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さてさて

壮一郎達は、その場から元高塚家の領地へと移動することにした。

彼らの目的は、元高塚家の領主から領地を奪った奴らが、領主としての器なのか

どうかを見極める為。


高塚の領主二男がその器かどうかも、実は見極めたいのだが、

まずは様子を見る為に、暗視防犯ビデオを設置し

貴の改良でソーラー電池を使っている。


「ま、ここは良しとして。向こうは近づくのはかなりきついかな」


ドサッ。

壮一郎は異空間からあれこれ取り出し、風呂敷包みを開けると、この時代の衣装を

皆の前に出した。

「へえ、用意がいいな」

「これがこの時代のか。汚い感じに仕上げてあるな」



「この服は、長に頼んで用意してもらったものなんだ」

壮一郎が説明すると、服から着物へ着替えた貴はボロボロの部分に不満があるようだ。

「これは酷いな。まだ季節的にいいけど、冬でこれは風邪ひくどころじゃないな」

一応、旅人の商人ということで、荷物入れを持ち、旅用マントを羽織ると

粋のいい青年になる。

「貴、お前流石鍛えているなあ」

胸元が肌蹴る感じになり、鍛えている体がよく分かる。

バンバンと肩を叩く藤二郎に、貴は腕をまくり上げて自慢気に筋肉を盛り上げて見せて

2人でわいわいと。


「するな」


と、光一郎にまた拳骨を食らった。



直ぐに打ち合わせをし、4人で元高塚家の領地へと歩く。

GPS機能のIPADを見ながら、藤二郎は、この地がM県のN市だと話すと

3人は驚愕した。

「ええ~、ここってM県なんだ」

「知らなかった」

「おいおい、嫁さんの住んでいるところくらい、調べておけよ」

「すみません」



あれこれ確認しながら歩いていくと、2時間程で領地へと入ったようだ。

荒れた田畑を耕す農民の姿がチラホラ、家も壊れかけているのを女性が板を貼りつけるなど

かなり大変そうだ。


壮一郎は、農民のひとりに声を掛けて、この土地について尋ねると、

彼らは苦しげな表情をさせる。

「俺達は旅の商人なんですが、この辺りはいくさがあったと聞いていたのですが

今はどうですか?」

「いや、まだ分からない」

木の鍬を畑に立て、老人男性は手ぬぐいで額の汗を拭く。

「まだ、続いているのですか?」

「そうじゃな。ここの前の領主を倒した奴らが、逃げ延びた領主の息子に戦を仕掛けると

噂がある。しばらくはこの土地は落ち着かんだろう」

「そうですか。前の領主は良い方でしたのに」

「ああ、そうじゃ。年貢も少なく、いつもわしらと一緒に田畑を耕す面白う方じゃったなあ」


老人が言うには、そんな穏やかな領地を家臣の森松と井坂の者が裏切り、乗っ取りを謀った。

信頼ある家臣に切られた領主と長男は、無残だったと。

「前のような穏やかな領地になりたいものじゃな」


今回、農民には今までの倍の税を要求。それは無理だが行くところもなく、

今は戦をした後始末で大変で、来年は自分達は生きているか希望がないのだそうだ。

「森松と井坂は、人望がないのか」

「あるわけがない。戦好きで、根っからの武士。米がどのくらいの期間がいるとか

収穫が戦でどれだけ左右するかもわからん奴らさ」

若い男達は、戦の兵隊要員として連れて行かれ、まだ戻ってこない為、

田畑の作業が捗らないと愚痴を零した。


「前の領主も長男も亡くなったということだが。二男は人望はあるのか?

亡くなった父親と同じように領主としてどうだ?」

さり気なく尋ねると、老人は分からないと返答する。

「どうして?」

「皆、長男が跡を継ぐと思っていた。長男が亡くなり、二男という話になるだろうが。

歳も若いし、老家臣を押し黙らせる程の力量があるのかは、分からん」


マシなのは、二男。

領主としては存在するべきでないのが、森松・井坂。

どちらに加勢するべきか、4人は悩むことになった。


他の人達にも聞かないと、ひとりだけの意見では偏るとあちこちの農民に今の状況を

尋ねると、同じような返答ばかり。

この人なら着いて行くという希望の人物がいないので、成り行きを見守っている状態のようだ。


「そうだよなあ。考えてみれば、跡継ぎが亡くなって、歳の若い二男が、老家臣を抑えて

指揮がとれるかだな」

「会社で考えると、理解しやすいな。社長と若社長が亡くなって、それを部外者だった

二男が社長になれるか。部下(家臣)が着いてくるか?そういうことだろう。

その下の部下達(農民に置き換えると)は不安だろうな」


もっと敷地内をこっそりと見て回り、藤二郎はビデオを回し、直ぐに防犯ビデオを設置し

隠れ里へと戻ることにした。

自分達は、この時代の者ではない。だから、判断は村の長や村の者達の意見で決めようと

考えた。

「川今家も覗いてくるか?」

「そうだね。もともとはそちらの領地内に入っているからな。まだ、跡継ぎ問題で

揉めてるのかなあ」

「今もいろいろ揉めるけど、昔は戦にもなるから凄すぎる」

「上に立つ者と思う者がいれば、揉めることはないけど。揉めるということは、双方

似たような感じで、後は自分達の利益になる方の応援に回るからなあ」

「ついでだ。直ぐに向かおう」

「分かった」


「はあ・・、まだ歩くのかあ。私にはきついなあ。貴、何か乗り物はないのかね」

大学教授の藤二郎は、歳には勝てないと疲れたと告げて座り込んだ。

名前を呼ばれた貴は、こんな時代に乗り物って、馬しかねえよと愚痴を吐き。

「馬ないし、馬誰も乗れないし。藤二郎さん、文句言うなら

母さんに言うよ」






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