3-6 大会最終日、後半
選手も少なくなり、俺は次の試合に呼ばれた。
前回までは気分は沈んでいたが(原因はソウとソウとソウ)今回は違う。
不幸の根源は、休息へと入られた。
とうとう俺の時代がやって来たのだ!!
と、いう訳で、相手は魔法使いのお兄さん、ねずみの精霊が肩に乗っている。
(ジャ、ジャリボーイだと!?)
色は緑色だった。
始めの合図と共に、ジャリボーイは魔法を唱えた。
肩の精霊も魔法を補助する。
ジャリボーイを中心に巨大な植物が塔の屋上を覆った。
何これ?ツタ?
こぶし大のツタが襲ってくる。
「ソラフ!」
ワタァ~!
目の前から突っ込んできたやつを殴り、左右から来たやつは飛んでかわした。
ジャリボーイはツタの上に立っている。
そこから空中の俺に向かって魔法を唱える。
バラの棘みたいなのが2本飛んで来た。
「おら!」
しかし、俺の右手の炎に当り燃える。
着地した俺に向かってくるツタ、枝、くき、触手などなど。
それを、ソラフと炎で次々と焼く。
このままでは埒が明かないと思った俺は、ツタの上に乗った。
そして、枝、またツタ、と俺は男の居るほうへ飛ぶ。
男は、棘を次々と飛ばしてくる。
その棘に正確に炎を当てる。
自己加速の活性とやらが気持ちよくて仕方がない。
俺は、見事に男の乗っているツタの後ろの木の枝に乗った。
その枝をけって、男に突っ込む。
しかし、俺の出した右手(炎なし)は、木の枝っぽい剣で防がれた。
無防備になった俺につるのむちが迫る。
「ビスタ!」
俺は、右手を突き出し言い放った。
右手を出したのは、ずばり、かっこいいからだ!
こういうの憧れたよね~。
静止の魔法で動きの止まったツタを足場に、再び男の方へ飛ぶ。
そして、男の上で加重の魔法を唱える。
「ギュマンダ!」
うおっと。
いきなり、地面に向かってひもで引っ張られるような感覚。
結構強い。
そのまま、俺は男に向かっておぞましい速さで落ちる。
男がとっさに形成した、木の枝の剣も、俺のライダーキック(上から加重つき)には耐え切れず、バキッと音をたて、真っ二つに割れた。
俺の足が男をふっ飛ばし、男は闘技塔から落ちていった。
1秒ほど(足の痛みと)技のきれの良さの余韻に浸った俺は、相手のことが不安になった。
俺が恐る恐る下を見たとき、そこにあったのは、木の枝に支えられてこっちをにらんでいるジャリボーイだった。
木をクッションに使ったんだろう。
軽症で済んでいるようだ。
そのにらみは次は勝ってやる、という意思をこめたにらみだった。
次の相手は、2本の剣を持った、背の高い男。
ソウがビンタした男だった。
もう一度言います、ソウがビンタした――――え?飽きた?―――――男だった。
「さすがだな、何がしたいのか分からないぐらい色々やる、へんてこの宝庫、黒いバンダナのジョーカーの小僧。朝飯のお礼とかで、遠慮しなくて大丈夫だぞ」
「ひどい通り名だな・・ああ、お礼ならいつかやるよ」
それより、二刀流かぁ。
かっこいいな。
「始め~~~~~~」
剣が飛んで来た。
・・・・・・・・・・・
え、ええええええええええええええええええ。
投げるのおおおおおおおおおおおおおおおお?
驚いている所にもう一本の剣が現れた。首元に。
「どうだ、驚いたか?」
「ああ、とっても。
降参、認めてくれる?」
「ん?」
「ダック!」
今朝、俺が神様と呼んだ男は後ろに吹っ飛んだ。
「ははははは、甘いわ!
そう簡単に降参してたまるか!
俺には、美人な王女様と、王様生活を送らなきゃならんのだよ!」
「んぐぅ、小僧、王になるなら、王の子供に生まれなきゃならんぞ」
「ふふふふふ・・・約束と規則は破るためにあるのだぁ!!
その証拠に、後ろを見てみろ!」
と、言うと律儀に後ろを向く俺命名神様。
「とりゃ!」
俺はその背中を蹴って、ジャリボーイが木を生やしたところに蹴ってやった。
卑怯者ぉ~~~~とか言いながら落ちる神様を見ながら俺は思う。
ここまでバカで良くやってこれたなぁ、と。
なんだかんだで残り、二試合。
「準決勝、481番、意味わからなすぎて通り名の付けようもない黒いバンダナ、ジョ~~~~カ~~~!!
それを迎え撃つのは前大会覇者、青髪青眼、激寒の氷豹、氷の剣聖ヴァロルシアス!!!」
禅大会覇者だと?
よほど座禅を組むのが得意なのか?
静発性癌って、どんな病気だ?
いつの間にか癌にかかってたってことか?
五区間の批評?
五つの区間で批評されてるのか?
