3-14 帰り道のデジャブ ~何、またこれか~
「腹減った」
「同じく」
「同じく」
「同じく」
「同じく」
俺は今、川に沿って王城へ帰っている。
・・・はあ、なんて仕打ちだ。
腹が減って、馬車はやられて、暗くて、いつ着くのかもわかんねえ。
俺の後ろには、え~っと、4人。その他。以上。
なんか4人以外に洞窟にあった縄で手を縛られた盗賊団員。
俺は置いてこうって言ったんだがな~。
んで、俺は盗賊団の縄の先を持ってる、事を利用して縄に引っ張ってもらって歩いている。
「あんたは楽してるでしょ」
「アンナ、俺は一般人だ」
「違う」
「ちが~う」
「違います」
「それは無い」
「・・・・・・・グスン」
悲しい。4人同時に100億%否定される悲しさ。
「あ、気にしてました?」
「でもジョーカーは・・・」
「違うと思う」
「違う」
「・・・・・・・うっ、うっ、う・・・・」
俺、この先どうなるの?
『魔王を倒せ、とか言われそうじゃな』
やだね、たとえこの両足を失おうがそんな事はしない。
『主人がこの世界に来る前の唯一の取り柄じゃなかったのか』
俺は命を優先するぜ☆って、唯一ってなんだ。
他にもあるぞ。
『おう、何じゃ?』
口笛と鼻歌で2重奏できる。
『そ、それは、何とも微妙な・・・』
微妙言うな、俺の授業妨害の長年の経験が産んだ奇跡の技なるぞ。
何だかんだでハーモニー作れるんだぞ。
ゲームのBGMを4つマスターしたぞ。
あとナナレンジャーのOPとEDも。
あとは・・・・
『そうか。それはいいんじゃが、森の中からなんか見てるぞ』
へ?
俺が森を見ると暗い中にかすかに動く物が見えた。
たくさん。
たくさん。
重要事項です。
たくさん。
「森の中に居る!!」
「は?」
「へ?」
「ほ?」
「敵」
俺の声にあわせて草むらから熊が。
デカイ熊が。
重要事項。
デカイ熊が。
10匹以上。
最重要事項。
10匹以上。
『主人』
あい。
「ギラ・ダック!!」
俺の方へ突っ込んできた2匹を飛ばす。
2匹は近くの大木の幹に当った。
振り向く。
アンナは熊2匹と剣で戦っている。
キャンドも短剣持って走り回っている。
ベルは・・・水の円盤作って浮いてるし。
「ひやぁ~~~!!」
デグリアは4匹に囲まれて。
やべ~~~~!!
走り出す俺。
熊の爪が上がり月明かりで光る。
ベルも詠唱を始めたが間に合いそうに無い。
そして、熊の真上に来たところで急降下を始める。
熊の爪がデグリアに迫る。
―――ザシュッ!!――――
引き裂かれる音がする。
しかし、熊の爪が切り裂いたのはデグリアではなかった。
熊が切り裂いたのは地面から出てきた茶色い根だった。
「チュウ」
足元に一匹のねずみが駆けてきた。
「うるさいなぁ。
もう夜中だぞ」
緑の髪が揺れる。
「ジャ、ジャリボーイ?」
ねずみの色は緑だった。
地面から次々と出てくる茶色い根が熊の動きを封じる。
その熊に次々ととどめを刺す4人。
熊の群れはすぐに全滅した。
「おい、何、勝手に食ってんだよ」
「モグモグ、いやあ、昨日の敵は今日の味方だろ。
闘技会の中であんたが一番まともだった」
今俺が食いもんをあさってるのは、大木の中。
なにやら、この木を家に変えて、住んでるらしい。
このジャリボーイ。
「ちがう。この木にお願いしたんだ、私の望む姿に変わってくださいって。
自然はお前みたいなちっちゃいやつの考えの及ばぬ所に存在するのだ」
「モグモグ、あ、ありがと、助かった」
「あれは俺じゃない。この木がやったんだ。この木に感謝しろよ」
「いや、食べ物」
「く・・・お前が勝手に食ったんだろ。
いや、お前たちが!!」
俺以外には、アンナ、キャンド。
ベルは・・・常識あるから。
デグリアは、さっきの感謝。
「いやぁ、この木の実は美味い!!」
「こんな葉っぱも食べれるんだ~」
「く・・・・・出てけ!!」
「やだ。泊めて」
俺、足疲れた。
「こんなに入れん」
「この上にも、部屋、作れるんだろ」
「く・・・・・・・俺はそんな願いはしない」
「誰か願って」
「「「「・・・・・・・・・・」」」」
『我は一応・・・』
頼む!おねがい!
