そうだ稽古しよう
凜が頑強にタマのことを庇うので、おれが折れざるを得なかった。
おれもあまくなったな。
精神的にも弱くなった。そう感じる。
このまま順調に力を失っていきたいが、庭石にむかつく魔族がいるからこれ以上整流はできそうもないから、あー、ちなみに魔族ごとき倒すことはわけないけど、整流回路が破壊される危険があるから放置しているだけだから。ロンギヌスも支配権はすでに確保しているからいつでもおれの武器となる。たぶんこれをもう少し使いこなせれば、あの魔族もロンギヌスでぶっ殺すことができるはずだ。
話がそれた。
だから。
「凜よ、この指輪をとれ」
「いやだ」
即答かい。
念のためもう一度自分で抜こうとするが、やはり無理だった。つけた奴しか抜くことができないらしい。だからおれに封神の指輪をつけた凜にしか外すことができない。
「なんでだと、おまえに神力やろうってのにこんな付けてたらやれないだろうが」
「そんないかがわしいモンいらないわよ。だいたい力なんか人から貰うのなんか邪道でしょう。努力して得るから自分のものになるんだから」
「フン。優等生が」
ちょっと本気でむかついたのでデコピン凹ませた。
「痛い。何すんのよ」
「稽古をつけてやる。そして自分が最弱な存在なのを自覚しろ」
「いいわよ。でもあなたの体は大丈夫なの? なんか破裂したような音がしたのに」
「ああ。意識がないときに襲われたると反射的に反撃するようにしてあったからそれが発動しただけだから。本当は半径100メートルの生命をはずなんだけど」
そう言っておれは額に手をおく。
「あのバカ猫が額に指を突き刺したおかげで知力が封印されたみたいで、うまく発動しなかったようだ」
「知力が封印って、あなたバカに「なってないから」」
凜が人を愚劣な奴を見る目で、しかも哀れんだ目で見てくるので即座に否定した。
「バカになったんじゃないぞ。人の力、匠、技がうまく使えなくなっただけだ」
「それってかなりまずいのではないか?」
「相手がね」
技が使えないと手加減できないからまずいと言えばまずい。相手を殺すのは問題ないが、相手がスプラッタになってしまうのは、気分が悪くなるので見たくない。だからしばらく攻撃はデコピンだけにしておく。
時計を見ると午前10時だ。凜はおれの世話をするために休んでいたのだ。益田女史は授業があるので学園にいっている。
「とにかく、魔道場があっただろう。この時間なら誰も使っていないだとうから、行くぞ」
◇◇◇
魔道場は授業では使われていないので誰もいなかった。入り口は施錠されていたが凜が一瞬で解錠した。「空き巣経験があるのか?」と呟いたらスネをストンピングされた。
すげー痛い。
両手でスネをさすっているおれの襟首をもって引きずるように凜は中に入っていった。
「さあ、着いたわ」
しゃがみ込んだまま、しばらくおれはスネを摩って痛みを和らげた。だいぶましになってきたところで、立ち上がる。
「稽古の前にタマを捕まえるぞ」
おれはそういって、召還術を開始した。
「そんな事ができるなら、はじめっからそれでタマを捕まえなさいよ」
凜の言葉は聞こえないふりをする。凜よ、あの時はまだおれはタマ側だったのだ。
しかし今は敵対しているから反則技を使うのだ。