5-4 それぞれの戦い。
山の斜面を下る人影が見えた。
周りの者は皆、闇竜を見上げている。
人影が向かう先には教会。
この山の中で唯一俺が知るところ。
子供の頃の明るくも暗くさびしい思い出の詰まる教会。
「マアサ! ……は行ってしまったか。
……この山だったのか、やはり」
俺は山を下る赤い影を追った。
「ここの戦いはそろそろ終わる。
ちょっとは勝手にやっても、問題ないだろう」
視界が一瞬消える。
真っ白な世界が少し続き、次の瞬間には闇竜の目の前に居た。
あいつの転移術は正確なこった。
ほんとに目の前じゃないか。
目の前には竜。
鱗は漆黒、目は真紅。
何ともまがまがしい竜じゃ。
「止まれ、闇竜!!
余の相手をしてもらうぞ!」
足元の空気を円盤状に錬金しながら、言い放った。
「ギュギャァァアァァァアァ!!!」
闇竜も吠える。
大きすぎて思わず下がりそうな大声だ。
「いい返事じゃな!!」
手が輝く。
作り出すのは剣。
光が最高潮に達し、辺りに飛び散る。
余の手には、体の5倍はある巨大な金の剣があった。
「ギィィイィィン!!」
飛び掛って来た竜の爪と、余の大剣がぶつかり合い、赤い火花が大量に散った。
「……ククっ、楽しい! 楽しいのう!
屋敷の生活にはもう飽きた!
……さあ、久々の戦いじゃあ!!!」
「ギュガァァァァアァァ!!!!!」
私の武器が敵を切り裂く。
敵を飛ばす。
攻撃を消す。
私にとっての祖父が造りだした物。
使い勝手は良い。
敵の数は随分と減った。
最初に襲い掛かってきたものたちはほとんど倒されている。
大陸中の魔物と大陸中の戦士の戦いだ。
数で上回っているのはこちら。
こちら側が有利になるのは当然の結果だろう。
しかし、あの竜は何だ。
――データと照合――
与えられている情報の中にあるかもしれない。
――該当情報を発見――
表示。
――区別名、闇竜。魔王誕生以前から存在。闇系統の魔力を有す竜――
闇系統? 神話の中の話ではなかったのか?
――緊急:未確認人物、接近――
……ん?
目を上げると、一人の男が剣を構えていた。
長い髪が足元まで伸び、剣からは白い空気が発せられている。
「あなたは何者ですか?」
「私はヴァロルシアス。
魔王を倒すために、復活させる」
――データと照合。
名称:ヴァロルシアス
防衛隊総括の息子
異変:洗脳・操作状態。
魔王の力であると推測――
魔王の力。
便利なものだ。
「邪魔をするなら攻撃する」
なんとも無茶苦茶な話だ。
魔王はあなたの後ろにいると言う事が分からないのだろうか?
「邪魔とは何ですか?」
「……魔王を倒す!!」
反射的に体をそらす。
冷気を纏う剣が伸びない髪の先を切る。
きられた髪は凍り、地面に落ちて砕けた。
ちゃんとした返事をしてからにして欲しい行動だ。
魔王の力というものの強さだろうか。
しかし、そんな事は考えては居られない。
冷気を纏う剣が襲い掛かってくる。
それを紙一重でかわす。
「どうやら、戦うようになっているようですね」
私は暗い空に光の筋を放った。
その筋は闇竜の鱗にかすかな傷を残して弾かれる。
しかし、闇竜はこちらに気づいた。
「ギィイィイイイイギャァァァアァァァア!!」
闇竜が口を開き、こちらに叫ぶ。
その口にもう一発。
どんな生き物にも口の中は共通の弱点だ。
銃弾が闇竜に向かう。
しかし、闇竜は頭を捩りかわした。
かわされた弾はすぐ後ろで弾ける。
移転せせておいたのは拡散弾。
親友であり同僚でもあるレイサの傑作だ。
球の破片が飛び散り、闇竜を襲う。
「ギュワアアアアアアア!!」
闇竜が叫ぶ。
「片目を破壊」
さぁ、早くしとめてしまおう。
自分自身を転移。
次の瞬間には、体が闇竜の口の目の前。
手には巨大なライフル。
ものすごい音が、転移させた耳栓をはさんでも聞こえる。
引き金に指をかけ、銃を両手と体で支える。
しかし、引こうと力をこめたとき巨大な爪が銃を払った。
再度、手元に転移させるが、先が折れている。
次の銃を転移させようとした時には、鋭い尻尾が迫っていた。
おい、この円盤どうなるんだ?
さっきから上昇が止まった。
地面は遥か下。
人々がただの点に見えるぐらいだ。
……うん、いい眺め。
…………いや、眺めは良いが、見えるものが悪い。
雲の近くから、徐々に進み始めた連合軍。
けが人も大分居るらしく、後ろの方で止まってる集団がある。
おっ、横のほうでハンパ無い動きをしてる金色はウィーディーか?
相手もかわいそうに。
大丈夫なのか、あの白い点。
一対一でよく持ってるな。
それと、山の右側で戦ってる、金色の剣と竜。
山の左側で戦ってる竜と、白い点から光の線やら、爆発やら、近代的な武器いろいろ。
そして、突っ込んでくる黒い影。
なんだ、あいつ。
何で突っ込んでくるんだ?
「ギュルルルゥルウゥゥウゥゥゥ!!」
おい、叫ぶな。
耳が痛い。
俺は今、戦場観戦(+実況)で忙しいんだ!!
邪魔するなら、容赦はせんぞ。
それと、山の向こうに飛んでいって、雲から易々と出て行った竜は知らん!!
気がついたら、50話越えてました~!!
ここまで読んでくださった人、ありがとうございます!!
これからも、もうちょっと頑張っていきます。
とりあえず、終わるまでは続けます。
質:この章で終わりかぁ。さびしいなぁ。
応:重要告知! そんな事言ってくれる人のために、番外章作ったりするかも知れません。