表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/64

4-5  勇者?

 勇者様が隠れているという、霧の森。


辺りには、霧が立ち込めていて、伸ばした手の指先すら見えない。


……いや、濃すぎるだろ。


何なんだここ?


シースイタースの首都から、北に少し。


霧があったので分かりやすかった。


俺の周りには、5人。


いつも通りだ。


しかし、全く前が見えない。


この状況でどうやって目的の岩までたどり着けば良いんだろうか。


「はぁ」


どうやら何日かかかりそうだ。


しかし、化けもんが出てこないからましか。













「今頃あいつらは迷ってるだろうな」


「勇者様、お茶が入りましたよ」


「ああ、ありがとう。

もう少ししたら、迎えに行くか」


「分かりました」











 霧、霧、霧。


ああ、ダリい。


ほんとに見つかるのか?


てか、帰れるのか?


もう、どっちがどっちか分からない。


「お~い、なんかあったか?」


「・・・・いや、なんにもない!」


「こっちも~!」


はあ、大丈夫なのか?


真面目に心配になってきた。


食料とか、水とか、これって遭難か?


帰れるのかなぁ?


その時、目の前の霧が晴れた。


「・・・・・だれ?」


出て来たのは、四十台後半ぐらいのおっさんと、俺よりも小さい少女。


おっさんは、この世界で始めてみた、黒髪だ。


「いや、迷ってるだろ」


「え、まあ、そうですけど。

あなたは?」


「ああ、俺は勇者だ」


頭をかきながら、勇者様は言った。


「あ、マジで。

ちょうど良かった。

お~い!勇者がいたぞ~」


5人は、ぞろぞろと集まってきた。


「王国へは行かんぞ」


「・・・?

いや、来て下さい」


「その代わりに、魔王の情報を教えてやろう」


「いや、来て下さったら結構です」


「魔王の情報は2つ。

まず一つ目、魔王は、封印していた石盤が割れていたため、力が衰えている」


「いや、来て下さい。

メモるのもだるいんで来て下さい」


「今まで、魔王が復活するんじゃないか、と思って皆が大切に扱っていたのを割ったやつは、相当の勇者だな」


「あ、俺そんな事しちゃったんだ」


だり~。


「今の魔王なら、君たちでも倒せるだろう。

しかし、あの剣があればの話だ」


「いや、勇者でしょ、あんた。

自分でやれっつーの。

弱ってんならなおさらじゃん」


「そう、勇者の剣があれば!」


「いや、話を聞いてください。

力説してもらっても・・・・・。

というか、来てくれないんですか」


「まあ、聞け!」


「はい」


あ~だり~。


勇者うぜ~。


聞いて欲しいのはこっちだ。


「その剣は、今王国にある。

確かパプリカー侯爵の所にあるはずだ」


「だれ」


「そこで、剣を手に入れ、魔王を退治するのだ」


「はあ」


「2つ目、魔王が自分の作った暗黒空間のなかに、魔物を集めている。


そのお陰で、辺りには魔物がいない。


まあ、それはいいんだが、あの雲の中は魔物パラダイスだ。


まあ、気をつけろ」


はぁ。


「来てくれないんですか~?」


「勇者の座は、お前に譲るぜ!!」


え、ちょ、おい。


そう言って、勇者は霧に向かって歩き始めた。


いや、いらんから、勇者の座とか。


「ちょ、おい、こっちは王国にたのま――」


「ガルルルルオーーーン!!」


「ギャーーーーーグギャーー!!」


俺の話が2匹のドラゴンに中断された。


おい、何でこんなんが突っ込んで来るんだ?


よくみると、ドラゴンの後ろに、馬車がついている。


その馬車の扉がガタン、と勢いよく開いた。


「記憶の魔女!

一つ頼みがある」


そう言って、降りてきたのは、10歳にも満たないであろう、金髪の子供だった。


歩き始めた勇者も、振り返った。


金髪の少女の後ろからは、これまた女の子、見たことある侍、そして、よたよたしながら出てきた、いつかの普通の剣士。


いや、そうそうたるメンツですね。はい。


4人は静かに歩いてきた。侍さんは剣士を支えながら。


ん? 何事?


勇者の後ろで黙っていた青い髪の少女が一歩進む。


「久しぶりね、奇跡の錬金術師」


ああ、この子が。


って、若くないか?


『主人、我の事は隠せ』


へ?


なぜに?