『仕方ないの。壁に近づいて、我を隠せ』
俺は壁際に行った。
木の壁と向き合うただのバカ状態だ。
その間にソウが出てきて、木の壁に触れた。
木が光る。
無駄にまぶしい光だ。
光が消えたときには、目の前に木のはしごが出てきていた。
『5階建てじゃ。1人1部屋』
「は、はぁ!?」
この声はジャリボーイ。
「ジョーカー、無系統しか使わないから何系統かと思ったら木だったの」
「無詠唱」
「フォースの類?」
「なんか凄いです」
防衛隊特殊部隊。
防衛隊の中でも先鋭たちが集う。
任務は・・・・適当?
報酬・・・・・適当?
だな。
結局ここは管理されてるのかどうか微妙だ。
そのくせ面子が機械マニア女とか白髪の美少女とか、俺とか。
はっきり言って、普通じゃない。
特に、白髪の美少女、マアサ。
こいつはやべえ。
雷神とか呼ばれる俺でもあんま勝てる気がしない。
超高度な魔法の移転をフォースとして持ってるから、負けることが無くても、捕らえられない。
そいつのお陰で、特殊部隊内の人の移動とかにも役立っているんだが。
この前の、町長怪しいので押しかけるぞ作戦の時も、役立った。
なんたって、魔法陣描くだけで、それを目標として何でも転移させちまうからな。
この前、防衛隊30人がいきなり現れたのには驚いた。
と、同時に俺の魔法陣がちゃんと描けてたのに安心した。
とにかく、マアサとレイサには助かってるな。
俺がセイブルだった頃。
機械をはずして、適合者として選ばれたセラは北のフィリティーから西のシースイタースへ送られた。
記憶を消すために。
そこであったのは1人の少女だった。
青い髪を床まで伸ばした少女。
その少女は俺と2人で話がしたいといった。
そこで聞いたのは、俺が今まで居た子供だらけの町の裏側を聞いた。
防衛隊の強化のためにフォースの実験をしたい。
俺たちはその実験台だ、と。
そして、記憶を消されたふりをしろと俺に言った。
正直、全て忘れたいと思ったが、少女はそれを許さなかった。
そして、そのまま俺は防衛隊へと送られた。
そして今に至るわけだ。
いつかまた会いたい、あの少女に。
「ありがとうございました」
「感謝はこの木にしてくれ」
「ははは、素直じゃないな」
「お前、食って寝たら性格変わった?」
「いや、久しぶりに充実している。助かった」
「はあ、とっとと帰れよ」
いやあ、すがすがしい朝だ。
『主人、今12時』
いやあ、すがすがしい昼だ。
まあ、遠くにちょこっと見える山が黒い雲で覆われてなければさらに良いんだが。
腹が減ってなくて、疲れてなくて、眠くない。完璧だ。
なんてのは5時間前。
今現在。
「腹減った」
「疲れた」
「城どこ~」
「疲労」
「眠いです」
はあ、またこの状況か。
さっきから、川に沿ってずっと歩いている。
頭の上にあった太陽は結構下がって来ているし。
真っ赤な夕焼けが川の水を美しく照らしているが、そんなもんじゃ腹の減りは収まらん。
あたりを見ても木の実や食べられそうな草は見つからない。(というか分からん、へるぷ~~~!!
HELP ME!!!)
景色は変わらず、目の前に見えるのは木だけ。
はあ、もう帰りたいよ。
ママアン!!
なんてデジャブが続き太陽が木の天辺につく頃、ベルが待ちに待った言葉を言うというデジャブ。
「城」
よし、入ろう。
いやあ、色々あったね、ビオッチャの洞窟遠足。うん。
質:王国の説明をお願いします、総理!!
回答拒否すでに2回ですよね。
応:王国。とりあえず一般的なファンタジー世界の、一般的な王国。
まあ、書くのもだるいので、想像にお任せしますって事で、おやすみ。