堕天使と戦う
ぎりっ。
凜を倒して飛び退ったタマと距離を開けて相対する。おれは凜に近づく。
息はある。
外傷もない。
軽くタマが霊力を当てただけらしい。それでも気を失うくらいだからかなりの量だったと思われる。凜だから気を失う程度ですんでいるが、普通の人間だったらショック死してもおかしくないレベルだ。
明らかな殺意をタマは込めていた。
「どういう事だ」
タマに気をぶつけと、タマが硬直する。
「出てこい」
殺気を含ませておれは命令する。タマの体がブレて消えると堕天使が表れた。
「ひさしぶり。以前に比べてずいぶん変わった状況になっているみたいだけど、きみ的に大丈夫?」
「それは今はどうでもいい。それよりなぜ凜を殺そうとした?」
「邪魔だったから」
「……」
「にらまないでくれたまえ」
◇◇◇
「きみを倒すのは私だ。それは譲れない」
タマが凜を攻撃した理由だった。くだらない。
「おまえ死ぬか?」
十数メートルの距離を一気に詰めたおれは、堕天使を殴り付けた。手加減していない俺に顔を殴られた堕天使が数メートル後ろに飛んだ。さすが堕天使、大抵のやつなら顔が抉られるはずなのに。
だからおれは追い打ちをかけた。
殺してもいいと思って。
ボディーに少しだけ強めの拳を撃ち込んだ。おれは空いた手で胸ぐらを掴んでいたから堕天使はボディーの衝撃を逃がすことが出来ず、その場に崩れ倒れる。
血塊を吐いて、白眼を剥く堕天使を、おれは足げりして仰向けにする。
「とりあえず内臓は破裂したかな」
堕天使に内臓があるか分からないけど。
「お、怒っているのか?」
ああ、そうだ。
おれは怒っている。
凜を襲われて、おれは立腹しているのだ。理由はわからないがおれは気絶している凜を見ていままでにない感情を持ち、心を抑えることができないのだ。単純な怒りだけではないやるせない気持がおれから理性を失わせているのだ。
だから堕天使のことを今この場で殺そうと意識せずに決めていた。
「死んでしまえ」
堕天使は目を瞑って観念している。死ぬ覚悟、もう諦めた表情を浮かべている。おれは躊躇わずに堕天使の脳を破壊するつもりで頭に手刀を叩き付ける。
「タマ!」
凜の叫び声に、つい反応してしまった。
一瞬の躊躇。
堕天使の目が開いたと思ったら、おれは額に人さし指を突き刺された。
次の瞬間、おれは意識を失った。