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四聖物語  作者: ニネコ
序章
1/3

後世の歴史家は語る


 遥か昔、まだ神が地上に居らした頃、世界にヒトは人間しかいませんでした。

 空まで届く塔に、海の底までいける船。

 今では考えられないほどの文明が、神に寄って導かれ育っていきました。

 しかし、いかなる訳だか、神が地上をさることになりました。

 神は、残されることになる不安と悲しみを感じ沈むヒトを哀れに思い、最後の力を用いました。

 神が宿した力ごとに異なる種族となったヒトは、その身に生じた変化を神の愛と思い、誇りとシました。

 その身に硬き鱗と牙を持ち、龍へと転身する力を得た者は、龍人族の始祖となりました。

 その身に獣の相を持ち、その相に応じた獣へと転身する力を得た者は、獣人族の始祖となりました。

 今ある種族の始祖が、この時生まれたのです。

 誕生の産声が、別れに嘆く声が、神々を地上から旅立たせました。

 しかし、ヒトは知っていました。全ての神が居なくなった訳ではないことを。

 大陸の東にある島に、深き眠りにつくことで残った最後の神がいました。

 大地と一対であった為、地上を去ることが出来なかった美しき女神。

 ヒトは女神のことを地母神と呼び、その身が眠る島に塔を建てました。塔には、四人の聖人が女神の眠りを守るため祈りを捧げておりました。

 それから長き間、世界は平穏な時を過ごしておりました。

 しかし、聖石という神々の力の残滓が発見されると同時に、世界に不穏な空気が流れ始めました。

 魔物の出現です。

 魔物は、それまでこの世界にいた生き物に似た姿でありながら、どこか醜悪で見る者に嫌悪の情を抱かせる奇怪な異形の存在として、突如世界に姿を現しました。

 彼ら魔物は一人の男の指揮下、人々を襲い、非道の限りを尽くしました。

 こうして現代、聖石戦争と呼ばれる争いの時代の幕が開けたのでありました。

 そして、こんな戦い溢れる世界に呼応するかのように、様々な力溢れるヒトが歴史の表舞台へと現れました。

 幼い子供でも知っている伝説“剣を折る者”ハロルドも、この時代に活躍していたヒトでした。

 そして、聖石戦争を終わらせた六人の英雄――六王も。

 これは余談ですが、この六王の内、賢王と獣王について、ある逸話が残っています。

 まだ、王と呼ばれていなかった頃。彼らの前に“金獅子”を自称する男が現れました。

 その男、遠目でも分かるほど、金で作られたものに身を包んでいたそうです。他の仲間が、剣まで金で出来ていたことに呆れながらもその自称に納得していたところ、賢王と獣王の二人だけは「その呼称に相応しい人物は他にいる」と言い張り、男と呼称を掛けて決闘にまで話が大きくなったそうです。

 仲間が仲裁に入り、事が済んだ後。何故そこまでその二つ名にこだわるのかを聞いても、笑うばかりで理由は聞けなかったといいます。

 “金獅子”という二つ名を持つ人物が、この時代に活躍していた、という文献は今のところ見つかっていません。

 しかし、ある獣人族の部族の中では、この二つ名に似た名を持つ英雄の話が残っていたりします。

 つまり……ああ、横道にそれ過ぎましたね。

 ええっと、この六王によって――


 カラーン……コローン……


 おや、もう時間が来てしまったようですね。

 では、次回はこの続きから。


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