ロリコン説の浮上
1週間パート医師の仕事も休み、俺は隠れ里で新婚生活を送ることにした。
家は、残念ながら隠れ里の一時しのぎ的な簡易掘っ立て小屋ということと
50人以上いる人間が各家族単位で使用しているので、現在彩の両親と妹12歳独身と
長の弟家族(弟夫婦、息子19歳独身、娘14歳独身、弟10歳)と同居。
大家族だ。
2人でゆっくり寛げるはずもなく、土の改良をしたり、山へ山菜を取り行ったり、薪を探したり。
毎日食べる物を探したり、集めてから作り始めるのでそれだけで1日が終わる。
2人だけの時間は、寝る時のみ。
せんべい布団でくっついて寝るだけ。壁も薄く全部筒抜けなので、話をすることも迷う。
「あのさ」
「はい」
「俺の国にも1度来て欲しい」
「壮一郎さんの?」
「俺の国にも師匠や友人、親族がいる。結婚したことを報告したいんだ」
「はい、壮一郎さんとご一緒なら着いていきます」
「・・う、うん」
物凄く素直だ。
現代の女性と違いを感じると、そのギャップに会話をしているだけでドキドキしてくる。
着いていきますって言われると、凄く嬉しい。
ああ、この子はいい子だな。と、好感がもてる。この可愛い人が俺の嫁さんなんだなあ。
ついつい顔がにやけてしまう。こんな本音を聞かれたら、ただの変態かと思われるか?
「どうしました?」
俺があれこれ考えて、百面相していたからなのか
不安そうな顔をして顔を覗き込まれる。
俺は間近に美人な顔が近づいてきて、情けないことにオロオロ。
「そんな顔しなくていいよ。なんだかね、俺、結婚したんだなあと実感する度に、照れるんだよ。
彩は、美人だから、中々慣れなくて、顔を見ているとドキドキするんだ」
「どきどき?」
彼女の頭を抱え込んで俺の胸の心臓の上辺りに近づける。彼女は一瞬怯んだが、心臓の音に耳を傾けた。
「心臓の音」
「ね。ドキドキが凄いだろ?」
「はい。心臓の音がします」
お互い毎日それぞれ食料探しをしていて疲れているため、そのまま熟睡。
次の日の朝、彩は心臓の音を聞いていたら眠くなりましたと教えてくれたので、
そういえば、心臓の音は赤ちゃんも安心する音だったなと思い出した。
現代に戻り、和磨医院の診察室で大きくため息を吐いていた。
数日でも会えないと寂しい。毎日見ていた顔が見られないとは。
すっかり恋煩いモードだなあと実感している。
患者さんからも「先生が春してる」と言われるくらいだ。
完全に様子がおかしいのは、分かってしまうのかな。
「久しぶりだね。壮一郎君」
午前の診察が終わり、昼の休憩に入る時間だ。俺が中々奥にある休憩室に顔を見せないので
医師自ら様子を見に来てくれた。
「あ、先生。お昼でしたね。行きます」
俺は、呆けていた顔を引き締める。幸せモード全開なので、両頬をパンパンと叩いた。
「ははは。すっかり君の周りは春なんだねえ」
和磨医師は、俺の前を先導するかのようにゆっくり歩きながら、含みのある笑いをする。
きっと俺の幸せモードがダダ漏れなのだ。
休憩室へ入ると、パート看護師達4人が俺に振り返った。
「あ、先生」
「やっと来ましたね。声掛けても全然気づいてくれないんだもん」
皆、20代後半~30代前半の女性だ。
「すみません。ついいろいろ考え事してまして」
医師の奥さんは、お茶を手渡してくれるが、くすくす笑っている。
「ふふ。春なんですねえ。壮一郎君、どなたかいい人見つけたようですね」
「・・・。え・・と・。」
どう説明しようか悩んだけれど、早く知らせておいた方がいいと考え、俺は顔を真っ赤にさせながら
皆に報告した。
「実は、先週結婚しました」
えええ~!!
看護師達の声が大きい。思わず耳を塞ぐ。奥さんは、まあまあと喜んでくれて、和磨医師は驚いている。
「それで、いつ紹介してくれるのかね」
「式は身内のみでしたので、こちらで食事会をして紹介しようと思っています。ご都合の良い日を
お聞きしたいのですが」
母がこっそりとデジカメとビデオカメラ撮影をしていて、デジカメで撮っていた写真を
はがきサイズの写真入れに入れて、俺は現在持ち歩いている。花嫁衣裳の彩と紋付袴姿の俺。
彩の花嫁姿は綺麗なんだ。バカ夫で申し訳ないが。
ハガキサイズの写真を見せると、その場の全員が驚いた。
「可愛い花嫁さん。でも、凄く若い」
「若いわね」
「先生、奥さんいくつなんですか?」
彩は、先週16歳になったので、もう15歳と言わなくても済む。
「奥さんは、16歳です」
し~ん。
「先生、高校生とどうやって知り合って結婚したの?」
「出来ちゃった婚なの?未成年なんて。大丈夫なの?」
「相手の両親、怒ったんじゃない?」
どうしてそういう下世話な話になるのかなあ。
俺は、ムッとした顔になると、和磨夫妻は苦笑している。
「きちんと説明しないと、ロリコン疑惑になりますよ」
「そうそう、君は28になったばかりだろ?16歳の少女が奥さんなんて。一回りも歳が離れているよ。
周囲は驚くよ」
そうそうと、看護師達が頷く。
ロリコン。
俺は、がくんと座り込んだ。
そうなんだ。現代で未成年と結婚するのってロリコンて言われるよ。
現代でいうところの高校生と同じ年齢じゃん。
「あ、先生。今まで気づかなかったの?」
「あれ、先生?」
しばらく落ち込んだが、なれそめを聞きたいというので
旅行していて、山道のところで襲われているところを助け、それから親しくなった経緯を話した。
「押し倒されたところを偶然見てね。慌てて持っていた金属バッドで殴った」
「過剰防衛じゃないの?」
「俺もそれほど強いわけじゃないからね。とにかく相手が気を失ったところで2人で逃げた」
彼女の両親に会い、しばらく滞在し・・。という説明をすると、
俺を結婚相手に狙っていたという看護師1人は
茫然としていて、他の女性達からはお祝いの言葉を貰った。
「そうねえ。再来週の週末なら参加出来そうね」
奥さんは、カレンダーを見ながら俺に言ってくれて、和磨医師がお祝い何がいいかなと聞いてくれる。
看護師達は、自分達も~という事で、職場全員参加となった。
後は、友人3人と親族を招待するつもりでいたので、参加してくれるかどうか連絡することにした。