「ああ、いきなりで悪い。

少しやって欲しいことがある。

こんなやつらじゃし、言ってもいいな?」


「って言うか、私のことを読んだ時点で、私の能力明かしてません?」


「まあ、それはお前も呼んだじゃろう」


「じゃあ、なんて呼べばいい?」


「アル、で頼む。

あと、後ろにいるのは、アスタと兄貴とシサムじゃ」


「私はマナで良いわ。

アル、養子になったの?

こっちのおっさんは分かるよね」


「養子になったんじゃない、そういう設定じゃ。

呼ぶときは、召使い1号で良いぞ」


「……いや、止めて、アル。

あ、あなたはあの時の」


大丈夫か?


その召使い?


ふらふらしてるぞ。


「ああ、剣を溶かしたけど大丈夫だったか?」


「ほう、こいつが兄貴の言っていた」


「はい、私の剣を溶かすほどの炎を使うバンダナ男です……」


「……取り合えず、家来るか?それか、俺だけ帰ってもいいか?」


勇者様、居たんだった。


なんか本気で帰りたそう。


「あと、シサムは来い」


なぜに?勇者様。


「はい、師匠のために、毎回、膨大な金を貰っております」


は?


この件についたは、俺は分からん。


俺の後ろの5人も置き去り状態だ。


「まあ、勇者様がいいなら、行きましょう」


自称マナさんの言葉に従い、勇者様の家に行く事になった。












 庭では、防衛隊4人と、普通の剣士(砂漠の大富豪の召使い)とアスタちゃん遊んでいる。


勇者様の家は、リゾート地的な、無人島(広さは、学校の校庭ぐらい。海に浮かぶ高台って感じ。全体が芝生。端っこの方に木が見える。高台といっても、端はがけではなく、斜面になっており、その先には白い浜辺がある)の上の、どこか和風な家。


シサム(敵だったよなあ?)は勇者様と話している。


そして、俺は何か重い話につき合わされている。というか、いつの間にか始まっていた。


「アスタが両親の死を知りながら生きるのは辛いじゃろう」


「いえ、それを受け止めなければいけません」


「でも、ここまでは勢いで連れて来たが、この先どうするのじゃ。

わしらを兄弟だということにしたらどうなんじゃ」


「いくらあなたの願いでもそれは認められません。

私が能力を使うのは、勇者様の時ぐらいです」


「しかし!」


「駄目です。

記憶を書き換えて、楽になっても、それじゃ根本的な解決になりません。

彼女自身が、そのことを知り、考え、そのことを受け止めた上で、引き取り手を捜す。

そのほうが良いはずです。

今じゃなくとも、もう少し大きくなってからでも、本当のことを知る必要がある」


「でも、これは――――」


自称アル(砂漠の大富豪らしい)は言葉を失った。


いつの間にか、家の中にアスタちゃんが居た。


はあ、俺、出番ねぇ。


最近、俺何もしてないや。


アスタちゃんが口を開く。


「アルちゃん、そんなに怒らないで。

私、聞こえてたの、見てたの。

男の人たちが入って来て、それから、パパとママの叫び声が聞こえたの。

それから、男の人たちは家に火をつけたの。

怖かった。

けど、私は大丈夫。

怒らないで。

大丈夫だから。

だから」


いやあ、2人の会話から、なにかしらあったとは分かってたけど、やっぱり恐ろしい。


しかし、マナはアスタの栗色の目を見て、何か決心したようだった。


「アスタちゃん、ちょっと来て」


「やってくれるのか?」


「いや、他の事」


アスタは、マナの所に歩いていき、マナはアスタの頭に手を乗せた。


「リコレクション!」


マナが言い、手が青く光る。


20秒ぐらい、無言の時間を過ごして、マナは手を離した。


「勇者様を呼ばなきゃ」


「そろそろ、話は終わった?」


マナが呟くと同時に現れる勇者様。


なんか笑顔だ。


シサムが、勇者様のために金を集めているとか、師匠とか言っていたが、何か関係あるんだろうか。


「クリフォードとバーバラがやられました。

この子は、彼らの子です」


沈黙が流れる。


俺、防衛隊4人、普通の剣士は訳が分からず黙っているんだろう。


ウィーディーは、普通の大きさのスプーンで、出してもらったお菓子食べてるし、侍さんは無口だ。


だが、マナ、アル、勇者さまは他の意味で言葉を失っているように見える。


「恐らく、犯人は炎帝」


はぁ、わかんね。

最近、新しいイヤホン買いました。・・・・・・どーでも良いですね。

質:勇者があんなんで良いの?

応:良いんじゃない。

  勇者……かつて、魔王を封印したときに、とにかく活躍した人。

  現在はおっさん。

  離れ小島で、青い髪の少女と楽しく生活しています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