1-4 吸血鬼城
「なんだ、男一人か、アカマメにノッポ」
「いや~最近どこもかしこも、俺たちを警戒してか家から出てこないんすよ」
アカマメがもっともな説明(言い訳)をした。
「まあ、いい。もうすぐ夜が明ける。さっさと自分の部屋で寝ておくことだ」
「はいはい、言われなくても眠くて仕方がないですよ」
あわわわわ~とか言いながら檻を渡して部屋に向かう。
暗い廊下に血の臭いがこもっているがいつものことだ。
「もうここの生活も慣れちまったよな~、昼夜逆転生活に、地下で寝ることとかも」
「まあ、ここに来て1ヶ月経つもんな~」
彼と話しているノッポは昔からのパートナーだ。
ここの血液輸送会社で1番背が高い。
対するアカマメは最も背が低い。
「あと血の臭いも」
「それで商売してるんじゃないか」
「そうだな、でもヴァンパイヤと話すのはいまだにやりにくいわ」
「俺もだ」
ぐ~~~~
これはいびきの音ではない。
「う・・うう・腹が減った」
もう限界だ。こっちの世界に来てからどんだけ経ったんだ。
寝てたからまったく見当も付かない。
そもそも昼食抜きでこっちに来たんだぞ。
そのときから腹が減ってた。
ほんとにイラつく。
目を開けると、
はぁ~~~
また檻の中か。
どうやらこの世界では他の世界から来た人をやたらと檻に入れる習慣があるらしい。
元の世界に戻ったらみんなに教えてあげなくちゃ、うん。
とりあえずこれを開けるか。
ボウッ
だいぶ早く取れた。3分も経ってない。
少し先に窓がある。しかし今回は出れるほど大きくない。
暗い部屋に明かりが入ってきている。
もう昼になるようだ。
檻を出て、周りを見渡してみると、
ううっ、これはひどい。
教室2個分ぐらいの部屋に、同じ檻が大量に並べられている。明かりも無く空気もこもっていて、不健康をそのまま部屋にしたような雰囲気だ。
檻の中にはすべて人が入っているが誰もがやせ細っていて、とても健康には見えない。(あと変な臭いが凄い)
その中にこちらを見つめる女性がいた。長い茶色い髪がぐちゃぐちゃだ。
早歩きで近づくと何か話し掛けてきた。
「スワルリイキージレッセロウリニミン」
今ここに断言して見せよう。まったくわからない。
「申し訳ありません、何をおっしゃっているのかわたくしめには解かりかねます」
「・・・?ニー,セッモイイクウゥドッテイテ」
くそっ丁寧しゃべっても通じないなんて。じゃあ次は言葉遣いを悪くしてみねば。
目の前の女性は手首を指差した。
その手首を見て、(言っても通じないが)言葉を失う。
女性の手首には何度も切られた跡があった。傷口から菌が入ったのか黒くなって来ている所もある。
これは酷い。いったい何のためにこんなことを。
そして女性は後ろに体を辛そうにねじって真っ直ぐ腕を伸ばして指差した。そこには扉が在った
ここにいたらこうなる、あの扉から逃げて下さい、という事だろう。
しかし、そこにはあった。
穀物だ。美味しそうではないが、紛れも無く食料だ。
扉の近くの机の上だ。
すぐに駆け寄ってむしゃぶりつく。
「不味い!」
少し経って
やっと腹の減りが収まった。良かった良かった。うん、動物はみんなものを食べて生きていくんだよ。
早速だが出口を探そう。人の頼みにはNOと言えないんだよな~
木の扉の鍵を溶かしてはずして部屋を出る。
目の前が出口のようだ。
う~ん。簡単だなまあいいや。
次の扉はすぐに開いた。
は~~~外の空気は良いわ。
そこは周りを山に囲まれた窪地であった。
右側と左側に一本ずつ道が伸びている。
まあぶらぶらするか。
大好きな探検が始まった。
「なに?一人逃げ出しただと!血が取れないのは別にいいが、ヴァンパイアの村が外の人間に知れたら、」
「すいません、ですがやつは魔法が使えたようで。鍵が溶かし切られてますわ」
「城から逃げ出して来たやつが、鉄を溶かすほどの魔法が使えただと?冗談はお前たちの身長差だけにしてくれ」
その言葉を待っていたかのように、アカマメはポケットを探り
「「これを見てください」」
「これは・・・」
ポッケから出したのは、輪の一部が無くなった鍵だった。よく見ると溶かされたような跡がある。
「どうするか・・・まず主様に報告しなくては」