なんか、可哀想だな・・・・
「降参してくれたのなら嬉しい」
こいつか~、座禅組んでたら、癌にかかってて、5つの区間で色々言われてるって奴は。
とりあえず、説明入れとくと、背の高さは俺の背伸びぐらい、体格は細め、小顔、美形、青い目に青い髪が少しかかっている。
とりあえずイケメン=俺の敵。
「私は、剣聖の名を持っている。
氷系統魔法は、かなり習得している。
極術も全ての型を覚え、扱う。
降参してもらいたい」
「俺だって、右手の人差し指はライター。
魔法だって使える。
無系統の基礎」
あれ、なんかしょぼくないか?
「フッ。笑う気もなくなるな。
降参するのか、しないのか?」
降参?
凄そうだからするか?
いや、こうしてここまで上がってきたのかも知れない。
ここはまず相手の実力でも測ってみようか。
「お前の目的は何だ」
これは聞いておかないと。
俺が聞かれたときの言い訳にするから。
「目的、か?」
(ヴァロルシアスだったと思う)男は目線を落とした。
「私は、両親を魔王に殺られたんだ。
魔王は、勇者にやられた。
そのことは知っている。
でも、私は両親の敵を討ちたい。
でも、相手がいない。
だから、俺は魔王を復活させて殺してやる」
おまえ、頭大丈夫?
「それには、石盤が必要だと聞いた。
それを、ここの王が持っていることも。
だから、優勝して手に入れる」
はい、はい。
「降参しないっす」
「仕方がない」
ヴァロルシアス(以下、俺の敵)はどこからともなく俺の身長ぐらいの剣を取り出した。
『うお、あれは、精霊武器じゃな』
ソウ、起きたの?
一応言っとくけど、変な事は止めてね。
んで、それって何?
『精霊が武器になるのじゃ。
我はならんぞ』
あ、っそ。
俺の敵がその剣を振ると、青い衝撃波が飛んだ。
「ダック!」
俺からも衝撃波が飛び、俺の敵の衝撃波を相殺する。
そして、その衝撃で風が生まれる。
俺の髪がぼさぼさっとゆれる。
対して、俺の敵の髪はさらっと揺れ、目を片方つぶり、手を髪に添えた顔がなんともむかつく。
観客の叫びも、今までとは多少違う気がする。
「そういえば、無系統の基礎は出来ると言ってましたね。
しかし、基礎としては威力がありすぎる気もしますが」
俺の敵(以下、クソやろう)は少し笑った。
「とっととやってしまいましょうか」
クソやろうの剣が、根元から氷に覆われる。
「はっ!」
その剣をこっちに向けて突っ込んできた。
剣勝負か、面白そうだ。
色々と予定変更して、二刀流の神様の、投げた方の剣(後で返そうと思っていた)を、適当に構える。
「ソラフ!」
カンッ!
氷がかける、しかし欠けた所から再生する。
剣を受け止められてもなお、クソやろうは剣を押す。
「はぁ!」
カチッ!
神様の剣が一瞬で凍りついた。
冷たすぎて、俺は剣を放した。
目の前で剣が振り下ろされる。
冷気が鼻先をかすめる。
危な!!!
しかし、攻撃は止まない。
はぁ。疲れるな。
「ビスタ!」
動きが0.5秒ぐらい止まった。
その隙に後ろに下がる。
「クソッ!サーズ!」
氷の弾丸がいくつか飛んで来た。
丁寧に消すのも面倒だな。
俺は、自己加速のご加護もあったので普通に避けた。
俺は、魔法を使って隙が生まれたクソやろうに突っ込んだ。
そして殴り飛ばしてやろうとしたとき、
「サーシャント!」
俺の目の前に氷の壁が現れた。
ドンッ、と鈍い音がした。
いたたたた。
冷たたたた。
氷の壁は消え、襲い来る氷の剣。
それを、右手で溶かす。
「ん、何!」
そして、剣の根元に触れる、いや、触れようとした。
剣は消え、クソやろうの足元には・・・リス?
まぁ、白ベースに、青い縞が入ったリスがそこにいた。
シッポの先が焦げてるのは、俺のせい?
とりあえず、剣が消えてバランスを崩したクソやろうを蹴っておいた。
クソやろうは吹っ飛んで、落ちて、少し経って、氷の羽で戻ってきた。
・・・・・・・・・は?
「ふ、やられた。
まさか、リブがビビッてしまうとは、面白い。
今回は、君の勝ちです。
ありがとうございました。
来年は負けません」
リスは、クソやろうの方へ走っていってポケットに潜り込んだ。
クソやろうは、リスの頭を撫でて、飛んで降りた。
俺も降りるか、と思ったその時だ。
バーーーーーン!
俺が、修学旅行の夜に寝てる友人の耳元で爆竹を爆発させた時ぐらいの音が鼓膜を揺さぶった。
はあ、やっと闘技会終わった。
疲れた。
でも、まぁ、ほどほどにがんばるんで、よろしくお願いしま~す