益田女史と話す(いちゃつく)
封神の指輪のことで益田女史のところに相談にいく。
むりやり凜に外させるつもりだったがタマと戦っている凜に呆れたので、しばらく話しかけたくなかったのだ。
持ち主の益田女史なら何か良い手を知っているかもしれない。
丁度昼休みだから、おれは職員室に向かった。益田女史の席は窓際にある。
「もう良いのか?」
びっくりした表情をされた。
「ああ、特に怪我をした訳ではないから」
話があると伝える。
「分かった。ところで昼食は食べたのか?」
「いや、まだ食べてない」
「分かった。ではついて来たまえ」
益田女史は開けかけの弁当を仕舞い、手に持って職員室から出て行った。何となく機嫌が悪そうだったので、無言で後に続く。
何となく男性教師の視線が突き刺さってくるのが鬱陶しい。益田女史と一緒に出て行くからだと思うが、一応おれも生徒なのだから睨むのはどうかと思う。モテない教師のひがみか?
「ふっ」
嫌みを込めて微笑しながら、誰ともなく片手を振って職員室から出る。
「何をしている?」
益田女史が怪訝な顔をするが「何でもないです」とおれは誤魔化した。まあ、益田女史の容姿から考えると皆狙っていたのだろう。鳶に唐揚げさらわれたような感じなのかもしれないが先にアプローチしなかったなら、自業自得だから。
もしかしたらすでにアプローチして玉砕しているのかも知れないけど。
どちらにしても、益田女史はすでにおれのものだ。
嘘だけど。
益田女史は使っていない進路相談室で立ち止まり、おれに入れと告げる。おれが入ると使用中にして中から鍵を閉めた。
「鍵を閉めることはないだろう」
「念のためよ」
何の念だ?
益田女史はおれの横に座って、手に持ったいた弁当を広げて始めた。ひとりで食べるのか?と思ったが、おもむろに箸でおかずを掴みおれの方に近づけてくる。
「はい、アーン」
「・・・・・・」
望むところだ。口を開く。
すると口の中におかずが入ってきた。
うまい。
「もっと照れると思ったのに」
「これくらいで照れるわけないだろう」
実は少しドキドキしていたが言わなければバレないはずだ。クスッと益田女史が微笑というかニヤリとする。いい表情だ。ただ、何かを企んでいる。
ペットボトルのお茶を開けて、益田女史が一口飲む。
「きみも飲むか?」
「できれば」
おれがそう言うと自分でペットボトルを飲む始める。
聞いといてそれはないだろうと思うと、益田女史がペットボトルから口を離して近づいてくる。両頬に手を添えられる。そして、
キスされた。
何かが口の中に入ってくる。
お茶だった。おれは咽せそうになりながら飲み込んでいった。飲み込むと益田女史の舌が入ってくる。
おれは自然に舌を絡ませた。すると益田女史が体を密着させてきたので抱きしめた。抱きしめながら舌をおれの方から逆に進入させる。
益田女史が喘ぐ。離れようとするが、頭と腰を引き寄せておれはキスを続ける。益田女史の体が何度か痙攣するようにビクビクっとなるがさらに口内をねぶり続けた。
五分後、ようやく解放すると益田女史が椅子にへたり込む。
「これじゃ、きみより先に私がまいってしまう」
「おれも益田女史とキスするのは嫌いじゃないけど、学校ではまずいのでは?」
すると睨まれた。
「きみは冷たいな。一応、私も心配していたんだぞ。目を覚ましたなら、すぐに連絡くれてもいいだろうに。まったく」
そういって頭を抱きしめられた。顔に胸があたるし、ちょっとくるしい。
「しばらくこのままでいさせてくれ」
・・・・・・。
少し震えた口調だったから、おれはそのままでいた。嗚咽は聞こえなかったことにする。
「すまなかった」
離れた益田女史はいつもの表情に戻っていた。
おれは、ちょっとうれしかった。
だから抱きしめた。
「ちょ、どうしたのだ」
「いや、何となく抱きしめたくなっただけだから」
すぐに離す。
いつまでもイチャイチャしてたら時間がなくなってしまう。先に用事をかたづける。
「これだ」
封神の指輪をした左手を見せる。
「これは」
「凜にはめられた。凜が外してくれないのだ。どうすればいい?」
「うーん、私もつけていてほしいのだが。それと、残念だが、つけた凜以外に外すことはできない」
まったく残念そうじゃない表情だった。
「つまりふたりともグルなのか」
「きみの為だと思っている」
「何故指輪をするのが、おれの為なんだ?」