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5-終 帰還

最後まで見ていってくれ。

6章まで見ていってくれ。

 なんだかおかしい。


後ろをついて来ている男の人。


足元を見て、ずっと呟いてる。


出会ってからまだ30分も経ってないはずだが、森の中で二人きりで遭難して、半日歩き回ったぐらいの時間がたったように感じる。


喋りかけにくいし、このまま静かなのは気まずい。


何か話しかけるか。


「あなた、なんて名ま――」


「ひやっ!」


「・・・え?」


おいおい。


何で格闘技の構えのようなものを取るんだ?


息上がりまくってるし。


目を見開いて、今にも飛び掛ってきそうだ。


「あの……大丈夫ですか?」


「はっ!? ひゃっ、はい。何のことだ、あっ、だ、大丈夫、です?」


大丈夫か、この人?


真剣に危ない。


連れて来ないほうが良かったかな?


いや、見た感じかなりの歳だ。


ボケていて、耳が遠いのかも知れない。


「あ~な~た~の~、な~ま~え~は~、な~ん~で~す~か~?」


「な、なんだ、今の呪文は? デジャーマ・アールド!」


黒人老人さんの周りに、透明に光る壁が現れた。


ん? 何を唱えてんだ、おい?


『魔法障壁じゃな』


おう、説明を頼む、ソウ。


『魔法で起こった現象やら、魔法で創られたものを、魔力に還元、分散する対魔法用防御魔法じゃ』


・・・・・えーと、つまり?


『魔法を防ぐ魔法じゃ』


いつ使うの?


『魔法攻撃が来たときぐらいじゃろ』


じゃあ、何であのおじいさん使ってんの?


『知らん』


雰囲気、凄そうなんだけど……?


『凄い』


凄いと言うと?


『我の魔法の9割は消される』


残りの1割は?


『近距離魔法じゃ。

魔法で創られたもの以外には、何の意味もない壁じゃから、中に入ればよい』


じゃあ、遠距離から、あの壁を越えれる魔法は無いと?


『ない』


・・・・・・・・・・・・・・・強いな。


『強い』


「は? 何も起こらない、だと?」


おじいちゃん、俺、あんたにかける言葉が分からないよ。


頑張ってもこれぐらいしか・・・・・


「出口ですよ、おじいさん」


「はっ? へっ?」


まあ良いや。











 日は、傾き始めたのだろうか?


まあ、そんな時間だろう。


ここを被う雲の中に入ってきたのが、昼過ぎだ。


「おい、剣士。

中から何か出てくるぞ」


と、シサムさんが、座って携帯食料を食べている俺に声をかけてくれた。


残りの携帯食料をとりあえず腰に下げた袋に入れ、立ち上がる。


すると、神殿の壊れかけた扉から出てくる二つの影が見えた。


片方はジョーカーさん。


そして、もう片方。


「ん」


シサムさんが刀に手をかけた。


知っている。


肌で感じる。


そして、自分の防衛本能が逃げろと指図するように鼓動が早くなる。


魔王だ。


黒い蛇が重なったような気味の悪い黒髪。


冷たく、人を殺す瞬間にも無気力なまっ黒い瞳。


血の気が全くない肌色の唇。


人の肉を求めるアンデットのようにげっそりとした頬、体。


その体から放たれる黒い魔力は、魔王そのもの。


しかし・・・・


何か変だな。


なんだか落ち込んでいるような気が。


山に吹く風が魔王のローブを揺らす。


魔王がクフーチェを操って作らせた魔力を溜め込むローブ。


魔王から漏れ出す魔力は、少し離れている俺ですら、頭が痛くなる。


だが、この魔力でさえも、ローブが吸収できなかったただの残りだと思うと、魔王の恐ろしさが改めて分かる。


何でジョーカーさんや、勇者様は平気なんだ?


静かなときが流れる。


しかし、戦いは突然始まった。












 なぜか目の前に居る勇者さんが口を開く。


「そこの魔王」


「はぁ!?」


え? は? え~と、俺じゃないよな?


って事は、後ろのヨボヨボ?


「まさか、勇者か」


「おお」


「・・・ふふ、くははははは!!

