を簡単に見つけられますよね」
一人のメイドがそう呟く、ミレイラはピクッと身体を震わせた。
「確かに、最近じゃあ眠った状態じゃなくて、起きたままだし」
もう一人のメイドも呟く、ミレイラはピクピクッと身体を震わせる。
「そういえばイヴは他のメイドよりミレイラに抱き抱えられてた時の方が笑っていた気がするわね」
最後にはアリシアからのとどめの一言、ミレイラは緊張した面持ちでアリシアを見る。
「お願いね?」
反論の余地は無く、ほぼ強制的に決まってしまったのであった。
アリシアは後で、『嫌だったらちゃんと言ってね?』と付け加えたらしいのだが、そのようなことを言う事は無く、『楽しくやっている』と彼女自身が言っていたらしい。
☆――――――――――☆
「実に長い回想だ」
「どうしたんです?」
「ああいや、何でもない」
風呂からは既に上がり、さっさと寝る準備をする、いつもなら他にも色々適当な事して遊んでるんだが、明日はグレイヴ・・・親父が帰ってくるとか、それで俺に用があるとか、だからさっさと寝て起きなさいとかいう事だ。
「明日の午前には帰ってくるという事なので、早く起こす事になります、それと午後には・・・魔王様の所に行く事になっております」
へー魔王かー、ふーん。
「マジで?」
「明日は魔族の領地の安全性が確立し、生きる者共が協力して生活できるようになれた記念の日です。
なので大きな貢献をしてくれたリヴェスト家には是非来てほしいというものです、毎年の恒例行事ですね。今年でイヴ様は10歳になられましたし、グレイヴ様も紹介程度につれて行こうと思ったのでしょう
道のりは長く、退屈されるかもしれませんが、頑張ってください」
へぇ、ドルイナさんの事か
にしても、ミレイラの言い方だとまるで自分は行きません的な・・・
「ミレイラは行かないのか?」
「私は行っても仕方が無いかと思いますし、グレイヴ様との久しぶりの会話でしょうから、その場にいるのは気が引けますというか・・・」
「そうか、なら連れてく」
「はい、そ・・・ってえぇ!?」
「嫌なら俺は無理矢理連れてったりしないけど・・・ダメなの?」
ここで俺はプライドも全て投げ捨てた、小さい子供にだけ許されるお願いの仕方、という技を解禁する、悲しそうに言うのがベストだ。
「わ、分かりました、私も行かせてもらいます」
あわあわと慌てるミレイラ、キリッとした時とのギャップが違いすぎるだろ。
そんな感じで軽く遊んでから寝に入る。
吸血鬼なのに夜寝るのはおかしいって?大丈夫さ、これは七日ぶりの睡眠だからな。
☆★☆★☆
「イヴ、準備はできてるか?」
「完璧でっす」
軽い調子で答える、正直金持ってるってだけで貴族じゃないからそういう対人的教育受けてないのよね
「一緒に付いてくるのは・・・ミレイラか、なら安心だろう。じゃあ行くぞ」
俺の後ろでメイド服のまま槍を背負ったミレイラを見て、うむ、と頷く親父、やっぱ強いのねミレイラって。
ちなみに親父の後ろにはいかにも仕事ができるぜ!といったスーツを着こなしているイケメンがいる
どうやら彼は執事らしい、親父は基本戦闘時は格闘一筋だが、それを援護するようにナイフだのトマホークだのスピアだのを、投げるのだ。
どこにそんなものを隠し持っているのかと疑問に思ったりするが、そこを気にしたら負けである。
しかも近づかれたら格闘で叩き伏せるという、正直執事の方が強く見える、不思議。
・・・ミレイラだって槍以外に薙刀とランスだって使えるんだぜ。
フォローになってないとは思うが、フォローを入れておいて、馬車に乗り込む。
その馬車を引く馬には首が無い、そして手綱を持っている奴には頭が無い、おそらくデュラハンってところだろう、リアルで見るのは初めてだけど怖すぎだろ。
☆――――――――――☆
馬車内の事は割愛する、大した事喋ってないからな。
「魔王様に呼ばれた時間までにはまだ余裕がある。ミレイラ、まだこの街の道は覚えているな?イヴの道案内をしてくれ、俺はする事があるので先に行く、セイン」
「はい」
と、これだけ言ってどこかへ行ってしまわれました。
「イヴ様、どこか行かれたい所などありますか?」
行きたい所ねぇ・・・どんな場所か知らんしなぁ
まぁここは何もしなかったらミレイラの顔はたたないかもしれん、というワケで堅実な選択だな。
「適当に回ってみたいな」
「そうですか、では行きましょう」
数分歩いてみたところ大して興味が沸くものは無い
ミレイラは結構後ろを警戒して歩いている、即ちそう言う事なんだろう。
誰かが付いてきてるって事だ、俺のカンは間違っていなかった、俺も気付いてたんだぜ!?
こいつは一悶着起きそうだ・・・。