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1-9 宮殿騒動

「ソラフ!」


素早く狼のようなモンスターの横に回りこみ右手の炎を叩きつける。


「と~~りゃーーーー!!」


人差し指の炎が右手を包み、炎のグローブを纏った拳が、モンスターの腹にめり込んだ。


「ジュ~!!」


ドンでも、ガツンでも、バキでも、ザクでも、あたたたたたたたでもなくジュ~。


昔の世界の焼肉を思い出すな~。(昔といっても4日前だが)


吹っ飛んだ(というか転がっただけ)モンスターのわき腹は黒くえぐれていた。


それをしっかり確認する間も無く、炎のチョップで首を半分ほど切る。


もう何匹目だ?


最初来た時は黒いライオンに怯えてか、攻撃しては来なかったが、今日は3分に1匹のペースで無限にわいてきやがる。


ったく、俺は動物愛護派だぞ。


『確かこの辺じゃ』


早く探してくれ。


『いや待つのじゃ』


何だよいったい・・・・


そのとき後ろから声が聞こえた。


「おうさま~~~どこですか~~~~」










「よし、屋敷に戻るぞ」かつてソウの主人であったヴァンパイアのその言葉と同時に人さらいたちは太陽を浴びようと、上へと続く通路に向かい始めた。人数が2人少ないことに気づく物はいなかった。


そのころ、その2人は宮殿の横にいた。


「まだこのままの姿でいいな」


「見つかるまでは良いだろう」


背の高いノッポが、アカマメを宮殿の窓に押し込む。


暗く、小さい部屋に入ったアカマメは扉の鍵をはずす。


ノッポがそこをくぐって入った。


「進入成功♪」


「おい、静かにしろ」


「分かったよ兄さん」


どうやらここは住み込みで働いてる者の部屋らしい。


寝るための敷物とたんす、机、その他私物が転がってる。


机の上にはこの屋敷の地図があった。


地図にはこの屋敷のつくりと、〔絶対に覚えること〕と注意書きが書かれていた。


まずここは屋敷の正面から見て左にある使用人の部屋で、王の部屋は3階。

1階の右と、2階の左に階段がある。


2人は、目で合図し合い扉を開いた。


そこはキッチンだ。1流のシェフや、大勢の調理師がいるが、全員ヴァンパイアだ。


「ここらで1つ目」


アカマメは煙玉を地面に投げつけた。


シュー、という音とともにあたりが煙で満たされる。


催眠効果付だ。その中を、大急ぎで駆け抜ける。


向かい側の扉を開けると階段が曲がりながら伸びていた。


それも大急ぎで駆け抜ける。

理由は簡単。早く行かないと自分たちが寝てしまうからだ。


2階に上がったとき、そこには2人の兵士がいた。


「行くぞ」


「あいよ!」


兄弟は手を合わせた。


その姿が光に包まれる。


光が消えたときその姿は1頭の角の生えた馬、ユニコーンがたてがみをなびかせ立っていた。


ユニコーンは角で右のヴァンパイアを突き刺し、左のヴァンパイアは蹴りで床に沈めた。


そのまま廊下を駆け抜け階段を上る。


途中、何体かヴァンパイアを巻き込んだが、気には留めない。


それは彼らがクルースニク、ヴァンパイアハンターだからだ。

ヴァンパイアと人の間に生まれた兄弟は白いユニコーンの姿のまま、王の部屋の扉を破った。









「で、あんたは誰なんだ」


「わしはセイヴェスだヴァンパイアの王の秘書を務めておる」


「で、その王様は?」


「それが、昼ごはんの時間になってもこの森から戻ってこないのじゃ」


「ヴァンパイアの王がこの森を歩き回ってるだと?そんなことがあるわけあるか。俺たちが聞きたいのはそんな作り話じゃない。なぜヴァンパイアがこんなとこ歩いてんだってことだ」


「え・・俺たち、とは?」


「余計なことを言よって」


すたっと、ソウがすぐ横に出てきて着地した。

こうなると会話が出来ん。


「タイヤエガーニルニへラビムケ」


「ソニャアルギャッテリーフリャス」


しゃべり方が猫っぽいな、ソウ。


「主人、面白いことになったぞ。ヴァンパイアの王が、人の血を飲まないようにさせるため、協力を求めてるらしいのじゃ」


「どういうことだ?たぶん1割も分かってない」


「ヴァンパイアの王は、人間とヴァンパイアの共生を目指しておる。そのために主人に手伝ってほしいということじゃ」


「思考回路がこんがらがった。知恵の輪の☆5レベルの難しさでこんがらがったから、解くまでに三ヶ月はかかるわ」


「つまりヴァンパイアの王を探さなくてはならん。これなら分かるだろう、というかそもそも空っぽの頭には、こんがらがるところはないじゃろう」


「黙れ。この世界の言葉もしっかりしゃべれないくせに、やたらうるさいな」


「・・・結構気にしてたのに」


よし、猫に勝った。

まあ王様を探すか。









王の部屋は10分前とは様変わりしていた。


壁は血で赤く塗られ、床はヴァンパイアの亡骸とその周りに広がる赤い水溜り。


その中で、ユニコーンの白さだけが変わらずそこに残っていた。


10人弱のヴァンパイアの兵士との戦いで、かべは傷と血だらけになり、肖像画の後ろの隠し通路から風が吹き込んでいた。


その隙間へとユニコーンが進んでいく。


トンネルに入ったときユニコーンの姿はなく2人の青年が、上に向かって歩いていた。


「こんな隠し通路があったとは、全く気づかなかったな」


「地上につながってる様だが何でこんなところに」


「さあ、王様が散歩でもしてんじゃねえの」


「そりゃないな。おっ!出口だ」


通路の先の淡い光が徐々に大きくなり、さわやかな風が体に当たる。


「どうするんだ地上に出ちまったぞ。王を殺すとは言ったもののどこにもいなかったしな」


「することがなくなっちまったな。おい、この広場を見ろよ」


「ああ!子供ん時よく来てた森じゃん。てことは家もすぐそこか」


「俺が思うに、人生をやり直すチャンスかもしれない」


そのとき草を掻き分ける音が後ろから聞こえた。


ガサガサと規則的に聞こえる音とは反対に彼らの心臓は、不規則に激しく脈打ち始めた。


そして現れた姿に息を呑む。


ヴァンパイアの牙、それと同じ黒に染まった布で出来た長い服。そして一つの赤い目。


左目が閉じられていることが、この者の正体を表していた。


「「おやじ」」


「こんなとこでそんなことを言われるとは。その言葉が正しければ・・大きくなったな。最後に見たのは4歳の時だったかな」


「お前が俺たち家族を捨てたとき以来だ!」


二人はユニコーンに変身した。


「その姿からすると、ヴァンパイアの血は継げなかったようだな。それは幸いなことだが」


「ふざけんな!!」


ユニコーンが走り出し、ヴァンパイアは高く飛んだ、その手にはいつの間にか赤と黒の剣が握られている。


ヴァンパイアが着地し、振り向くのと同時に、ユニコーンも振り返り鋭い目つきで実の父をにらんだ。

いや、にらもうとした。


ヴァンパイアとユニコーンの間には、一人の青年が立っていた。

夏休みまでは、月木は、更新無理です。

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