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模擬戦後

 その後、少々強引な手段で経歴を偽造して、何とか編入試験までこぎ着けた。

 合格レベルが分からなかったので筆記試験は手を抜かなかった。だからだと思うが結果と共に呼び出された。普通の脳みそがあれば解ける問題だったので基礎問題かと思ったがそうではなかったようだ。こんな事で目立ちたくないのでこれからは気を付ける事にする。

 しかたなく呼び出しに応じる。その時にはじめて益田紫織と会い、話しをした。

 通常は進路相談する部屋で満点だったことを告げられると、体育館で身体測定をしたいが問題ないかと聞かれたので肯定した。

 なぜ急に身体測定をする必要性がでてきたのか不信ではあったがいつかやらないといけない事だったのでそのまま体育館に向かう。何故か用意されていたジャージに着替えて言われるままに各種身体測定をこなした。もちろん力一杯加減した。

 結果を見た益田女史が難しい顔をしている。おれは近づいて様子をうかがった。

「天草学園では学力と戦闘力を総合した成績でクラス分けしているのだ。本来は基礎技術を体得してから戦闘力をみるのだけれど、キミの運動能力を見る限り大丈夫そうだからこれから模擬戦をしてもらえないだろうか」

 おれは困った。

 模擬戦だろうがおれが戦えば確実に相手を潰してしまうから、できれば避けたい。

 おれが乗り気でないのが分かったのだろう。

「キミの飼い猫は私が預かっている。それで」

「そうか。あぁ、残念だ」

 その瞬間、おれは益田女史の腕を掴んでその場で地面に投げたたき落とした。頭から地面に落としたってところがおれがホンキである事を示している。

 しかし次の瞬間益田女史の姿が消えた。

「やはり悪魔か」

 人間でないことは会った瞬間に分かっていた。肌のきめ細やかさが人とは違うし、周囲にいるモノを魅了するような匂いを発している。おそらくキャバス系の悪魔だろう。

 おれは気に入らない。

 おれが猫を飼っていることを知っていることはこのさい良いとして、このタイミングで伝えてきた意図が気に入らない。おれがタマの為に何かすると思っているのか?

 だとしたら笑ってしまう。

 もしタマを材料におれと交渉しようと考えているなら、この場で後悔させる。女性でも容赦しない。殺しはしないがしばらく悪夢を見続けるくらいのことはする。

 冗談だけど。

 益田女史のような綺麗な女性に暴力振るうつもりはない。今のだって悪魔だと知っていたからちょっとだけ強めに投げただけでまったくホンキを出していない。

「おれにして欲しいことがあるのなら、からめ手でなく素直にお願いしろ」

 いつの間にか背後にまわった益田女史にそう言って、おれは振り返った。

「べ、別にキミのことをどうかしたい訳ではない。ただキミが学園に入ってきたらしばらく私が世話をすることになるから実力を知りたいのだ」

 えっと、何か勘違いしているみたいだけど。そんな目で見ないでよ。一応私はキミの先生になるんだから」

 気が強そうな益田女史がうろたえる。

 先ほど投げた時にどこかケガをしたのか? いや、そんな失敗をおれはしない。よく見ると驚いているだけのようだった。もしかしたらさっきのは危なかったのかもしれない。今後は気をつかえないと。

 益田女史のような見た目が冷淡な麗人のオロオロする姿を見る機会はレアなのでおれはこの立ち位置を今後もキープすることにした。

「で、おれの実力をこれ以上知る必要がある?」

 ニヤリとおれは笑った。益田女史がハッとする。

「もしかしてワザと怒ったふりしたのか?」

「もっと知りたいなら相手になる」

 少しホンキになったおれは、益田女史の背後にまわる。おれの動きに全く付いてこれなかった益田女史は無防備だったから、おれは後から羽交い締めにした。

 でかい。

 何がって?

 益田女史の胸だ。いわゆる巨乳だ。

 おれは益田女史の背後から体を拘束しながら耳元に顔を近づけて息を吹きかける。その度に益田女史の肩がビクッと反応する。

「わ、私は戦闘要員じゃない。キミの相手は天草学園の生徒だ。ワーストと対戦してほしい」

 おれは益田女史の耳が真っ赤になっているのに気づいた。

 おいしそうだ。

 ……。

 ……。

 ……。

 カプ。

「はぅ!」

 奇声を上げる。

 おいしかった。そして面白かった。

 更に耳穴を舐め上げると、全身を振るわせて反応する。

 しばらくもてあそぶ。

 ついに益田女史は自分で立っていられなくなりその場に崩れた落ちた。反応が面白いから気がついたら三十分くらい責め立てていた。このくらいすれば懲りるだろう。

「気に入ったから出来る限りのことはしてあげるよ。でもおれと交渉しないでくれ。もしするなら覚悟したほうがいい。おれは交渉するくらいなら全てを破壊する。さっきも言ったが、おれに何かしてほしかったら頼め。気が向いたら言う事を聞いてやる」

 益田女史がこちらに顔を向けた。

「理解したかい?」

 益田女史が頷いた。

「でも、今はそんなつもりじゃなかったのだ。ただ猫を預かっていたから、ちょっとそのお礼に実力を見せて欲しいと思っただけなのに。それに対戦相手からキミと戦いたいから何とかしてほしいと頼まれていたのだ。なのに。

