5(魔王と勇者)-1、魔王空間突入
なんとRPGなタイトル。
はぁ。
ため息が漏れる。
私だって、いけるのに。
はぁ。
大丈夫かな?
窓の外を眺めると、黒い雲で覆われた山のふもとを埋め尽くす兵士が居る。
ため息をつきながら眺めていると、部屋の扉が開いた。
「アルメルナ様、お紅茶です」
私専属の侍女が入ってきた。
「どうかなされましたか?」
「……本当に大丈夫なのかなぁ、と思ってね」
「大丈夫ですよ。
魔王は弱っていると言っていたじゃないですか」
「そうよね、勇者様が言っていたんですから」
「ヘクシ~~~~~~ン!!」
くしゃみにあわせて、手に持っていた菓子の山が一部崩れた。
せっかく、王国の菓子屋で全種類買ったのに。
「大丈夫ですか、勇者様?」
横からは青い目と髪の・・・名前知らない。
え!!俺、本名知らないし。
今まで気づかんかった。
まあ、いいか。
「勇者は止めてくれ、周りの勇者ファンから、勇者の名前を軽々しく使うな! って言われるぞ」
「じゃあ、なんて呼べば?」
「じゃあ、ソウで」
「なんでですか? っていうか、なんですか?」
「いや、特に意味は無い」
「いつも適当なんだから、勇者様は」
「気にするな、どれかいるか?」
仮名マナは、俺の抱える菓子の山から、飴を取った。
こいつは飴が好きなのか。
こんどかってやろう。
「ソウ様、これからどうするのですか?」
「うん、待っとく」
「待っとくって、何を?」
「面白い物だ。
お前の能力、使ってもらうぞ」
「そんな、勝手に……」
「このあたりに飛んでくるはずだ。
あいつ、楽しくやってるかな?」
ああ、だりい。
俺、結局どうなるんだ?
周りに流されて気がついたら、山のふもとだ。
見上げる山は、黒い雲で覆われていて中が見えない。
大丈夫なのか?
あの、ぐーたら勇者は信用できるのか?
まあ、やばくなったら俺だけでも逃げよう。
そういえば、ここまで魔物に会わなかったな。
この中に入っていったのかな?
きっとこの中は魔物だらけだな。
嫌だなあ。
「では、これより魔王討伐作戦を開始する!!」
あ、周りが歩き始めた。
俺も行かなきゃいけないのか?
魔王、優しいやつならいいんだけどな。
「魔王様、人間の兵士たちが来ました」
炎帝が報告をする。
暗い赤色の髪に赤い目の炎帝は、人の形をしているが、その正体は炎鬼。
炎を操り、人の魂を喰らう魔物だ。
100年前に精霊術師クリフォードに封印されたが、その力は健在。
ついこの前には、そのときの恨みを晴らして来よった。
使えるやつだ。
「魔物たちで相手をさせろ。
闇竜たちは、もう少し後で良い。
……お前は調査を急げ。
勇者は居ないが、少女3人の相手は易しくは無いだろう」
「分かりました」
彼が上手くやれば、この能力は無敵となるはずだ。
「魔王の能力?」
そんなのは早く言ってくれよ。
まあ、俺は魔王とは戦わないぞ。
……絶対に。
……頼む。
戦わないで済んでくれ。
「そうだ」
今、俺たちは黒い雲を突っ切った。
目の前には、山。
太陽の光が、雲でさえぎられ、あたりは怪しい紫色の光で覆われている。
なんか、皮膚がもぞもぞすると言うか、軽いめまいがすると言うか、内臓の位置が入れ替わってるような体の芯が振動してるような、変な感覚に包まれる。
……早く出たい。
「とっとと教えてくれ、アル。
てか、遅いだろ」
「魔王は口にしたことが現実世界に起こると言う、力を持っている」
「俺、帰る」
いつかの槍A「アル様、この雲の壁、内側からは出れないようです。まんまと捕えられました!」
んな!!!!
「らしいぞ、ジョーカー」
「アル、何とかしろっ!」
「そうじゃな、魔王が作り出したものなら、倒せばよかろう」
「無理だ、言った事が本当になるなんてありえん」
勝てるはずが無い。
勇者め、俺を殺す気だろ。
俺ならいけるなんてありえん。
あいつは自分の小島で、魔王に見つからないような結界でも張って、のんびり暮らす気だ!
絶対そうだ!
「大丈夫じゃ、言った事といっても、名前を知っているやつの行動だけじゃ。
なんでも出来るわけではない」
「そのほかにあいつ、何する?」
「中級の魔法だけじゃ。
じゃが、必死で人の名前を調べているやつじゃからな……」
・・・・・・・・・いける?
始まりました~!
パチパチパチパチ(拍手喝采)
質:5章はどんなかんじに?
応:魔王と戦います。主人公そんぐらいしかしません。