三話
短いです。
「327戦中327勝0敗・・・」
村人も村長も皆寝静まった頃、俺は夜空を見上げ、トランプを眺めていた。
この世界に来て一日が終わろうとしている、というかまだ一日目だったんだな・・・。
そういえばブラックジャックを300回目くらいの時だったか、新スキルを習得しました、って頭に浮かんだんだよな。
どんなスキルかってのは・・・[ ]トランプ使い専用、スキル仕様者はディーラーでなければならない。スキル発動後両者が『相手に何をするか』を言い合い、何戦するかを決め、ゲームを開始。
敗者は問答無用で指示に従わせる、命令拒否は不可能。
・・・名前は?それが分からなかったら発動できなくないですか?
「うわッ、寒ッ」
ヒュゥゥゥと冷たい風が吹き軽く身震いする。
袖無しで腹見えるんだぞ、しかもスカートなんだぞ、めっちゃ寒いんだぞ!
流石にこれ以上いると風邪引きそうなので貸してもらっている家に入り、さっさと寝た。
☆★☆★☆
「ん・・・」
朝、隙間から差し込む日の光がピンポイントで俺の顔を照らす
寝返りを打っても明るいままだったので諦めて起きる事にした。
「あー、こんな目の覚まし方した事ないわ・・・日の光で起きるなんて」
服はそのまま寝たので着替える必要は無い・・・けど、まあいいか。
飯を持参しているワケではないのでさっさと外に出る、ドアを開けたらすぐそこに昨日道案内をしてくれた少年がパンらしき物を運んでいた。
「はい、おねーちゃん。食べる物無いでしょ?」
と言いながらそのパンを差しだしてくる。
気付けば昨日何か食ったっけ?いや、気にするな、それを考えたら腹が減る。
「ありがとう」
一応笑顔で受け取ったつもりである。
「おねーちゃん今日何かするの?」
「お・・・私?いやそこまでして予定は無いけど・・・」
「ふーん、そうなんだー、じゃあねー」
少年はそれだけ言うと走り去って行った、何だったんだ・・・。
ああ、あと俺じゃなくて私って言ったのは村長さんに注意されたからだ。
しかも、それが原因で何かされたら面倒だろう、という理由があるし何より子供の教育上良くない、だそうだ。
少し抵抗はあるが、大丈夫だ。大人になれば社会で俺じゃなくて私って丁寧な言い方してるし、男でも
そう、これはあくまで丁寧な喋り方を身につける一環として私を使っているのだ、そうなのだ。
☆★☆★☆
夜、村は緊迫した様子に包まれていた。
何が起きたか、少人数で盗賊が村を襲撃してきたからだ。
俺はなんとか観察眼でどこにいるのかだけは把握している、子供は全員安全?と思われる場所に移動させてある。流石です。
にしても災難だなこの村、俺が来た後に盗賊が来るなんて、ゲームでフラグが立ちまくってイベント連続消化でもしてるみたいだな。
「[瞬時加速]おっと」
俺に向かって一人が死角から斬りかかってきたので瞬時加速で一時的に速さを上げ、ギリ避けする。
現状は真っ暗な村の中で盗賊4人に囲まれているという絶体絶命状態。
こりゃまるで最初っから俺狙いですよー、とでも言ってるみたいだ。
「チィッ」
バックステップで距離を取る盗賊、あんまし恐怖を感じないっていうのは俺が鈍くなっているのかなんなのか。
「相手にするのは面倒そうだな・・・」
真っ暗闇の中から一番ごっつい人が歩き出てくる、流石にこれは怖いわ。
「はッ」
剣を右手に持ち駆け寄ってくるごっつい人、思い切り振られる剣をレイピアで弾く、弾く、弾く。
弾くのはいいがこちらから攻撃ができない、流石に一対四は分が悪すぎたか、慢心はしない方がいいですね。
一応奥の手は用意してるけども。
「ったく、最初にお前を選んだとしても面倒さはかわんねーな、おい」
ごっつい人は俺に向かってそう言う。
いやそんな事言われても困るわ、なまじ剣術貰ってる分相手の剣捌きそれなりに分かっちゃうし。
「お前等、押しきるぞ」
わざわざ俺に聞こえる声の大きさで他の3人に声をかけるごっつい人、観察眼無かったら今頃死んでるわ
周りから足音が聞こえてくる、正直怖いのでこっちも退・・・こうと思ったら回り込まれてたー!やべー!
四人に四方を囲まれる形になり、これは流石にどうしようもないので・・・奥の手だな。
先に言っておく、一対四になったのは俺のせいじゃない、相手が狙ってきたんだ。
「ちょッ待って下さいッ、話し合いましょう!賭け!賭けしませんか!?」
今にも斬られそうだったのでこっちは話し合いという選択を切り出した。
「ああ!?賭けだぁ!?」
こえぇって、マジで。
俺は咄嗟にトランプを見せつけ、ヒンズー、リフル、パーフェクトシャッフルをする。
盗賊達はいきなり何してるんだという顔で俺を見てきた、よし、攻撃は止んだな。
「[一か八か《Death or life》]このスキルは賭けに勝った時に自分が提示した事を確実に実行に移せるスキルです、これは貴方達にも適用されます」
ちなみにもう発動してます。
「賭けに勝った時?」
「ええ、そうです、私がディーラーで、ブラックジャックをするという事です、そちらは四人で来て構いませんよ、特別ルールとして貴方達の中一人は21を超える、バストしたとしても他3人は負けにはならないというのも付けましょう」
一対四、言うだけだったら盗賊の方が有利である。
「おい、もしそれに勝ったとして、俺達のしたい事、例えば村から食糧を根こそぎ頂く、だとしたらそれは叶うって事なのか?」
剣を持った、この中で一番細い奴がそう聞いて来た。
「はい、そうです、四人、一人ずつ自分の提示した条件を出していいですよ
ちなみに私は貴方達に自害して欲しい、です」
盗賊共はニヤリと笑うと一人ずつ言い始めた。
「じゃあ、俺はさっきコイツが言った食糧を根こそぎ頂く事だ」
ごっつい男が言う
「なら俺はお前という存在を差し出してもらおうか」
2番目にごっつい男が言う、要するに俺が欲しいってか、気持ち悪い。
「だったら・・・その剣が欲しい」
三人目の男は俺のレイピアを指さす、ハッ 絶対にやらねーよ
「・・・そうだな、思いつかないが・・・そのトランプにしよう」
この中で一番細い男が言う、なんか一番まともそうだなお前
ナイスタイミングすぎる場所に良い台があったので、それを机代わりにゲームの準備をする。
「勝負は一度きり、リベンジは絶対に無い 準備は?」
「いつでもいいぞ?」
ニヤニヤと気味悪い顔でこっちを見てくる盗賊共、どう考えてもイカサマするつもりだな、まぁさせないけど
「じゃあ、スタートだ」