4-4 シサム再び
「兄貴、町が見えてきたけど休憩するか?」
「頼む」
気分が悪い。
俺が揺れに関してこれまで弱かったとは。
ドラゴンの走る平原には、大きな砂埃が巻き起こされている。
「おい、兄ちゃん。
その馬車貸しな」
町に入って、2m。
早速絡まれた。
「無理じゃ」
「お前じゃない。
俺たちは有り金全部取られて、金銭的に危ういんだ!」
随分と大変な経験をなされたようだ。
可哀想に。
「兄貴、行くぞ」
アルが歩き出した。
しかし、一人の男がアルの前に立ちはだかった。
「邪魔じゃ」
「馬車は置いていけ!」
はあ、面倒だな。
金ならいくらでもあるんだから、素直に渡せばいいのに。
「無理じゃ」
ああ、何か張り詰めた雰囲気になってきた。
向かい合うアルと、おっさん。
伸長差1mありそうだ。
「どかないなら、どかすぞ」
アルは言った。
男たちが笑う。
ま、そりゃそうだな。
しかし、アルの手が光り始めると同時に、笑いは止まった。
アルは手を上に向ける。
「アルテー」
空中にりんご大の金塊が現れた。
それはアルの手の動きに合わせて動く。
金塊は目の前の男の腹に、ゴン、と鈍い音を立てて当たった。
「ぐっ、う、うう、う」
男は崩れる。
見事にみぞおちをやられたな。
ってか、あれを頭に喰らったら危なかったぞ。
「ほい!」
アルは、さらにその金塊で男を横から殴りつけた。
3回転ほど男が転がる。
「兄貴、行くぞ」
いやあ、金がある生活は良い。
昔はこんな宿に泊まれることなんて無かったぞ。
「凄かったな。アル」
「そうかの?
あいつらの、金の足しにと思ったんじゃが」
「ほんとか?」
「いや、実際は楽しかったからじゃ。
余は金しか操れぬから仕方なく」
「そうか」
アスタは寝てしまった。
俺も眠い。
「じゃあ、俺は少し寝るか――――」
「出てこい!!」
は?
「出てこいや!!」
は?
うるさい。
「出てこーい!!」
「……アル?
何で呼んでるんだ?」
「さあ?」
「お前に話がある」
「何ですか?」
「お前じゃない」
今、俺たちは立ち話の真っ最中だ。
相手は、足を怪我してるおじさん。
……なんで怪我してるんだ?
「余になにかようか?」
「仲間に入れ」
いきなだなあ。
「無理じゃ」
即答だなあ。
「それでは、無理やり仲間に入ってもらうが?」
適当だなあ。
「意味が分からんのう」
同感。
「ふ、今分からせてやる。シサム!!」
おとこの後ろから、ひらひらの服着て、腰に珍しい刀を下げた男が。
「わが名はシサム。いざ、勝負」
随分と立派な挨拶だ。
受けてやる。
この男と戦いたい。
俺は一歩前に進んだ。
「私はドーソ。その勝負、受ける」
「兄貴が勝負してどうするのじゃ?」
「アル、やらせてくれ」
カン! や、キン! や、パシ!
さまざまな音が、俺の周りからする。
相手の動きは速い。
攻める場所も、防ぎにくい所ばかりだ。
正直、全て防ぎきるだけで、きつい。
俺の息が上がっているのに対して、シサムは汗すらもかいていない。
勝てる気は、正直しない。
でも、楽しいと感じる。
シサムの刀が俺に向かって振られる。
俺は後ろに下がって、その隙に攻めた。
しかし、その剣は、足の裏で止められた。
?
みた事も無い防ぎ方だ。
彼は、地面につけた刀を支点に、一回転して、後ろに飛んだ。
なんだあれは?
疑問が浮かぶが、考える暇は無い。
刀はすぐに来る。
斜め上からの速い斬り。
俺が避けると、その刀は地面に当たり、その勢いで、続いて踵で回し蹴りを繰り出してきた。
その足は剣で防いだ。
キンッ!
高い音が響く。
足に何か巻いているのだろう。
金属と金属が当たった音だ。
すると、シサムは体を下げた。
地面に寝そべる状態に近い。
そこから、足で足を刈りに来た。
後ろに下がろうとするが、あせって不安定になった足を、綺麗に刈られて、俺は倒れた。
「勝負あったな」
男の刀は俺の首から数ミリの所で止まっていた。
はぁ。
負けちまったか。
後でアルに謝らないとな。
俺は剣を放した。
静かに時が流れる。
「お前は、今回の相手じゃない。
そこの娘、勝負だ」
はあ。俺なんか眼中に無いってか?
「仕方ないのう」
アルは楽しそうな顔をして、手の平を地面に当てた。
「アルテー」
地面を金に換える。
作ったものは金の鎧。
サイズは、大人用だが問題は無い。
だって、余は入らんから。
もう一つ、円盤型に土を換え、それを浮かした。
「まずは、試してみるかの」
即興の鎧で、どこまで戦えるか、余の操作が鈍ってないか。
「いざ、勝負」
余は金の円盤に乗って、宿の屋上辺りまで上がった。
意識を金の鎧に集中する。
「ぐぐぐぐぐ」
金の鎧は立ち上がった。
空気を適当に剣に換えて落とした。
鎧はちょうど胸の高さで掴む。
タイミングはばっちりじゃ。
シサムとか言う男も、さすがにこの高さには攻撃できないようで、鎧の方を向いた。
「さてと」
下の鎧は、意思を埋め込んで勝手に動いている。
余は金のひもを作っていた。
作っていたといっても、一瞬じゃが。
それを地面に垂らした。
このひもを通して、地面を錬金する。
よてい、だったんだが、結構戦いが面白い。
男は鎧の剣を軽々とかわしている。
鎧が男に切りかかる。
しかし、その剣を男の刀が弾いた。
その動きのまま、鎧の腰のつなぎ目を目指して、刀が振られた。
「ツバメ返し!!」
普通の剣では切れない。
しかし、あの刀に切断の魔法が付加されている。
いつの間に。
はじめから、かけられていたのでは無い。
という事は、無詠唱。
さらに、男自身にも自己加速がかけられている。
これも無詠唱だろう。
余の魔力で、無理やり密度を上げた、金の鎧が真っ二つに切られた。
「ふははははははは」
いつの間にか余は笑っていた。
「面白い!
余と一緒に来ないか!!
金ならいくらでもある!」
余は空気を錬金して、彼の前に落とした。
「ほえ?」
男は変な声を上げた。
「ちょうど、アスタの護衛が欲しかったところじゃ!」
平原を馬車が走る。
「う、う、んう」
「大丈夫かドーソ?」
「ああ、ありがとう、うぷっ。
まさか、こんなにあっさりついてくるなんてな」
「ああ、俺はかねを求めているだけだ。
それが満たされるのなら、地獄にだって行ってやる」
「そうか、う」
「そういえば、久しぶりにシサムに会うことになるな」
「どうしました、勇者様」
「いや、なんでもない、
明日、客が来るぞ。
その後出かけるから、用意しといてくれ」
「……いきなりですね」
「まあ、楽しくなるから、気にするな」
やった~~~~!
テスト終わった~~~~~~!
月曜はテスト返しだから、それまで喜んでおくぞ~~~~!!
質:シサムの特徴を。
応:侍です。
白髪のロングをまとめています。
ありきたりか?
まあ、いいか。
俺が考えると、変なやつが出来そうだし。