取り込まれた
「ただ寝るだけだぞ?」
「「一緒に寝たい」」
今度こそふたりはきっぱり、ハッキリそう言ってきた。それが本音か?
拒否するのも面倒だ。
だから、そのままに一緒に行くことにした。
庭石まではそんなに時間はかからない。
すぐに着く。
近くまで行き、おれは軽くジャンプして上に乗る。ふたりも庭石に登ろうとするがジタバタしていたので、しかたなく両手を差しだしてふたりの腕をつかんで同時に引き上げる。
「こんなところで寝ようとするなんて悪趣味ね」
「キミが誰かと逢い引きするのかと少し疑ってみたが、それもなさそうだ」
益田女史が意味が分からない事を呟いているが無視する。逢い引きするならもっと良い場所が学園にはたくさんある。何せ普通のヤツがここにいたら、カチリとスイッチを入れるイメージを心に描く。力は最弱で。
それでもだ。
「「!!」」
ふたりが声にならない悲鳴をあげて、庭石から飛び降りる。見ると青ざめていた。
……この反応が普通なのだ。
おれの力を整流する、力を吸収するに近いのだから凜や益田女史レベルだと一気に力を持って行かれてしまう。
「戻って寝たら? ここで寝ることができるのはおれくらいだし」
「やだ」
立っているのも苦しそうなのに。
メリデメを考えるまでもなく、ふたりの為に寮に戻る選択肢は思い浮かばない。
「では好きにしてくれ」
いたければそこにずっといればいい。何もないと思うけど何かあったら助けるぐらいはしよう。しかし、そこで眠れるのかは凜と益田女史の問題だ。
寝不足だと肌に悪いとは思うけれど。
風邪も引くかも知れない。
もしかしたら虫にさされてかぶれるかも。ふたりの肌はすべすべだからそれは可愛そうだし、ちょっと残念だ。
いつのまにかふたりの心配を始めた俺が、
「やっぱり帰れ」
と、言いかけた途端、おれは庭石に取り込まれた。
ビックリした。