 うぅ、私はもうお嫁にいけない」

 その場でヨロヨロ泣いているが芝居臭い。

「やめときな、似合わない」

「そうか? 残念だ」

 けろっとして益田女史が復活する。

「ところでキミは、その性格を直したほうがいいぞ」

「放っといてくれ」

 結局、おれは誰かと対戦することにした。相手の事を聞いても分からないから聞いていない。どうせもうすぐ会えるから聞く必要はない。

 おれは益田女史の案内で武闘館に移動した。

「負けても編入できると思うができるだけ勝ってほしい」

「何を言っている? おれが負けるはずない」

 今まで負けた経験がない。

 たかが学園の生徒に負けるわけがない。しかも学園最低レベルの生徒に負けたらおれは恥ずかしくて外を歩けない絶対に引き籠もる。

 まあサクッと勝って終わらせる。


 ◇◇◇


 対戦者は凜だった。

 ビックリした。

 そして間違って病院送りにしてしまった。


 ◇◇◇


 真夜中、おれは凜が運ばれた病院の前にいた。

 病院は結界と警戒の魔方陣で何重にも囲まれていた。

 おれがあと一歩進めば、全てに引っかかる。ただ貧弱な魔方陣だったから解除されてしまうだろう。すると警備要員がわらわら集まってくるし、もう一度魔方陣を設置するまで無防備になってしまうから破壊しないですり抜けることにした。

 ……どうやら出来そうだ。

 小声で呪文をつぶやいて歩き出す。

 数歩歩いてから振り向いて魔方陣が破壊されていないことを確認する。しかし、こんな簡単に侵入されてしまうのはダメだろう。

 もっともおれ以外で気がつかれずに侵入できるかどうか分からないが。

 おれにどうでもいいことなので、放っておくことにした。何か被害があったらそれはその時に病院関係者が責められるだけだ。

「さて、凜はどこだ」

 気配を手探りで探ってみる。

 四つある病棟のうち一番背が高い方から凜の気配がした。

 近づいて見ると最上階にいるようだ。

 結構重傷だったはずの患者を最上階の病室に入れるのが正しいのかどうか判断に迷うところだが侵入しにくいという点では正しいのかもしれない。

「普通はそうだけどね」

 おれは面倒くさいのが嫌いなのでエレベータを使いたかったけでど入り口は閉鎖しているし、監視カメラくらいあるだろう。今回、凜と接触したことは秘密にしておきたいからエレベータを使う事はできない。

 上を見ると三十メートル以上はありそうだ。こんな事なら飛行術でも身に付けておけば良かったと悔やむ。今度暇な時に身に付けようと思った。

 でもこのくらいならなんとかなるだろう。おれは外壁に手をかけた。

 体を引き上げる力を使って一気に数メートル上方に移動する。重力に負けそうになる度にわずかな突起を見つけて、手や足で自分の体を更に上方に引き上げる。

 何度かそれを繰り返すと目的の高さまでたどり着いた。

 カーテンが掛かっているので中を見ることができなかったが、気配で凜がそこに居ることを確認して、おれはそっと窓ガラスを解かして中に入った。

 個室だった。

 凜しかいない。凜は要人ではないから入り口に誰かが警護しているとは思わなかったが念のため気配を調べた。

 大丈夫だ、入り口の外に気配は無い。

 凜は眠っている。

 おれは念のため凜に術をかけて、しばらく絶対に起きないようにした。

「さてと」

 おれは内ポケットからルビーを取りだした。親指の第一関節くらいある巨大な宝石、神具だ。

魂を封じることができるレア中のレアもの。とてもとても貴重だった。

 一瞬、もったいないと思ったが、もっと良いおもちゃを手に入ったので良しとする。それにこれ自体をただ持っていても、おれには役に立たない。

 すでにおれの魂の一部を封印している。これを今から凜に譲渡するつもりだ。

 同じ魂を共有しているなら、おれの意識化の領域でも敵ではないと思うはずだ。そうすれば反射的に攻撃しなくなるはずだ。凜がおれに反抗した瞬間に殺してしまったらもったいない。なるべく長く楽しみたい。

 凜の寝ているベットに近づく。本来は対象者を清めて外界と切り離さないと効果がでないが時間がないので気合いでなんとかする事にした。おれはルビーを凜の額にのせた。片手をかざすと額の上のルビーがクルクル回りはじめる。すぐに高速になる。

「うりゃ」

 おれが手を押し込むようにすると凜の額にルビーがゆっくりと入っていった。しばらくすると完全に額の中に入った。おれは念のため凜の額に傷がないか確認した。

 大丈夫なようだ。

 そっと触ってもそこに異物がある感触はない。

 成功。

 これで凜の能力のキャパは青天井になったはずで、鍛えれば鍛えるほど伸びていく。おれはお気に入りのおもちゃの仕上がりを確認するため少し調べる。人間にまかせて傷跡が残ったら興ざめなので、ついでに手首と腹部のケガを治しておく。

「あとは」

 武器を破壊してしまったので変わりの武器を用意してきたのでそれを宙に出現させる。

 死神の大鎌だ。

 普通の人間が触れるだけで魂を刈り取られる強力な呪具だが、今の凜なら使えるはずだ。眠っているうちに無理矢理契約を締結させる。

 大鎌の刃先で凜の親指を微かに傷つけて血を吸わせる。

 ブゥン。

 低周波音と共に大鎌の刃が一瞬真っ赤に染まった。それが収まるのを確認してからおれは大鎌で凜の心臓を抉った。

 血はでない。その変わり大鎌が凜の体に入っていった。

「契約締結完了」

 以上終了。

 ふと、凜の事を人外にしてしまった気がして、ほんの少しだけ罪悪感に胸が痛くなった。せめてもの罪滅ぼしとして予定通り徹底的に鍛えてあげる事にした。


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