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タマと稽古(?)

 召還術をすると目の前に空間の裂け目が現れる。

 普通ならばすぐに召還されたモノ、今回はタマが現れるはずだがいつまでたっても現れない。それなりに抗っているようだ。

「どうしたの?」

「抵抗しているようだ。鬼畜のクセにむかつく」

 おれは空間の裂け目に片手を入れてかき回すようにしてタマを探す。

 いた。

 おれはタマを掴んで引っ張り出した。

「・・・・・・バカみたいな力業。信じられない」

 凜があきれる。知力を封印されているのだから仕方がないじゃないか。そう言ってもバカにされたままな気がするので言葉を飲んだ。その思いをタマにぶつける。というかタマを天井にぶん投げた。

 べし。

 さすが猫化の物の怪だから足から天井にぶつかったものの、勢いに負けてそのままつぶれた。張り付いて落ちてこないかな? と思ったらペラッと剥がれて落ちてきた。

「ふん!」

 落ちてきたところを、狙い定めてデコピンで仕留める。直角に軌道を変えてタマは凜の方に向かう。

「ちょっと!」

 凜はタマを避けずに抱き留める。さすがだ。普通は受け止めた手はヒビが入るか、悪くしたら骨折するだろうに平気そうだ。学園のトップだけのことはある。

「凜、まずはタマと対戦をしろ。タマ、もし凜に勝てたら今回のことは許してやる。でも負けたら、ひとりでおれを倒すのはあきらめて凜と協力しろ」

「みあぁー」

「死ぬ気でやれ。ちなみに正面から対戦したっら、凜は強いぞ」

 おれが改造した凜が弱いわけがない。タマも強いが残念だが凜のほうが力は上だ。タマが勝つとしたら隙をつかないと難しい。

 それを分からすための対戦でもある。

「さあ、始めろ!」


「タマ!」

 はじめに動いたのは凜だった。

 スカートのポケットから何か鋭利なものを数本取り出してタマに向かって投げつける。早い。しかしタマには十分避けられるレベルだった。

 しかし、タマは自分から向かっていき、それを口で防いで、かみ砕く?

「にゃぁー」

 一声鳴いたタマが、自ら凜の方に走る。目が殺る気だ。

 タマよ、さっきおれが叩き付けたダメージは実はなかったのか? 別にいいけどちょっと落ち込んでしまうおれ。所詮、投げつけてデコピンしただけだから平気なのかもしれないけど割と手加減しなかったんだけどな。

 地味に落ち込んでいるおれを無視して二人(一人と一匹)は戦いを続けている。凜が投げる投げナイフ程度の長さの串をタマは次々と口でつかみ取りながら凜に近づいていく。

 ついにタマが凜に近づくと、凜が大きく両腕を広げて左右からタマを叩き、いや、手を開いているから手刀か、するようにタマに襲いかかる。

 タマは起用に空中で体をひねって凜の横を通り過ぎ、その際にスカートを裂き凜の武器を奪っていく。

 さすがは物の怪だ。

「くっ」

 悔しそうに一言発した凜は再び何かを取り出してタマに投げつける。タマは逃げない。

 ボン。

 床に当たり、粉が舞った。

 毒?

 凜にしては、えげつない。ただ毒がタマに効くとは思えないし、そのくらいは凜も想像できたであろうに。

 おれはそこから何か違和感に気づいた。

 タマがフラッとする。

 すかさず凜が襲いかかる。手には凶器を掴んでいる。

 エノコログサ?

 凜が右に振ると、タマが飛ぶ。ぎりぎりでさけると凜が左にそれを振る。一新攻防が続き、ついに凜が両手に武器を持った。

 そこからの戦いはすさまじかった。

 凜もタマも目がマジで殺る気を滾らせている。

 おれは凜がさきほど投げた粉を触って確かめると、毒ではなかった。

「頭が痛い」

 串も念のため調べる。

「おまえら、まじめに遊んでんじゃねぇよ!」

 情けなくて大きな声がでなかった。

 マタタビの串と粉末。そしてエノコログサ、単子葉植物イネ科エノコログサ属の植物で、1年生草本。ブラシのように毛の長い穂の形が独特な雑草である。別名猫じゃらし。

「はっ! とっ!」

 凜は奇声を上げながら猫じゃらしを左右に振っている。タマはマタタビに頭をやられて興奮状態になって猫じゃらしに狂ったように反応している。そして。

「もらった!」

 猫じゃらしをタマが掴んだ瞬間、凜はタマを両手で捕まえる事に成功した。一瞬我に返るタマ。しかしすかさず凜が咽を摩る。

 興奮状態で理性を無くしているタマにそれに抗う術はなく、その場に力なく横になる。凜がそれを見逃すわけはなくタマの体を撫でまくる。そして凜が取り出したのはひとつの猫櫛。

「それを何故今もっている?」

 マタタビによって半ば落とされかかっていたタマは、猫櫛で全身を梳かされることで完全に落ちた。目を閉じて瞑想状態になっているのを見ると勝負は着いたようだ。本体がここまで落ちて懐柔されてしまったら、堕天使も凜を攻撃することはできない。というか本体と感覚を共有しているから、今頃は堕天使も悶えているはずだ。きっと悔し涙を浮かべているだろうが。 ・・・・・・・・・。

 ・・・・・・。

 ・・・。

 凜とタマが対戦を始めて5分たった。

 おれはため息をして、その場から立ち去った。

 とりあえず凜とタマの敵対関係は一方的に解消されただろう。おそらくタマはもう凜を襲うことはない。完全にヒエアルキーが確立されたようだ。

 おれはドアを閉めて目に入る陽光を片手で遮り歩きだす。

「猫好きに猫と対戦しろと言ったおれが悪かったのか・・・・・・」


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