このときを待っていた。

待っていたぞ、勇者。

お前にあの時のお礼をするときをな!!」


後ろのおっちゃんが勇者に向かって指を突き出す。


「デルカ!!」


おっちゃんの指から赤い光が撃ち出される。


よし、確認しよう。


俺は、魔王の前を歩いてここまで来た。


勇者は俺の前に居る。


魔王は俺の後ろにいる。


魔王は勇者に向けて赤い光を撃ち出して・・・・


「デジャーマ・セン」


・・・その光は、勇者がなにやら唱えたとたんに消えた。


そして、透明な液体と気体を足して2で割ったようなものが飛び散った。


「何だ、今のは?」


魔王は、さっきの勢いはどうしたのか、動揺している様子。


まあ、俺のほうが動揺してるけど。


危なかった。


心臓止まるかと思った。


死ぬかと思った。


「ん? デジャーマ・オールドをいじっただけ。

お前が寝てる間に、色々と勉強したからな」


勇者の言葉で、魔王の顔に恐怖の色が浮かぶ。


「とっとと終わるはずだったな」


勇者の良く分からないセリフ。


勇者の方を見ると、いたって真面目な顔。


「存在消去!」


振り向いた時には魔王は居なかった。


えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!


(ハァ、ハァ)


ええええええええええええええええええええ”っげっげほっげほ、ごふごふ。


『主人、心の中でむせるな。

あと、楽しかったぞ』


途端に、俺の手が動き始める。


「魔王は終わり。

シナリオ通り。

次は、ソウ、出てこい」


勇者が俺の方を見て言う。


『主人には言っておこう。

今から、おぬしの体は我のものだ』


勝手に体が浮かび上がる。


「えっと、ジョーカーだったな。

お前に取り付いているのは、悪者だ。

攻撃しても文句は言わないでくれ」


は?


勇者様、今なんと?


おい!!


ソウ!!


体を下ろせ!!


『無理じゃ』


「ソラフ!!」


自分の口が勝手に動いた。


「え~と、普通の人間の方は、入ってこないで下さい!!」


勇者が周りのやつらに向かって言う。


『炎の出し方が分からん』


おい、ソウ!?


『頭を探れば良いか。

多少痛みがあるかもしれんが』


え?


頭に浮かぶ疑問符。


その直後に激痛が走る。


ああああああああああああああああああああああああああ!!!!!


「――――」


声が出ない。


体中が痛い。


痛い、痛い、痛い、痛い!!


痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。


声は出ない。


体を動かす事もできない。


体のコントロールが出来ない。


それどころか、勝手に動く。


俺の意思は全く聞かない。


今俺は高速で空を飛び回っている。


・・・。


・・・・・くそ。


訳がわかんねえ。


わかんねえ。


なんでだよ!


体は全てソウに持っていかれた。


何でだよ!


わかんねえ。


もう、考えらんねえ。


『やっと見つけた』


フッ――。


痛みはきえた。


はぁ。


意識が朦朧とする。


とりあえずしんどい。


『魔力制限アンロック』


頭の中で、これまで毎日の様に聞いてきたソウの声が聞こえる。


『ふはははは、これは凄い。

まるで魔力の海じゃ』


手が動き、手の平から雷やら、炎やら、白いもの黒いもの、ん?


俺って、無属性以外も使えたのか・・・。


ああ、制限がどうたら、だったな。


・・・・・はぁ。


俺の手から放たれる色々なものは、全て勇者が消しているようだ。


勇者の手がこちらに向く。


魔法を使うのか。


どうでもいいか。


早く終わらしてくれ。


もう、どうでも良くなった。


この世界に来たのも、自分が願ったからだったんだ。


俺が、こんな世界は嫌だ、と思ったから。


それが、たまたまサフィーの魔法と繋がっちゃったんだ。


「ビスタ!!」


――う!!


動きは、勇者に止められた。


早く終わらせてくれ。


ん?


サフィーが出てきた。


サフィーの目が俺を見る。


そして唱えた。


「セヨリト!」


そう唱えたとき、俺の体に何かがぶつかった。


ガアアアアアアン!!


目の前が赤くなる。


鮮やかな、ピンクに近い赤。


前にも感じた事のある。


あの時の雷と同じ色。













 どすん。

  

落ちた。


落ちた?


ここは?


分からない。


いいや。


今は寝よう。


頬に当たる、冷たいアスファルト。

続きはちゃんと書きます。

以上です。

ありがとうございました。

6章は、勇者様のお話です。


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